15 / 18
15
しおりを挟む
かわいい、きれい、優しい、見ていておもしろい。
ロングヘアが似合う、ショートヘアが新鮮。
自分のことが好きだとくっついてきたり、別にしょっちゅう会わなくても平気とそっけなくしたり。
レイトが女性を好きになるのは自分の感性に響いた時だった。
例え他に付き合ってる人がいても、彼女たちに加える。複数人と付き合っていることは事前に話すが、大抵そこでフラれるかそれでもいいと言われるかが決まる。フラれる場合は時々ビンタ付き。
それでもいいと言う女性も女性で他に実は男がいたり、精神的に普通とは違う状態で依存してきたりと厄介だったりする。
『大変大変。この前スタジオで修羅場だった。もうふざけんなって感じ』
「何修羅場って。コスプレスタジオでそんなことある?」
『あるって。どこの界隈でもそうなんだろうけど一定数ちょっと世間とズレた方たちがいらっしゃるのよ』
「丁寧だけどかなり悪意を感じる…」
レイコから最近はどうなの、という定期的にある電話。冒頭では貴義と仕事について話していた。
レイコはソファに寝転んでいるのか、内容にしては呑気な声だった。
風呂から出てバスタオルを頭に被ったままのレイトは時々、頭をガシガシとタオルで拭いている。
『まあそれなりに腹立つ態度取られているからねー』
「レイコも喧嘩っぱやいとこあるからね~」
『あん?』
「あ、そっそれで? 何されたの」
『……あぁ、それね。こっちがスタジオでのルール説明しても無反応とか、お釣りのお札を渡すと無言で引っ張ろうとするんだよね。何も話せないんかいいい歳して! ……ってことで、フライヤーを渡しながら話してる時に引っ張られるときは力を入れて去ろうとするの阻止してる』
「もはや変な執着を感じるぞ……」
そういうのは一般社会と変わらないか……とレイコの話にも共感できるところはある。
飲食店やコンビニなど店で横柄な態度を取る勘違いした客、正常な判断ができない状態で怒鳴り散らかす酔っ払い、無銭飲食しようとするやたら紙袋を多く持つみすぼらしい人。友だちは多い方でいろんな職業の人からよく話を聞く。
『ただの愚痴になって悪かったわね。本題はあんたの恋バナね、何か変わったことはあった?』
「この前は中学生の職場体験があった。俺が彼女を好きなのをおばちゃんたちに悟られたり、好きな歌手の話したり……。イヤホンを片耳ずつ分けて音楽を聴いても彼女は動じなかったな」
『おーおーおもしろい話持ってくるわねぇ。あんたおばちゃんという生き物を侮ったらダメよ。なんでもお見通しなんだから……』
レイコはまるで自身も同じ経験があるかのような苦笑いを言葉の端ににじませた。
『イヤホンを半分こなんて学生みたいで青春じゃない。あんたにしてはウブなことしたのね』
「たまたまだけどな……」
『地道に重ねていくのもいいものでしょ。難しい恋ほど燃える、とはまた違うんだろうけど』
『まぁ悪くはないね』
よく言うわ、とレイコが鼻で笑う気配がした。
そこから少しだけ話し、もう22時だしこっちは寝るわとレイコがあくびをして電話は切れた。
平和な恋愛もいいものだ。以前、彼女たちが鉢合わせた時は取っ組み合いのケンカとなってレイト一人では止めることができず、危うく警察沙汰になるところだった。たまたま通りかかった彼女の友人が彼女をなだめて事態は収まった。
今はセイラ一筋だからそんな心配をする必要はない。
明日は何を話そう、どんな顔をして彼女と笑い合おう、と寝る前に考えるのが最近の日課だった。
ロングヘアが似合う、ショートヘアが新鮮。
自分のことが好きだとくっついてきたり、別にしょっちゅう会わなくても平気とそっけなくしたり。
レイトが女性を好きになるのは自分の感性に響いた時だった。
例え他に付き合ってる人がいても、彼女たちに加える。複数人と付き合っていることは事前に話すが、大抵そこでフラれるかそれでもいいと言われるかが決まる。フラれる場合は時々ビンタ付き。
それでもいいと言う女性も女性で他に実は男がいたり、精神的に普通とは違う状態で依存してきたりと厄介だったりする。
『大変大変。この前スタジオで修羅場だった。もうふざけんなって感じ』
「何修羅場って。コスプレスタジオでそんなことある?」
『あるって。どこの界隈でもそうなんだろうけど一定数ちょっと世間とズレた方たちがいらっしゃるのよ』
「丁寧だけどかなり悪意を感じる…」
レイコから最近はどうなの、という定期的にある電話。冒頭では貴義と仕事について話していた。
レイコはソファに寝転んでいるのか、内容にしては呑気な声だった。
風呂から出てバスタオルを頭に被ったままのレイトは時々、頭をガシガシとタオルで拭いている。
『まあそれなりに腹立つ態度取られているからねー』
「レイコも喧嘩っぱやいとこあるからね~」
『あん?』
「あ、そっそれで? 何されたの」
『……あぁ、それね。こっちがスタジオでのルール説明しても無反応とか、お釣りのお札を渡すと無言で引っ張ろうとするんだよね。何も話せないんかいいい歳して! ……ってことで、フライヤーを渡しながら話してる時に引っ張られるときは力を入れて去ろうとするの阻止してる』
「もはや変な執着を感じるぞ……」
そういうのは一般社会と変わらないか……とレイコの話にも共感できるところはある。
飲食店やコンビニなど店で横柄な態度を取る勘違いした客、正常な判断ができない状態で怒鳴り散らかす酔っ払い、無銭飲食しようとするやたら紙袋を多く持つみすぼらしい人。友だちは多い方でいろんな職業の人からよく話を聞く。
『ただの愚痴になって悪かったわね。本題はあんたの恋バナね、何か変わったことはあった?』
「この前は中学生の職場体験があった。俺が彼女を好きなのをおばちゃんたちに悟られたり、好きな歌手の話したり……。イヤホンを片耳ずつ分けて音楽を聴いても彼女は動じなかったな」
『おーおーおもしろい話持ってくるわねぇ。あんたおばちゃんという生き物を侮ったらダメよ。なんでもお見通しなんだから……』
レイコはまるで自身も同じ経験があるかのような苦笑いを言葉の端ににじませた。
『イヤホンを半分こなんて学生みたいで青春じゃない。あんたにしてはウブなことしたのね』
「たまたまだけどな……」
『地道に重ねていくのもいいものでしょ。難しい恋ほど燃える、とはまた違うんだろうけど』
『まぁ悪くはないね』
よく言うわ、とレイコが鼻で笑う気配がした。
そこから少しだけ話し、もう22時だしこっちは寝るわとレイコがあくびをして電話は切れた。
平和な恋愛もいいものだ。以前、彼女たちが鉢合わせた時は取っ組み合いのケンカとなってレイト一人では止めることができず、危うく警察沙汰になるところだった。たまたま通りかかった彼女の友人が彼女をなだめて事態は収まった。
今はセイラ一筋だからそんな心配をする必要はない。
明日は何を話そう、どんな顔をして彼女と笑い合おう、と寝る前に考えるのが最近の日課だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる