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4章
Part 341『隠すのが上手くなるだけ』
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「・・・・・・もう解散かな。」
楽しい時間というのは本当にあっという間に過ぎていくもので、すぐに日も暮れはじめていた。
凛は寂しげな声音でそう呟いた。今のサクヤと過ごせるのは今だけだ。それが分かっているからこそ、声音が寂しげになるのは仕方のないことだった。
「サクヤ」
凛はサクヤに向かって大きく手を広げる。サクヤもそれに応じる様に凛に抱きついた。
「会えて良かった。大好きだよ。」
凛に強く抱きしめられサクヤの瞳が潤む。鼻をすすりながらサクヤも強く抱きしめ返す。
「私も凛さんとお友達になれて良かったです。」
「うん。本当は最後まで一緒にいたいけど、それは日向に譲るね。」
そう言って凛はサクヤを抱きしめながら俺の方を見た。
それは激励にも感じられた。最後まで一緒にいろと。二人で最後は幸せに過ごせと。そう言われている様な気がした。
俺は黙って頷くと凛も納得した様子で、もう一度サクヤを強く抱きしめるとゆっくりと手を離した。
「写真撮ろう。今ならサクヤも写るよね。」
「はい! 大丈夫です。」
凛はそういうとスマホを取り出して近くの店員に声をかけていた。この辺りの行動の早さは見習うべきところだ。
店員は写真撮影を快く受けてくれ凛のスマホを持って近寄ってくる。
「はい。じゃー取りますよー! 皆さん、笑って笑ってー。1+1は?」
「「「「2」」」」
お決まりの掛け声と共にシャッター音が響く。
凛は店員にお礼を言うと取れた写真を確認してもう一度お礼を言っていた。
「現像したらみんなに渡す。日向には、データも送っておく。」
「ああ、ありがとう。」
そうして、すぐに凛から写真が送られてくる。データを確認すると全員の笑顔の写真が画面に現れる。サクヤもきちんと写っていて、綺麗に撮れている。
「それじゃあ、帰ろうか。」
「そうですね。」
「・・・・・・はい。」
ユキは渋々という風に頷いた。色々と溜め込んでいるのは容易に想像出来た。
仲の良い友人が突然、記憶を全て失うと知らされれば当然だ。遊びの最中は、特に意識の端に追いやられていただろうが、別れの時になって実感が強くなったのだろう。
帰り道、ユキは黙って凛と話をするサクヤの様子を見ていた。
そうこうしている間に駅に着き、凛は帰り道が変わったところで凛と別れることになった。
「じゃあ、ばいばい。サクヤ。幸せにね。」
「はい。凛さんもお元気で」
もう一度軽く抱きしめるとすぐに離れて俺達に笑顔で手を振った。
サクヤも笑って手を振り返すと山に向かって歩きはじめた。
それについていきながら後ろを振り返ると先程まで笑顔だった表情が崩れ、その顔には涙が落ちていた。
嗚咽も何もなくただ涙だけが滴っていた。
寂しくないはずはない。強がってはいても歳を取っても悲しいことがなくなるわけじゃない。
ただ、隠すのが上手になるだけだ。それに凛は、情が深い。そんな彼女が記憶喪失なんて別れを悲しまないわけはない。必死に取り繕っていた。
最後までサクヤとの思い出を笑顔で終わらせれる様に頑張っていたのだ。
俺は何も言わずに前を向いてサクヤ達に続いた。
楽しい時間というのは本当にあっという間に過ぎていくもので、すぐに日も暮れはじめていた。
凛は寂しげな声音でそう呟いた。今のサクヤと過ごせるのは今だけだ。それが分かっているからこそ、声音が寂しげになるのは仕方のないことだった。
「サクヤ」
凛はサクヤに向かって大きく手を広げる。サクヤもそれに応じる様に凛に抱きついた。
「会えて良かった。大好きだよ。」
凛に強く抱きしめられサクヤの瞳が潤む。鼻をすすりながらサクヤも強く抱きしめ返す。
「私も凛さんとお友達になれて良かったです。」
「うん。本当は最後まで一緒にいたいけど、それは日向に譲るね。」
そう言って凛はサクヤを抱きしめながら俺の方を見た。
それは激励にも感じられた。最後まで一緒にいろと。二人で最後は幸せに過ごせと。そう言われている様な気がした。
俺は黙って頷くと凛も納得した様子で、もう一度サクヤを強く抱きしめるとゆっくりと手を離した。
「写真撮ろう。今ならサクヤも写るよね。」
「はい! 大丈夫です。」
凛はそういうとスマホを取り出して近くの店員に声をかけていた。この辺りの行動の早さは見習うべきところだ。
店員は写真撮影を快く受けてくれ凛のスマホを持って近寄ってくる。
「はい。じゃー取りますよー! 皆さん、笑って笑ってー。1+1は?」
「「「「2」」」」
お決まりの掛け声と共にシャッター音が響く。
凛は店員にお礼を言うと取れた写真を確認してもう一度お礼を言っていた。
「現像したらみんなに渡す。日向には、データも送っておく。」
「ああ、ありがとう。」
そうして、すぐに凛から写真が送られてくる。データを確認すると全員の笑顔の写真が画面に現れる。サクヤもきちんと写っていて、綺麗に撮れている。
「それじゃあ、帰ろうか。」
「そうですね。」
「・・・・・・はい。」
ユキは渋々という風に頷いた。色々と溜め込んでいるのは容易に想像出来た。
仲の良い友人が突然、記憶を全て失うと知らされれば当然だ。遊びの最中は、特に意識の端に追いやられていただろうが、別れの時になって実感が強くなったのだろう。
帰り道、ユキは黙って凛と話をするサクヤの様子を見ていた。
そうこうしている間に駅に着き、凛は帰り道が変わったところで凛と別れることになった。
「じゃあ、ばいばい。サクヤ。幸せにね。」
「はい。凛さんもお元気で」
もう一度軽く抱きしめるとすぐに離れて俺達に笑顔で手を振った。
サクヤも笑って手を振り返すと山に向かって歩きはじめた。
それについていきながら後ろを振り返ると先程まで笑顔だった表情が崩れ、その顔には涙が落ちていた。
嗚咽も何もなくただ涙だけが滴っていた。
寂しくないはずはない。強がってはいても歳を取っても悲しいことがなくなるわけじゃない。
ただ、隠すのが上手になるだけだ。それに凛は、情が深い。そんな彼女が記憶喪失なんて別れを悲しまないわけはない。必死に取り繕っていた。
最後までサクヤとの思い出を笑顔で終わらせれる様に頑張っていたのだ。
俺は何も言わずに前を向いてサクヤ達に続いた。
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