義手の探偵

御伽 白

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稲荷原公園

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 夜になり稲穂原公園の入り口で、玲子は友人の犬養を待っていた。
 やっと暑い夏が終わり、昼間は過ごしやすい温度になってきたが、それによって夜は薄着では、震えるほどに寒い。
 玲子は、上着を持ってこなかった事に後悔しながら、気晴らしに買っておいたいなり寿司を口に運んだ。
 甘い油揚げは本当に絶品で酢飯が良いアクセントになっていた。店主の人柄だけでなく味も絶品なら、客も自然に集まるものである。
(これはまた買いに行くのもありだな)
 草木が多く、街灯の明かりが遮られた公園は、子供達が遊んでいるような公園から姿を変え、異世界のように感じられた。辺りから鳥や虫などの生き物の音がハッキリと聞こえ、一人でいることを不安にさせるような空間だった。
 縁結びの噂はそれなりに広まっている様で、夜の公園を散策する人の気配がする。大多数がスマホを触っているのか、小さな明かりが所々で光っている。その中にカップルも数名見られるが大体の人間は、一人でいるようだった。
(付き合ってる人はそもそも縁結びなんていらないか)
 すでに相手と結ばれているのにわざわざ縁を結ぶ必要はない。ここに来る人間は片思いや面白半分で来ている者が大半である。おそらく、後者の方が圧倒的に多いだろうなと玲子は考えていた。
 実際に超常的な現象を体験していない人間には、オカルトを心から信じている人間は少ない。精々、あったら良いな。ぐらいの認識だろう。けれど、それが空想上の代物ではないことを玲子が一番理解している。
 玲子は自分の右手を見る。手袋がはめられた義手。自分の意思で違和感無く動かすことの出来る機械の腕は、間違いなくオカルトそのものだ。今の科学を使えば動かすだけなら可能だろう。筋電義手きんでんぎしゅなどは、玲子の持つ義手と似たような性質を持っている。とは言え、筋電義手は、筋肉の微弱な電気を感じ取って動いており、現代の技術では、玲子の義手のように多様な動きを可能にすることは出来ない。
 それに玲子の持つ幻想遺物は、ただ腕の代わりになるだけのものではない。もう一つの機能は、超常的な代物であると玲子は、身をもって知っている。
 もしかしたら、今回の噂の人物も幻想遺物を持っている可能性は十分にあり得る。
 『縁を結ぶ』
 簡単に言っているが、それは運命操作といっても過言ではない。もし別の方法でその事象を起こしているのだとしても、敵に回れば脅威になることは想像に難くない。
 玲子は深呼吸をして、気を引き締める。
「お待たせ」
 玲子の緊張など他所に友達と遊びにいくような軽い口調で一人の男が声をかけてきた。
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