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ご主人様と異世界事情
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イーリスからもらった苦い汁――――お茶と言うにはあまりにも苦かったため――――を無理やり流し込みます。
「人をお茶に誘うと喜ぶって聞いてたんだけど」
「誘われて喜ぶのは、もう少し美味しいお茶の場合ですよ」
イーリスのお茶の入れ方は、使った後の小さな鍋を見てすぐに分かった。薬草の茶葉に直接お水を注いで、煮詰めてから、それをコップに移しただけの代物でした。
苦い汁。というのは、おおむね間違っていない描写だったのだなと実感します。私は、おそらく上澄みを飲んだため気にならなかったのですが、イーリスのお茶の容器には、煮詰めた薬草が大量に入っていました。お茶と言うには、あまりにも具が多いです。
「この世界のお茶はこういう入れ方が基本なんですか?」
「分からない。・・・・・・入れたことがないから」
「・・・・・・なるほど」
これは重症ですね。誰も彼女に教えてあげなかったんでしょうか。本当に野生児じゃないですか。
いえ、こんな人里離れた森の中に一人で住んでいるんですから、仕方ないのかもしれませんけど。
ただ、どうしてこんな場所に居を構えているのか、聞いても良いものなのか少し心配です。
それとなく、会話を広げて話を聞いてみましょう。
「ご主人様。この世界について、ある程度、ご教授してもらっても良いですか?」
「う、うん。分かった。この場所は、ギルシア国の東にある森。ギルシア国は、色んな種族が住んでいる国家で他国と比べてもかなりの強国って言われている」
「他種族、魔女とかもいるんですか?」
「多分。あまり私はここから出る事がないから、ほとんど知らないけど。一番多いのは、人間だけど、他種族国家だから、そんなに差別意識はないと思う」
「他の国はそうじゃないんですか?」
「チャロア国は、人間至上主義の国だって聞くけど。だから、異種族に対しての差別はかなり酷いって聞く。他も同じ種族の子たちで集まって国を作って場合が多いから、同族と比べると扱いが悪かったりする場合もあるらしい」
種族スキルという種族ごとに異なるものがある世界で、異種族が共存するのは少し難しいのかもしれません。種族間では当たり前に出来ることが出来ない相手と一緒にいるのは価値観が合わないこともありそうです。
下手にそういう違う存在を入れるぐらいなら、同じ種族で固まった方が、トラブルがなくて良いかもしれませんね。
「では、魔女の国というのもあるのですか?」
「魔女同士は、群れることをあまりしない。そんなに数が多くないし、魔法を使える魔女が一か所に集まると嫌がられるから」
魔法という万能の力を使ってなんでも思い通りにしてしまえる魔女が一か所に集結していたら、そりゃあ、危険視されますよね。
「国によっては、魔女が住み着くと神聖視されるみたいな話も聞く。おいそれと魔女のいる国に戦争を挑めないからって」
「そんな核兵器みたいな扱いなんですね」
「核兵器?」
「あ、いえ、お気になさらず。続けてください」
国のパワーバランスを左右する存在ってとんでもありませんね。そんな存在が、苦い汁を出して人をもてなそうとしているとは、夢にも思わないでしょうね。
「ギルシア国はどちらかというと不干渉を貫いてる。そもそも、魔女がいなくても強い国だから、特に魔女に対して何かをお願いすることもない」
「それはありがたいことですね。国については、なんとなく分かったんですけど、街の人の生活というか、そういうのは」
「スキルを活かした仕事をしていることが多い・・・・・・と思う。戦闘系の固有スキル持ちは、衛兵とか狩人になったり、創作系の固有スキルなら、職人になったりしてると・・・・・・思う」
「急に情報の質が下がったんですけど」
「・・・・・・本で読んだだけだから」
「ご主人様、本当にこの世界で生活してました? 私の一週間前に転生してきた異世界人とかじゃないですよね?」
