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序章
Part 19『リューはお使いをお願いする』
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10時を少し過ぎた頃、家を抜け出す。家族には友達の家に届け物をしなければいけないと誤魔化しておいた。
春香だけは、疑わしそうな目でずっと俺のことを見ていた。あの子は、どれだけ俺のことを友達がいないやつだと思っているのだろうか・・・
サクヤは、日が沈んでしばらくしたら店に行くと言っていたので、もうすでに店に向かっているかもしれない。
待ち合わせをしても良かったのだが、時間の概念がわからない彼女と待ち合わせをするのは、難しい。その上、山によって行くと反対方向にあるので遠回りになる。そういう結果で俺達は現地集合という事になった。
路地裏に入ると通路に一軒だけ明かりが灯っている。リューの経営している店だ。
そういえば、この店なんて名前なんだろう。看板を見て見ると名前が書かれていない。その代わりに魔女のとんがり帽を黒い犬が被っている絵が描かれている。
「モデルがリドなのかな・・・随分デフォルメされてるけど・・・」
店の窓から覗き込むと店の奥でリューとサクヤが紅茶を飲んでいた。リューは、今日は珍しく、身なりがきちんとしていて別人のようだった。服もスタイルの良さが分かる体にぴったりとしたドレスを着ている。綺麗だが扇情的にも見える。
「おお、印象が・・・だいぶ違うぞ・・・」
このようなことを適切な言葉で言い表すなら、そう、馬子にも
「誰が馬子にも衣装だ。」
ポカリと頭を叩かれる。気がつくと横にリューが立っていた。
「まったく、外で何を考えているかと思ったら、僕は、これでも魔女なんだよ? あんまり、失礼なこと考えてるとどうなっても知らないよ?」
少し怒気の篭った声音でリューはそう言ってくる。身の危険を感じ背筋がスッと寒くなるのを感じる。
「すみません。」
俺が謝ると「よろしい」とリューは言って店の中に入っていった。俺もそれに続いて店に入った。
「さて、全員揃ったところで話をしようか。僕が君達二人にする一つ目のお願いだ。」
リューは、先日会った時よりもテンションが少し高い気がする。そして、彼女がリド曰く、夜型だと言っていたのを思い出す。つまり、彼女は今、一番調子のいい状態ということらしい。
「だけど、安心してくれ。何も難しいお願いをしようってわけじゃない。」
「お使いでしたっけ?」
「そう。長いこと、予約してたんだけど、やっと作業が始まるらしいから取りに行って欲しいんだよね。」
予約が混むほどの刀鍛冶というのはどういう人なのだろうか。というか、リューは、その刀をいったいどうするつもりなのだろうか?
彼女は、非常に細身でそれこそ、触れれば壊れそうなほどの細腕で刀を振るえるとは到底思えない。
だとしたら、リドが使うのだろうか。
「ふむふむ、確かに僕が刀を使えるとは思えないというのは正しい意見だよ。実際、刀なんて触ったこともなければ、振るうなんて以ての外だ。だけどね。彼の打つ刀は、ただの刀じゃない。」
「ただの刀じゃないって・・・」
「彼の本気で打った刀は、特殊な能力を持つんだ。世に言う妖刀ってやつだ。」
「妖刀って・・・・・・もしかして、その刀鍛冶は人間じゃないのか?」
「そうだよ。れっきとした妖怪だよ。リドのような人間と獣を足して2で割ったような男だよ。」
そう言われてもリドは見た目は、人間と全く変わらないので、全くイメージ出来ない。
「とりあえず、交通費は出すから、まあ、旅行だと思ってさ。気楽に行ってくれていいよ。」
「・・・はあ・・・」
俺達は、なんとなく、こんな楽な仕事があっていいのかと思いながらリューの話を聞いたのだった。
春香だけは、疑わしそうな目でずっと俺のことを見ていた。あの子は、どれだけ俺のことを友達がいないやつだと思っているのだろうか・・・
サクヤは、日が沈んでしばらくしたら店に行くと言っていたので、もうすでに店に向かっているかもしれない。
待ち合わせをしても良かったのだが、時間の概念がわからない彼女と待ち合わせをするのは、難しい。その上、山によって行くと反対方向にあるので遠回りになる。そういう結果で俺達は現地集合という事になった。
路地裏に入ると通路に一軒だけ明かりが灯っている。リューの経営している店だ。
そういえば、この店なんて名前なんだろう。看板を見て見ると名前が書かれていない。その代わりに魔女のとんがり帽を黒い犬が被っている絵が描かれている。
「モデルがリドなのかな・・・随分デフォルメされてるけど・・・」
店の窓から覗き込むと店の奥でリューとサクヤが紅茶を飲んでいた。リューは、今日は珍しく、身なりがきちんとしていて別人のようだった。服もスタイルの良さが分かる体にぴったりとしたドレスを着ている。綺麗だが扇情的にも見える。
「おお、印象が・・・だいぶ違うぞ・・・」
このようなことを適切な言葉で言い表すなら、そう、馬子にも
「誰が馬子にも衣装だ。」
ポカリと頭を叩かれる。気がつくと横にリューが立っていた。
「まったく、外で何を考えているかと思ったら、僕は、これでも魔女なんだよ? あんまり、失礼なこと考えてるとどうなっても知らないよ?」
少し怒気の篭った声音でリューはそう言ってくる。身の危険を感じ背筋がスッと寒くなるのを感じる。
「すみません。」
俺が謝ると「よろしい」とリューは言って店の中に入っていった。俺もそれに続いて店に入った。
「さて、全員揃ったところで話をしようか。僕が君達二人にする一つ目のお願いだ。」
リューは、先日会った時よりもテンションが少し高い気がする。そして、彼女がリド曰く、夜型だと言っていたのを思い出す。つまり、彼女は今、一番調子のいい状態ということらしい。
「だけど、安心してくれ。何も難しいお願いをしようってわけじゃない。」
「お使いでしたっけ?」
「そう。長いこと、予約してたんだけど、やっと作業が始まるらしいから取りに行って欲しいんだよね。」
予約が混むほどの刀鍛冶というのはどういう人なのだろうか。というか、リューは、その刀をいったいどうするつもりなのだろうか?
彼女は、非常に細身でそれこそ、触れれば壊れそうなほどの細腕で刀を振るえるとは到底思えない。
だとしたら、リドが使うのだろうか。
「ふむふむ、確かに僕が刀を使えるとは思えないというのは正しい意見だよ。実際、刀なんて触ったこともなければ、振るうなんて以ての外だ。だけどね。彼の打つ刀は、ただの刀じゃない。」
「ただの刀じゃないって・・・」
「彼の本気で打った刀は、特殊な能力を持つんだ。世に言う妖刀ってやつだ。」
「妖刀って・・・・・・もしかして、その刀鍛冶は人間じゃないのか?」
「そうだよ。れっきとした妖怪だよ。リドのような人間と獣を足して2で割ったような男だよ。」
そう言われてもリドは見た目は、人間と全く変わらないので、全くイメージ出来ない。
「とりあえず、交通費は出すから、まあ、旅行だと思ってさ。気楽に行ってくれていいよ。」
「・・・はあ・・・」
俺達は、なんとなく、こんな楽な仕事があっていいのかと思いながらリューの話を聞いたのだった。
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