ぼっちな魔女の魔法人形

御伽 白

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ホムンクルスに生まれました。

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 う・・・・・・眠い。

 ゆっくりと眠っていた意識が覚醒し始める。

 確か異世界に転移したんでしたよね。

 新しい体に違和感があります。

 かなしばりのように手足が動きません。いえ、動かそうにも感覚がないというのが正しいでしょうか。

 今までの価値観ではいられないわけですか。私は新しい体に生まれ変わったわけですし。

 さて、ホムンクルスはどんな体なのか。

 私は、ゆっくりと瞳を開けた。いいえ、開けたという表現は正しくはありませんね。

 なにしろ、私には瞼が存在しないのです。

 感覚的には部屋のテレビをつけるような感覚です。

 私が外を見ようと考えると自動的に私の視界が開けました。

 本能的にこういった行動が出来るのはありがたいです。

 全ての動作を考えながらしていたら、動くことができませんから。

 視界が明るくなると見えたのは、本棚でした。本棚には、古びた厚みのある本がぎっしりと詰め込まれている。

 それだけではなく、床には、本の塔がいくつもそびえていて、足の踏み場もなさそうなレベルです。

 部屋はそれなりに広いはずなのに圧迫感を感じてしまいます。

 本に対して圧倒的に本棚が足りていません。

 違法建築された本の塔は、絶妙なバランスで成り立っていて、ところどころに崩れた塔の残骸も見える。

 視点を動かしてみると本棚とは別にいくつもの薬品らしき、妙にカラフルな色の液体達の入った棚や色々な動物や植物が置かれた棚などが保管されています。

 名探偵の私が思うにこの家の家主は、研究者ですね。そして、おそらく掃除が出来ない。

 まあ、研究者って掃除が出来ない人が多いですよね。偏見ですけど。

 どうでしょうか。この名推理。なかなかに鋭い洞察なはず。

 しかし、さすが異世界ですね。置かれている動植物の素材が見たこともありません。

 魔獣の素材もあるようですが、それよりも圧倒的に植物が多い印象です。

 この部屋については、一旦はこの程度で。あとは、私の体がどうなっているのかが重要でしょう。

 自身のことを見ることは出来ません。私は微動だに出来ませんから。

 ただ客観視すると私の体はおそらくとても小さいのではないかと思います。

 私のいるこの場所は、机の上で横に置かれた本が目線の高さにあるのです。

 しかも、面で机に置かれた本と同じ高さです。なんとなく、周りのものがでかいなぁ。と思ってはいたんですけど。意外と新しい体を得た私は冷静ではなかったようです。こんな当たり前の気づきが遅れてやってくるなんて。

 この家の住人がとんでもない巨人でもない限りは、私の体は、分厚いハードカバーより少し大きい程度、精々、四から五センチ程度ということになるはずです。

 何か鏡のようなものがあれば良いのですが。視点を動かそうとしてみますが、不思議とどこまででも視点左右に動かすことが出来ます。

 なんと上下もどこまでも見ることが出来ます。天井まで見えちゃう。結構、不思議経験ですね。これ。

 まさかの360°どこまでも見える。といっても一度に見ることの出来る視野は人間の頃と大差ありませんけど。

 身動きせずにどこまででも視点を動かしている違和感に少し困惑しますが、それと同時に面白さも感じます。

 しかし、この視点の動きからある程度私の体の作りが分かりました。おそらく、私の体は、ほぼ完全な球体であるようです。視界を遮るものもなく、全方向を見ることが出来る。そんなことは球体にでもならなければ不可能。

 私は、小さな球体であるということ。7つ集めると願いを叶えてくれる玉みたいなサイズ感のはず。

 いや、本物は見たことないですけど。おそらくはそのぐらいのサイズ感のはず。
 
 まあ、可愛いサイズ感だこと。ただ、自分の命が、この小さな球体に全てあるというのは少し不安感はありますけど。

 でも、なってしまったものは、しょうがないです。せっかくの異世界転生ですから。とりあえず、出来ないことを嘆くよりも出来ることを探しましょう。あ、私、今、とても良いことを言いました。

 まあ、茶化すのはともかく、取りあえず、現状の確認を。

 ステータスを確認しましょう。

『名称未設定』Lv 1

 種族:ホムンクルス・コア(疑似生命体)

 ATK・M(攻撃・魔法攻撃)1・10 DEF・M(防御・魔法防御)10/10 
 AGI(素早さ) 0 LUK(幸運) 10
 HP(体力) 6/6 MP(魔力) 57/60

