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3章
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2組の教室に入ると、やっぱりと言うべきかザワザワとしていた。
話題の中心人物、結城は神七に泣いてすがりつかれていた。
「結城ちゃんダメぇ…。今回は危ないよ…」
「なんだ、珍しいな。いつも神七は笑顔で見送ってくれるのに。なぁ鹿島」
「確かにそうだけど…。今回ばかりは俺も止めるよ。今までと違って嫌な予感がする…。あ」
鹿島のその言葉に、結城に話しかけようと踏み出した足を引っ込めた。
自分も感じていた嫌な予感。
神七の泣きよう。
他の人まで感じているなんて────。
「桜木さん? どうしたの? ちょっと顔色悪くない?」
鹿島に声をかけられて夜叉はハッと意識を戻し、苦笑いに近い笑みを浮かべて片手を上げた。3人は夜叉の元へ歩みよった。ただし神七は結城に抱きついて引きずられながら。
「こら神七…。離れろ、自分で歩け。これからのために体力温存したいんだよ」
「ダメ! このまま体力奪って行けないようにしてやる…。やーちゃんもなんとか言ってやって!」
「え、私?…えーと、織原さん。ケンカの手伝いに来たよ」
「やーちゃん!?」
神七も鹿島も目を丸くした。それもそのはず、夜叉の突然の覚醒は一部の人しか知らない。
夜叉は頬をかき、神七を結城から引き離した。まだグスグス泣いている神七は、夜叉と結城の制服の袖を引っ張っている。2人は顔を見合わせた。
「どうする?」
「私は行くぞ。いい加減アイツらはなんとかしないといけないって思ってたんだ。これは好機だ。これで終わらせる」
「…と思って来た。私も行くよ」
「桜木さん…。正直心強いよ。あんた、ただの美少女じゃないんだな」
「別に美少女ではないんだけどね」
2人で話を進めていると、鹿島が神七の肩に手をかけて心配そうな声になった。
「待って待って…。ホントに行くの? 絶対やめた方がいいよ」
「止めるな2人とも。大体なんださっきから…。嫌な予感がするとかなんとか…。予感なんて根拠がないじゃないか。私は聞かないぞ」
「実は私も嫌な予感とやらがするけど…。まぁなんとかなるでしょ」
鹿島と神七がわざとかと思うほどコケた。新○劇ばりだ。結城も頬を引くつかせている。
「桜木さん…。意外といい加減なんだな…」
「ん? それはいい意味かな織原さん。ん?」
「怒ってるし…」
夜叉は満面の笑みだが目の下にクマを作って結城の金髪を握っている。
「別にこれは私の急所とかじゃないぞ…」
「いーのいーの。存在感半端ないから」
神七と鹿島のことを引き離し、2人の言い分に”大丈夫大丈夫”と言いくるめ、2人は学校を出た。
「それで。どこに行く?」
「思い切って響高校に直接行く。ボスの顔も見てみたいしな」
「はぁ…ボス…?」
それ以降、結城はだまりこくって歩き続け、電車を乗り継いで例の学校へたどり着いた。夜叉もおとなしく付いていく。身長低めの女子高生に身長高めな女子高生がついていく様子に周りの視線をチラホラ感じた。異様な組み合わせでもあるし片方は変わった制服だし。
到着した高校はごく普通の見た目で、校門から出ていく生徒たちもごく普通だ。制服の乱れもなく、強いて言うなら女子生徒のスカートの丈が短いくらい。荒れているのはごく一部のこの前の連中だけらしい。
「これは校風かな? ウチは怒られちゃうもんね」
「私からしたらスカート短くする理由がよく分からん」
「あ…。女番長に憧れてるから?」
「あんな長さにしたいとは思ってない」
また80年代ネタで盛り上がり、2人は校門前で下校していく生徒を眺めていた。時々ぎょっとした目で見られることもあるが、そこはやはり2人とも外見がいいので男子生徒の視線を集めることの方が多い。
日没を迎え、校庭には運動部の生徒しかいなくなった頃。2人はそろそろ敷地内に入って連中を探そうと思ったのだが。
「おうおう。藍栄の守護神直々に来るとは」
「お前ら…!」
校門の前、夜叉たちの後ろに、この前の連中が集まっていた。敷地内の校門前にも。
やはり樫原────サブリーダーが一番前に出ている。
「油断したな、織原さんよ。この前の女も」
完全に囲まれている。夜叉は早々に結城と背中合わせになって周りを見渡した。この前よりも人数が多い。30人まではいかないが、威圧感が重い。
「チッ…。大層なこと言ってくれたからこっちから来てやったぞ」
「おーおーよう言うわ。今日は死んで帰るんだぞ」
「織原さんは死なない。高校生同士で殺せるわけないでしょ」
「またお前か…」
夜叉が口を開いたら舌打ちされた。彼女はムッとしたが、空気に怒気を孕ませないためにだまりこくった。
「そんなに死なせたいならお前らの総長を出しな。お前じゃないだろ」
「さすがだな…。1年のお嬢ちゃんでも見抜いたか」
「そんなことはどうでもいい。早く出せ」
「そんなに死にたいか…。でもあの人は出てこない。お前が会えるような人じゃない。お前はここで俺らに殺られろ!」