ふわふわした街の情報に思わずそんな言葉が出てしまいます。
「街には危険がいっぱいある。いきなり、話しかけられたり、子供に追いかけられたりするに違いない」
「ご主人様、やっぱり、人が苦手なんですね。でも私とは、話せてるじゃないですか」
今の私って、限りなく人間に近い姿のはずなんですけど。イーリスは比較的、普通に話している気がします。
もちろん、少し緊張した様子はありますけど。
「フレンは、ホムンクルス・コアだから大丈夫。人間じゃないから恥ずかしくない」
「そんなパンツじゃないから恥ずかしくないみたいな言い方されても」
「それに困ったらコアを取り出せれば何も出来ないから」
「もしかして、ご主人様、結構、良い性格してます?」
「・・・・・・? ありがとう?」
「いや、褒めてはないのですけど・・・・・・まあ、良いです」
それぐらい割り切って話してくれる方が、こちらとしても話しやすい。人間とはコミュニケーションが取れないという理由で、私とも話せないと致命的な状況になっていたでしょうし。
「それなら魔法薬は、どこに売りに行ってるんですか? 人間に売ってるんですよね」
「知り合いに渡して売ってもらってる」
「お友達がいらっしゃるんですね。少し安心しました」
「お友達じゃない。知り合い」
思いの外、強く否定が返ってきました。友達だとは思われたくないタイプの人なんですかね。
「フレンも会うことがあるだろうけど、気を付けた方が良い。気を抜くと知らない場所に連れていかれる」
「え、大丈夫ですか? その誘拐犯」
確かにそんな犯罪者を友達とは呼びたくないだろうな。
「なんで、そんな人と取引をしてるんですか?」
「珍しい魔草とか魔獣の素材を持ってくるから」
うちのご主人様、簡単に誘拐されそう。魔草を等間隔において、棒のついた籠の下に高級な魔草とか置いていれば、簡単に捕まえられそうです。
防犯意識が薄すぎますね。
「ご主人様。知らない人に魔草あげるからついておいでとか言われてもついて行っちゃだめですよ?」
「さすがに知らない人にはついて行かない」
「おまけに今なら、超珍しい魔獣の皮もつけてあげるって言われたら?」
「ちょっと、どんなものか確認してから」
「だめですよ」
不安だなぁ。確かに彼女にとって街は危険な場所かもしれません。私が守らないと。
「人をお茶に誘うと喜ぶって聞いてたんだけど」
「誘われて喜ぶのは、もう少し美味しいお茶の場合ですよ」
イーリスのお茶の入れ方は、使った後の小さな鍋を見てすぐに分かった。薬草の茶葉に直接お水を注いで、煮詰めてから、それをコップに移しただけの代物でした。
苦い汁。というのは、おおむね間違っていない描写だったのだなと実感します。私は、おそらく上澄みを飲んだため気にならなかったのですが、イーリスのお茶の容器には、煮詰めた薬草が大量に入っていました。お茶と言うには、あまりにも具が多いです。
「この世界のお茶はこういう入れ方が基本なんですか?」
「分からない。・・・・・・入れたことがないから」
「・・・・・・なるほど」
これは重症ですね。誰も彼女に教えてあげなかったんでしょうか。本当に野生児じゃないですか。
いえ、こんな人里離れた森の中に一人で住んでいるんですから、仕方ないのかもしれませんけど。
ただ、どうしてこんな場所に居を構えているのか、聞いても良いものなのか少し心配です。
それとなく、会話を広げて話を聞いてみましょう。
「ご主人様。この世界について、ある程度、ご教授してもらっても良いですか?」
「う、うん。分かった。この場所は、ギルシア国の東にある森。ギルシア国は、色んな種族が住んでいる国家で他国と比べてもかなりの強国って言われている」
「他種族、魔女とかもいるんですか?」
「多分。あまり私はここから出る事がないから、ほとんど知らないけど。一番多いのは、人間だけど、他種族国家だから、そんなに差別意識はないと思う」
「他の国はそうじゃないんですか?」
「チャロア国は、人間至上主義の国だって聞くけど。だから、異種族に対しての差別はかなり酷いって聞く。他も同じ種族の子たちで集まって国を作って場合が多いから、同族と比べると扱いが悪かったりする場合もあるらしい」