 因子:変化 

 種族スキル 『人形同化』『思念伝達』
 固有スキル 『虚構の箱』『模倣』
 一般スキル 『掃除』『学習』
 
 疑似生命体、ホムンクルス・コア。私は生命体でありながら、純粋な生物ではないということを表しているのでしょう。

 コアということは、私は、何かに取り付けられることによって、活動することが出来る存在ということなんでしょうね。

 もう少し、詳しく知りたいですが。

 <ガイド機能を起動します>

 突然、私の意識に別の言葉が響いてきました。ガイド機能なんてあるんだ。とても便利な親切設計ですね。

 <ホムンクルス・コアについての情報を公開します。なお、ガイドレベルが1であるため、公開される情報は、限定される可能性があります。>

 ガイド機能にもレベルがあるんですね。でも、無いよりはある方が良いに決まっていますから、ありがたく教えてもらいましょう。

<ホムンクルス・コアは、魔法技術を使用して作られた疑似生命体です。人と同化することでホムンクルスとして活動することが出来ます。ホムンクルスは、レベルアップによって同化した人形を強化する効果が備わっていますが、コアの耐久性は、ほとんど向上しないため、コアが破損すると機能停止します。>

 だからこんなに耐久が弱いんですね。じゃあ、コアが抜き身で放置されているのは、かなり危険な状態ってことですよね。心臓がそのまま、外に出てるみたいな。
 
 ただ、なんとかしようと思っても、動けませんしね。多分、私が動くことが出来ないのは、AGI(素早さ)の数値が0になっているからでしょうし。

 <推奨:スキル『虚構の箱』の使用をオススメします。虚構の箱は、10cm四方の正方形の見えない箱を作り出し、その中の物体が破損しなくなるという効果があります>

 すごい便利なスキルじゃないですか。じゃあ、スキルを使用しましょう。私の周囲に『虚構の箱』を発動。

 すると、半透明の箱が出現しました。大きさにすると私よりも少し大きいぐらいのサイズ感です。現れた箱は私の周囲を覆うとすぐに見えなくなってしまいました。ん? これで発動出来たんでしょうか?

 あまり実感が湧きません。試してみるわけにもいきませんし、正直、なってみないと分からないということでしょうね。

 ただ、10cm四方の正方形って、限定的過ぎませんか?  微妙に不便な能力だと思うんですけど。

 いえ、もらった物に文句をつけるわけでは無いんですけど、もう少し大きな空間なら、かなり便利で強力だった気がします。

 でも、私の体を守ることに関して言えば、問題ないので良しとしましょうか。

 それよりもガイドさんは、優秀ですね。するべき推奨行動まで教えてくれるなんて。

 ガイドについてどの程度のことが出来るのか、解説してもらうことは可能ですか?

 <ガイド機能について、秘匿されていない一般教養的情報を元にあなたの行動をサポートすることが可能です。獲得したスキルの詳細、身体のモニタリング、行動に対する補助などが挙げられます>

 つまり、ガイドの中には、一般教養的知識が蓄積されていて、それを元に私の知りたいことを教えてくれたり、したいことを助ける案を出してくれるってこと?

 <そうです。さらにユーザーのレベルが上がることにより私の機能も向上され、より高次元の課題解決策を提案できます>

 私のレベルに依存して知能が上がるんですね。ガイドさんも成長すると言うのは、少し新しいですね。
 
 つまりは、運命共同体ということですね。よろしくお願いします。ガイドさん

 <はい。よろしくお願いします>

 誰か話し相手がいるというのは、少し気が楽になりますね。この動けない体だと将来的には退屈で死んでしまうかもしれませんし。

 話し相手が出来たところで、早速、スキルについて解説をお願いしても良いですか?

 <スキルには、『種族スキル』、『固有スキル』、『一般スキル』の3種類が存在します。『種族スキル』は、種族が保有している共通のスキル。『固有スキル』は誕生した際に保有しているスキルで、先天的に獲得出来る物で、基本的に1人につき1つです。『一般スキル』は、様々な経験によって与えられるスキルで後天的に獲得が可能なスキルです>

 なるほど、あれ? 私の固有スキルは2つありますけど?

 <理由は現在の情報では、解析が不能です。何かしら、特別な要因があると考えられます>

 これは、もしかして、転生ボーナスというやつでしょうか? 転生者は、多めにスキルを獲得出来るという。

 まあ、深く考えても分かりませんし、とりあえずは、お得だったと思うことにしましょう。

 じゃあ、ガイドさん、各スキルの詳細を簡単に教えてくださいな。

 <各スキルの詳細を表示します。

『人形同化』:人形にコアを近づけると人形と同化し、活動可能な状態に構築する。
『思念伝達』:対象に自身の思念を伝える。触れたことのある対象のにみ有効。
『虚構の箱』:小さな不可視、非接触の箱を作り出し、その中にある物体の状態を因果関係を無視して維持する。
『模倣』:見たスキルを保存し使用する。保存することの出来るスキルは1つ。使用すると消失する。
『掃除』:掃除を綺麗に手早く行う。
『学習』:学習能力が向上する。

 以上です>

 ふむふむ。これをみる限り、私って結構、強くないですか?

