たとえこの恋が世界を滅ぼしても1

堂宮ツキ乃

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9章

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「やぁ青龍。ただいま」

「白虎か…長かったね、おかえり」

「白虎か、とはなんだ」

「ぐおっ!?」

 廊下で可愛らしい白い軍服の少女とすれ違った青龍は、軽く言葉を交わして腹部に拳をめりこまされた。

 ”白虎”と呼ばれた少女は手を片手を腰に当てて胸をそらした。

「か弱いな。腑抜けたか?」

「わ、私は何も変わらないよ…君は相変わらずたくましいようだけど…」

「ボクは努力を怠らないからね…どこぞのロリコンバカとは実戦での経験値も違う」

「うわぁ痛い…」

 青龍は胸を押さえて腰を曲げた。

 白虎はツン、とした顔立ちに内巻きの白い短髪。白虎の一族では唯一軍帽をかぶっており、軍服の装飾も金の肩章だったりブレードが多めだったりと威厳を放っている。

 姿は小さな少女だが表情に子どもらしいあどけなさは無く、彼女は立派な頭領だ。

「さっきウチの一族のモンに聞いたが…朱雀の娘に接触したんだって?」

「さすが耳が早いね。そう、あのコがね。いつかはこっちに来てくれるように話したんだ」

「ほー。なんか阿修羅がそのコに懐いているとかなんとか」

「あぁ。元々朱雀に懐いていたコだから…って、それがどうかした?」

 青龍が毛先をいじると、白虎は軍帽を外して首を振った。

「別に。あの小さかったコがもう成長が止まる時期が近いのかと」

「そうだね…」

「定期的にこちらへ帰ってくることはあるのかい? ボクも会いたい」

「…今はその悪魔にさらわれてどっか行っちゃったんですけどね」

「はぁ!?」

「大丈夫。阿修羅たちがついているから。今彼女は例の悪魔に気に入られて狙われているから、君が行けばちょっとした脅しになる。ヤツはこちらの頭領の顔は知っているだろうし」

 白虎は目を細めて人差し指をかんだ。ゆがめた顔は少女らしくない凄みがある。実際、御年は少女ではないが。

「アイツか…。久しぶりに一戦交えるのもありかな。自分の力試しといったとこで」

「君は随分危険な腕試しをしたがるね…君が強いのは皆分かってはいるけど、時が経って君と同じように彼も力を蓄えてきているだろうね」

「だろうな…。死神と運命は何を思ってあの悪魔を生かしているんだか…」

「さぁそれは。神のみぞ知るってヤツでしょ」

 青龍は肩をすくめて軽く笑った。白虎が自分の部屋に行く素振りを見せたので青龍もそれにならおうとしたら、目の前に夜叉を横抱きした阿修羅が現れた。

「阿修羅! 彼女を見つけたのかい」

「えぇ。ですが気絶されてしまって…。報告もかねて参りました」

 阿修羅は白虎に軽く会釈をして腕の中の夜叉を見つめた。

「そうか…とりあえずこのコが無事でよかったよ」

 白虎が軍帽のツバを軽く持ち上げて眉を上げた。

「彼女が朱雀の…アイツよりクールな顔立ちだな。鼻の筋はよく似ている」

「美人でしょう。母上様に雰囲気が似ていらっしゃいます」

「阿修羅はこのコの騎士ナイトだな」

「そっ、そんなことは────」

「まぁまぁまぁ。まずはこのコを朱雀の部屋で寝かせてあげなさい。それから舞花さんに先に報告」

「はっ」

 阿修羅は素早くその場を立ち去った。夜叉が起きていればもう少し彼をおちょくっていたかった白虎は片頬を上げた。

「相変わらずの朱雀っ子だな」

「ホントに。こんなに彼女を連れて帰ることができるなんて…よかったよかった」

「朱雀の忘れ形見だしな。それにもっと大事な理由があるんだろ」

 白虎が青龍を見上げると、彼は阿修羅と夜叉の方向をまっすぐ見据えていた。

「もちろん…彼女は大事な跡継ぎです。次期朱雀・・・・の────」

 青龍は険しい眉でうなずいた。

 fin.
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