ぼっちな魔女の魔法人形

御伽 白

文字の大きさ
18 / 33

美人のホムンクルスは、街をざわつかせる。

しおりを挟む
 イーリスの住んでいる場所は、木々が生い茂った深い森にあります。森の一部をくり抜いたように整地されていて、どこかへ行くための道も存在しません。

 「この辺りの村だと素材は手に入らないから、オススメの街にする」

 薬の材料を買いに行ってくれると知ったフレンは私よりもノリノリで準備を進めています。

 実は村に行きたかったのでは?
 
「でも、どうやって行くんですか? イーリスが箒に乗せて送ってくれるんですか?」

「箒は一人乗りだから。これを使う」

 そういって、イーリスが取り出したのは、銀色の鍵です。所々、宝石で装飾された鍵は、美術品のような印象を受けます。

「どこの鍵です?」

「これは魔法の道具。1日に6回まで使える行ったことのある場所に行ける道具」

 行ったことのある場所に転移できる道具なんてあったんですか。かなり便利な代物じゃないですか。
  
「凄い道具ですけど、それもイーリスが?」

「これは私の作ったものじゃなくて、ダンジョンとかで取れる遺物。ダンジョンで取れる遺物は、固有スキルのような強力な効果があるものも多い」

「ダンジョンもあるんですね」

 正直、異世界的にかなり胸が躍るワードです。本当にゲームみたいな設定の世界ですね。

 この世界、異世界の要素が特盛ですね。もし戦闘系のスキルを手に入れていたら、それはそれで楽しい異世界ライフを送れたかもしれません。
 
「ダンジョンは自然災害みたいに突然に起きる。得られるものもあるけど、危険な場所だから、すぐに攻略されて消滅する」

「そりゃあ、危険でしょうけど、それはどこでも一緒なのでは?」

「大量の魔獣が出現するし、放置し過ぎると外に出てくる。倒しても魔獣と違って消えてしまうから、素材にもならない」

「確かにメリットが薄いですね」

 素材は聞いている限り、薬の材料だったり、魔道具の素材として使用することが出来るようですし、その素材が手に入らないのであれば、命懸けで戦うメリットはないのかもしれませんね。

「話が逸れた。フレンにはこれも渡す」

イーリスは、波打つ黒い空間から、少し小さな袋を取り出して私に手渡します。

かなり年季の入った袋で、お世辞にも綺麗な物とは言えない代物です。しかし、これはなんとなく分かります。
 
「もしかして、収納出来る魔法の道具ですか!?」

「そう。比較的、ダンジョンで簡単に手に入る袋。ハズレ枠」

「え、これ、ハズレなんですか?」

 四次元ポケットみたいなアイテムがハズレ? そんなことありますか?

「魔術を覚えれば、誰でも出来るのにわざわざ、袋なんて持たない」

「あー、そう言えば、ご主人様は使ってませんね」

 その波打つ黒い空間、なんでも収納出来るんですよね。確かに物が必要ないのにわざわざ、物を用意する意味もないですよね。

 より便利なものが生まれると淘汰されていくのは、少し物寂しさを感じますね。

 携帯電話とか、あの小さな端末で出来ることが多いのに、それより小型で機能の高いスマートフォンが台頭してきて、ちょっと機能少ないよね。とか言われてしまう現象です。

 ただ、誰でも魔術を使える訳ではないので、一定数の需要があるアイテムな気もしますけど。

 おじいちゃん、おばあちゃんが、あえて携帯電話を使うみたいな。いえ、ちょっと違いますかね。

「とりあえず、ありがたく使わせてもらいます」

「うん。ただ、中は絶対に覗かないで」

「なんでですか?」

「一定時間、見た人に恐ろしい幻覚を見せる効果がある。最悪、数ヶ月まともに生活出来なくなる」

「呪いの道具じゃないですか!?」

 平然と恐ろしいものを説明なく渡さないでもらえませんかね!? どうなってるんだろ。とか思って覗いてたら大変なことになってましたよ?
 
「大丈夫。直接、見なければ良いだけだから」

「は、はぁ。分かりました」
  
「中にお金も入れてあるから、それで買い物をしてきて欲しい」

「じゃあ、扉開ける」

 イーリスはそう言うと部屋の扉に鍵を突き刺しました。鍵穴なんてなかったはずですけど、いつの間にか鍵穴が出来てます。

「扉に鍵を差し込んで行きたい場所をイメージして、鍵を捻るとその場所に出るから」

 イーリスが扉を開けると家の中ではありませんでした。見覚えのない舗装された石の道があり、レンガのような物で作られた建物が立ち並び、人々の声が遠くから聞こえてきます。