 コピー能力に完全防御のスキル。

 『模倣』が1回だけのスキルなのは、少し惜しい気もしますが、それでもスキルを自由に拡張出来るというのはロマンがあります。

 というか『虚構の箱』が私のスキルと噛み合い過ぎてますね。この小さなコアさえ無事なら、体がどうなっても関係がないでしょうし。

 うはぁ、今日からこの作品のタイトルは、『転生したら無敵でコピー能力を持っていたので、異世界で無双します』に改名しましょう。

 <報告します。MPが残り半分となります。MPが0になった際、休眠状態となります>

 え? なんですかそれ?

 MP? 何もしてないのに?

 <ホムンクルス・コアは、食事、睡眠を必要としません。活動には自身のM Pを使用します>

 え、つまり、私ってMPを使いながら生き続けているんですか?
 
 と、とりあえず、ステータス確認しましょう。

『名称未設定』Lv 1

 種族:ホムンクルス・コア(疑似生命体)

 ATK・M(攻撃・魔法攻撃)1・10 DEF・M(防御・魔法防御)10/10 
 AGI(素早さ) 0 LUK(幸運) 10
 HP(体力) 6/6 MP(魔力) 30/60

 因子:変化 

 種族スキル 『人形同化』『思念伝達』
 固有スキル 『虚構の箱』『模倣』
 一般スキル 『掃除』『学習』

 本当ですね。私のMPが30になっています。ちょっと待ってください。じゃあ、このままだと私ってすぐに休眠状態になってしまうんですか?

 <はい。現在の消費速度から考えると、残りの活動時間は、おおよそ30分と予測されます>

 30分って、満タンでも私って1時間しか活動出来ないってことですか!?

 それは生命体と言って良いんでしょうか?

 成虫のセミでも、1週間は活動出来ますよ。

 とはいえ、私にどうにかする手段ってあるんですか? MPってどうやって回復するんですか?

 <通常なら睡眠、食事などによりMPを回復します。しかし、ホムンクルス・コアは食事を摂取することは出来ません。休眠状態になった際には、時間経過で回復します>

 休眠状態にならないためにMPの回復手段を探しているのに休眠状態にならないと回復出来ないのは本末転倒ですよ。

 最強の体を手に入れたと思ったら、すごく燃費の悪い体でした。

 ちなみにMPを回復する時間はどれぐらいなんですか?

 <おおよそ、3時間だと思われます>

 つまり、3分に1回復する計算ですか。ソシャゲのスタミナみたいな時間ですね。

 じゃあ、無敵時間も結局、1時間だけなんですね。まあ、強過ぎて無双する系は、もう食傷気味ですし、良いんですけど。

 良いんですけどね! 別に無双して「あいつ、何者だ。いきなり現れたのに強すぎる!」みたいな展開に憧れてなんかいませんよ。

 ・・・・・・・ほんのちょっとだけしか。

 さて、そうは言っても残り30分ですもんね。

 <正確には26分です>

 モノローグに茶々入れないでください。知ってますよ。MPの表記は見えてますから!

 いえ、動けないので、何もやりようがないんですけどね。これは、休眠を待つしかないですね。

 せめて、ある程度、情報は整理しておきたいですね。

 私が休眠状態になった場合って、『虚構の箱』の効果はどうなるんですか?

 <休眠状態であってもスキルは持続します。スキルをOFFにすれば、約2時間でMPを回復出来ます>

 おや? つまり、寝てる時に破壊されて死ぬみたいなことはないんですね。

 それは朗報ですね。流石にスキルをOFFにして寝るという恐ろしいことは出来ないので、甘んじて受け入れましょう。

 もしかして、『虚構の箱』の効果でMPの消費が早いんですか?

 <いいえ、休眠状態でもスキルを行使することによってMPが消費されているため、回復が遅くなっています>

 なるほど、スリープモードでも電気を消費してますよ。的な意味なんですね。

 そうなると比較的、楽観視して現状をみることが出来ますね。

 暇ですし、一緒にしりとりでもしますか? ガイドさん。

 <分かりました。では、『愚か』から始めましょう>

 なんか含みのあるワード選びですけど、私のことじゃないですよね? たまたま、思いついたワードが愚者だったんですよね?

 <愚かですので、次の言葉は『か』です>

 何にも答えてくれない。か、か、殻!

 <『楽観視』>

 やっぱり、私のこと言ってないですか!?

 <楽観視ですので、次の言葉は『し』です。>

 全然、答えてくれませんね!

 私はそうして、26分間のしりとりの後に休眠状態に入ったのでした。

 いや、もっとすることあったとか言われても。
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