不良たちが一斉に飛びかかってきた。夜叉と結城もそれぞれの方向で暴れ出した────。
話題の中心人物、結城は神七に泣いてすがりつかれていた。
「結城ちゃんダメぇ…。今回は危ないよ…」
「なんだ、珍しいな。いつも神七は笑顔で見送ってくれるのに。なぁ鹿島」
「確かにそうだけど…。今回ばかりは俺も止めるよ。今までと違って嫌な予感がする…。あ」
鹿島のその言葉に、結城に話しかけようと踏み出した足を引っ込めた。
自分も感じていた嫌な予感。
神七の泣きよう。
他の人まで感じているなんて────。
「桜木さん? どうしたの? ちょっと顔色悪くない?」
鹿島に声をかけられて夜叉はハッと意識を戻し、苦笑いに近い笑みを浮かべて片手を上げた。3人は夜叉の元へ歩みよった。ただし神七は結城に抱きついて引きずられながら。
「こら神七…。離れろ、自分で歩け。これからのために体力温存したいんだよ」
「ダメ! このまま体力奪って行けないようにしてやる…。やーちゃんもなんとか言ってやって!」
「え、私?…えーと、織原さん。ケンカの手伝いに来たよ」
「やーちゃん!?」
神七も鹿島も目を丸くした。それもそのはず、夜叉の突然の覚醒は一部の人しか知らない。
夜叉は頬をかき、神七を結城から引き離した。まだグスグス泣いている神七は、夜叉と結城の制服の袖を引っ張っている。2人は顔を見合わせた。
「どうする?」
「私は行くぞ。いい加減アイツらはなんとかしないといけないって思ってたんだ。これは好機だ。これで終わらせる」
「…と思って来た。私も行くよ」
「桜木さん…。正直心強いよ。あんた、ただの美少女じゃないんだな」
「別に美少女ではないんだけどね」
2人で話を進めていると、鹿島が神七の肩に手をかけて心配そうな声になった。
「待って待って…。ホントに行くの? 絶対やめた方がいいよ」
「止めるな2人とも。大体なんださっきから…。嫌な予感がするとかなんとか…。予感なんて根拠がないじゃないか。私は聞かないぞ」
「実は私も嫌な予感とやらがするけど…。まぁなんとかなるでしょ」
鹿島と神七がわざとかと思うほどコケた。新○劇ばりだ。結城も頬を引くつかせている。
「桜木さん…。意外といい加減なんだな…」
「ん? それはいい意味かな織原さん。ん?」
「怒ってるし…」
夜叉は満面の笑みだが目の下にクマを作って結城の金髪を握っている。
「別にこれは私の急所とかじゃないぞ…」
「いーのいーの。存在感半端ないから」
神七と鹿島のことを引き離し、2人の言い分に”大丈夫大丈夫”と言いくるめ、2人は学校を出た。
「それで。どこに行く?」
「思い切って響高校に直接行く。ボスの顔も見てみたいしな」
「はぁ…ボス…?」
それ以降、結城はだまりこくって歩き続け、電車を乗り継いで例の学校へたどり着いた。夜叉もおとなしく付いていく。身長低めの女子高生に身長高めな女子高生がついていく様子に周りの視線をチラホラ感じた。異様な組み合わせでもあるし片方は変わった制服だし。
到着した高校はごく普通の見た目で、校門から出ていく生徒たちもごく普通だ。制服の乱れもなく、強いて言うなら女子生徒のスカートの丈が短いくらい。荒れているのはごく一部のこの前の連中だけらしい。
「これは校風かな? ウチは怒られちゃうもんね」
「私からしたらスカート短くする理由がよく分からん」
「あ…。女番長に憧れてるから?」
「あんな長さにしたいとは思ってない」
また80年代ネタで盛り上がり、2人は校門前で下校していく生徒を眺めていた。時々ぎょっとした目で見られることもあるが、そこはやはり2人とも外見がいいので男子生徒の視線を集めることの方が多い。
日没を迎え、校庭には運動部の生徒しかいなくなった頃。2人はそろそろ敷地内に入って連中を探そうと思ったのだが。
「おうおう。藍栄の守護神直々に来るとは」
「お前ら…!」
校門の前、夜叉たちの後ろに、この前の連中が集まっていた。敷地内の校門前にも。
やはり樫原────サブリーダーが一番前に出ている。
「油断したな、織原さんよ。この前の女も」
完全に囲まれている。夜叉は早々に結城と背中合わせになって周りを見渡した。この前よりも人数が多い。30人まではいかないが、威圧感が重い。
「チッ…。大層なこと言ってくれたからこっちから来てやったぞ」
「おーおーよう言うわ。今日は死んで帰るんだぞ」
「織原さんは死なない。高校生同士で殺せるわけないでしょ」
「またお前か…」
夜叉が口を開いたら舌打ちされた。彼女はムッとしたが、空気に怒気を孕ませないためにだまりこくった。
「そんなに死なせたいならお前らの総長を出しな。お前じゃないだろ」
「さすがだな…。1年のお嬢ちゃんでも見抜いたか」
「そんなことはどうでもいい。早く出せ」
「そんなに死にたいか…。でもあの人は出てこない。お前が会えるような人じゃない。お前はここで俺らに殺られろ!」
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