「ドアとドアを繋ぐから、ドアのない場所にはいけないのが少し難点」

「いや、それでも十分凄いですよ?」

 私は、そのまま外に出ると周囲を見渡します。人気のない路地裏のようで、少し埃っぽい場所です。しかし、道の奥には交通量の多い大通りが見えます。

 道から見える通行人は人間も多いですが、明らかに人間とは違う見た目の人もチラホラいます。

 角が生えた人とか尻尾の生えたワニの顔をした人など様々な姿をしています。

 一気に異世界に来た感じが出てきましたね。こういうのをすごく楽しみにしていたので、胸が躍ります。

「はい。フレン。鍵は渡しておく」

そう言って、イーリスは私に銀色の鍵を渡します。え、これってかなりのレアアイテムじゃないんですか?

「なんで私にこれを?」

「? これがないとフレンが帰ってこれない」

「・・・・・・確かに。え、でも、これを無くしたら大変なことなんじゃ」

「大丈夫。無くなった物を手元に召喚する魔法をかけてる。落としてもすぐに回収出来る」

 かなり便利な魔術があるんですね。なんでも出来る訳ではないと言っていましたけど、意外と出来ることが多いのでは?
 
「わ、分かりました」

「じゃあ、行ってらっしゃい。あとフレンに金貨1枚分は好きに使っていい。貯金しても良いし、使ってもいい」

「え? そんな大金、もらって良いんですか?」

「おつかいの代金。私じゃ買い物は出来ないから」

 少し申し訳なさそうな表情をしてイーリスはそんなことを言います。私に買い物を押し付けていることを少し申し訳なく思っているのでしょうか。

 気にしなくても買い物ぐらいしますけど、貰えるものはもらっておきましょう。

 私、今、お金を持ってないので!
 
「ありがとうございます。必ずや、ご主人様のお望みの商品は手に入れてみせます」

「うん。よろしく」

 イーリスは、そう言って小さく手を振って扉を閉めました。試しに扉を開けようとすると鍵がかかってました。

 この家、もしかして、赤の他人の家の扉だったりしますか?

 だとしたら、開けようとしてるのは、かなり怪しい人ですね。ふとそんなことを思って、扉を開けようとするのをやめました。

「とりあえず、買い物に行くために大通りに出ますか」

 私は、路地裏を抜けて、大通りに出ました。私はすぐに大通りの賑やかさに圧倒されました。

 石畳の敷かれた綺麗な街です。行ったことはありませんが、ヨーロッパとかこんな感じなんですかね。

 レンガで作られた背の高い建物がいくつもあります。どれも少し大きめに作ってあるような印象を感じるのは、この街の住人の身長が大きい人が多いからなんでしょうね。

 周囲の人々に目を配ると人間が一番、数が多いものの、リザードマンみたいなトカゲのような見た目の顔をした鱗を持った人がいたり、翼の生えた人がいたり、猫の顔をした人もいます。

 亜人というやつですね。その人達の中には、かなり身長の高い人がいます。2m半ぐらいある人もいるので、大きさに圧倒されます。

 これだけ身長とか見た目の違う人達が多くいるなんて、不思議な国ですね。

 私が周囲を見渡していると行き交う人々が、私のことを見ている気がします。

「メイドさんがいるぞ。すげぇ美人」

「メイドさんだ」

「すげぇ美人のメイドさんがいるぞ」

「どこのお屋敷の美人のメイドさんだ?」

 ざわざわと賑やかな様子と視線がより多く集まっています。私のことですよね?

 確かに美人なのは間違いありませんが、こんなに見られるものなんですか。

「あれ? これなんかおかしくないですか?」

 こんなに人に見られる経験がなかったので、思わずそんなことを呟きました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

悪役令嬢と入れ替えられた村娘の崖っぷち領地再生記

逢神天景
ファンタジー
とある村の平凡な娘に転生した主人公。 「あれ、これって『ダンシング・プリンス』の世界じゃない」 ある意味好きだった乙女ゲームの世界に転生していたと悟るが、特に重要人物でも無かったため平凡にのんびりと過ごしていた。 しかしそんなある日、とある小娘チート魔法使いのせいで日常が一変する。なんと全てのルートで破滅し、死亡する運命にある中ボス悪役令嬢と魂を入れ替えられてしまった! そして小娘チート魔法使いから手渡されたのはでかでかと真っ赤な字で、八桁の数字が並んでいるこの領地収支報告書……! 「さあ、一緒にこの崖っぷちの領地をどうにかしましょう!」 「ふざっけんなぁあああああああ!!!!」 これは豊富とはいえない金融知識と、とんでもチートな能力を活かし、ゲーム本編を成立させれる程度には領地を再生させる、ドSで百合な少女の物語である!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...