種族スキルという種族ごとに異なるものがある世界で、異種族が共存するのは少し難しいのかもしれません。種族間では当たり前に出来ることが出来ない相手と一緒にいるのは価値観が合わないこともありそうです。
下手にそういう違う存在を入れるぐらいなら、同じ種族で固まった方が、トラブルがなくて良いかもしれませんね。
「では、魔女の国というのもあるのですか?」
「魔女同士は、群れることをあまりしない。そんなに数が多くないし、魔法を使える魔女が一か所に集まると嫌がられるから」
魔法という万能の力を使ってなんでも思い通りにしてしまえる魔女が一か所に集結していたら、そりゃあ、危険視されますよね。
「国によっては、魔女が住み着くと神聖視されるみたいな話も聞く。おいそれと魔女のいる国に戦争を挑めないからって」
「そんな核兵器みたいな扱いなんですね」
「核兵器?」
「あ、いえ、お気になさらず。続けてください」
国のパワーバランスを左右する存在ってとんでもありませんね。そんな存在が、苦い汁を出して人をもてなそうとしているとは、夢にも思わないでしょうね。
「ギルシア国はどちらかというと不干渉を貫いてる。そもそも、魔女がいなくても強い国だから、特に魔女に対して何かをお願いすることもない」
「それはありがたいことですね。国については、なんとなく分かったんですけど、街の人の生活というか、そういうのは」
「スキルを活かした仕事をしていることが多い・・・・・・と思う。戦闘系の固有スキル持ちは、衛兵とか狩人になったり、創作系の固有スキルなら、職人になったりしてると・・・・・・思う」
「急に情報の質が下がったんですけど」
「・・・・・・本で読んだだけだから」
「ご主人様、本当にこの世界で生活してました? 私の一週間前に転生してきた異世界人とかじゃないですよね?」
ふわふわした街の情報に思わずそんな言葉が出てしまいます。
「街には危険がいっぱいある。いきなり、話しかけられたり、子供に追いかけられたりするに違いない」
「ご主人様、やっぱり、人が苦手なんですね。でも私とは、話せてるじゃないですか」
今の私って、限りなく人間に近い姿のはずなんですけど。イーリスは比較的、普通に話している気がします。
もちろん、少し緊張した様子はありますけど。
「フレンは、ホムンクルス・コアだから大丈夫。人間じゃないから恥ずかしくない」
「そんなパンツじゃないから恥ずかしくないみたいな言い方されても」
「それに困ったらコアを取り出せれば何も出来ないから」
「もしかして、ご主人様、結構、良い性格してます?」
「・・・・・・? ありがとう?」
「いや、褒めてはないのですけど・・・・・・まあ、良いです」
それぐらい割り切って話してくれる方が、こちらとしても話しやすい。人間とはコミュニケーションが取れないという理由で、私とも話せないと致命的な状況になっていたでしょうし。
「それなら魔法薬は、どこに売りに行ってるんですか? 人間に売ってるんですよね」
「知り合いに渡して売ってもらってる」
「お友達がいらっしゃるんですね。少し安心しました」
「お友達じゃない。知り合い」
思いの外、強く否定が返ってきました。友達だとは思われたくないタイプの人なんですかね。
「フレンも会うことがあるだろうけど、気を付けた方が良い。気を抜くと知らない場所に連れていかれる」
「え、大丈夫ですか? その誘拐犯」
確かにそんな犯罪者を友達とは呼びたくないだろうな。
「なんで、そんな人と取引をしてるんですか?」
「珍しい魔草とか魔獣の素材を持ってくるから」
うちのご主人様、簡単に誘拐されそう。魔草を等間隔において、棒のついた籠の下に高級な魔草とか置いていれば、簡単に捕まえられそうです。
防犯意識が薄すぎますね。
「ご主人様。知らない人に魔草あげるからついておいでとか言われてもついて行っちゃだめですよ?」
「さすがに知らない人にはついて行かない」
「おまけに今なら、超珍しい魔獣の皮もつけてあげるって言われたら?」
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