ようこそヴィーヴラ商会へ

創手 カケラ

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死は時と場所を選ばない。行く場所も選べない

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そんなお店を開く前……始まりは終わりからだった。

16回目の夏は唐突に終わった。そして、スローに見えると言うものをはじめて体感することが出来た。
ことの始まりは、前期期末のテスト後、友達と別れていつもの道を帰っていた時のこと。交通量が多いが慣れた道と思っていたのが悪いのか。背中から強烈な衝撃が気づくと自分は宙に放り出されてた。
真っ青な空と白く輝くギラギラとした太陽。ゆっくりと体は回り眼下にはドライバーの青ざめる顔とへこんだ車のフロント。車の背後にはパトランプ回すパトカーも見えた。
とてもゆっくりと進む時間でいろいろなものが目に飛び込んで、抜け落ちていく視界が暗くなりはじめ痛みが消えた。感覚も誰かの声も聞こえなくなった。
真っ暗闇でなにも感じず見えず、聞こえず、匂いも感触も何もないただ無の時間を永遠に続くような、あの怖さは忘れられない。
が目を覚ますことが出来た。見たことのない建物……夏の日差しが眩しい。蝉の声は聞こえないがさざ波の音が遠くでする。白い壁、青い屋根の家に無意識に扉を開けて入った。

「君も運がないねえ……暴走車に突っ込まれるなんて」

「え……ああ、えっと……」

小さい部屋。窓辺近くには簡素な木のベッド。部屋の真ん中に四角く古いテーブルに濃い茶色の使い込まれた椅子。本棚には書籍や小物が並ぶ。タイルの貼られた台所には白い湯気を吹く傷だらけの白いポット。そして、僕を出迎えたのはラフな格好の男性。僕に語りかけつつ、沸いたポットのお湯を透明なティーポットへ移していくゆっくりと注ぎ入れ透けて見える水色がじんわりと紅へ変わっていく。

「ここはまあ、君たちから言うところの神とかなんとかそういう連中のすむ場所だよ。まあ、と言っても夏場だしバカンス用の場所なんだけどもさ。君ら死人やら可哀相な人々は時を選ばないからね。まあ、こちらも興味があって招くんだけどもさ」

「は、はぁ?」

「まあ、座りなさいな。お茶もすぐ出来るからね」

言っていることは意味不明と言いたいが……あんな経験をして痛みもなく、明らかに日本じゃない土地にいるわけで……否定も肯定もできない。出来ないし進められるまま座るしかない。テーブルの上には葉の付いたレモンやオレンジが篭に入っておかれてて、柑橘類のよい香りがする。

「えっと……君の名前は__天野あまの とおる……年齢は16、高校2年生と……部活動には所属していないがまあまあ体力値はあるね。知識は……まあこれならいい方だな……えっとそれから……」

お茶を高い位置からティーカップヘ注ぎつつ、大まかだけど当たってる。僕のプロフィールみたいな感じに言いながら、確認するかのように続ける。ソーサーに乗せられて、僕の前と男性の前に紅い水色で満たされたティーカップが並ぶ。

「ふむ……才覚は磨けばいい具合になるかな……ふふっ、ああ、飲んでいいからね?砂糖はミルクもいるかい?」


男性はティーカップの茶に口をつけて、一人思案し悩み一人言葉を言い続ける。ふと目をこちらに向けて口を笑わして、色々進めてきたがそれは断った。
残念そうに眉を下げたが話は別の事。と言っても僕の事らしい。

「えっ、あ……いえ大丈夫です」

「あそう……んっ、さて……ここからが本題だな。君はどうするかね?今ある君の選択できる道はまあ、色々あるけど?」

「い、色々って?」

「まあ、君は死んでしまってるから元の現代2010年代に戻す場合は記憶を消して新しい体、新しい人格形成、新しい人生を歩むことになるね」

「……」

「もうひとつは別の世界、異世界に異なる世界で記憶を持ったまま転生や同じ肉体を再構成とか?君の生前と同じ姿も全然オッケイ……転生とかだと別の種族にもしてあげれるけど?」

異世界転生と言うのだったか?アニメや最近読んでたノベルのような話。現実にしかも自分がそれを選べる。良いことなのか悪いのか分からないが……記憶も持ったままなら……うん。やってみたい。

「ファンタジーの世界も?」

「あるよー剣と魔法の世界一番人気だけど……ほかには宇宙開発の進んだ世界とか?地球に似て非なる世界の方がおすすめだけど……」

「ファンタジーなのが……行けるなら……その」

「ふむ。まあ、個人の意見を尊重するし、望むならば……いろんな人送り込んだからねえ。やれるよ?みんなファンタジー好きだね」

地球に似たところより……行ってみたいファンタジーの世界。そんな質問に目を細めて、僕の何か深いところまで見透かそうとしてるよう……と言うよりしているのだろう。ただ目を口元を笑わせて、男性は紅茶を再び口へ運ぶ。

「うんじゃあ……さっそく……」

男性はティーカップをソーサーに戻して立ち上がり体をよじる。不思議そうにみていた僕だが、空気が変わったのを感じた。なにとも言えない、張り積めた感じに、外の音も聞こえなくなり辺りが暗くなる。

「最後の口にできるものかもしれないけど……紅茶飲まなくていいのかい?君?」

「へ?え?いや最後って」

「異世界送りの場合、運がない子はねえ……ってことで、これから君を異世界に飛ばすからねえ?クーリングオフはないよ」

「そ、そんな!!それはちょっ!!心の」

「もう遅いって“汝が願い叶えたり、幾千の世界から一つを幾万の可能性から物語を……汝が創り紡ぐ新たな歩を進めよ……門は開かれん!!”」

叫び声も聞こえず、光が満ちて真っ白になった。暗い黒い闇の中から眩しく白い光の中へ落ちているのか飛んでいるのか。分からず。

「さて……あとは彼の可能性を決めるかねえ……こう言うのはサイコロだよな?ほい」

一人になり、一人ティーカップを傾ける男性。開いてないもうひとつのティーカップヘサイコロを二つ投げ入れる。紅い水に沈むサイコロは……

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