咲かない桜

御伽 白

文字の大きさ
20 / 352
1章

Part 20 『田舎』

しおりを挟む
 数日後、バイトの連休が取れた頃に俺達は、電車を乗り継いで刀鍛冶の住む村へとたどり着いた。

 サクヤは、1日以上依り代から離れられないというルールがある。そのため、彼女は、毎日通わなくてはいけないのだが、彼女は、電車に乗ること自体好きらしく、全然気にした様子もなかった。

 飛んでこれないのかというと、移動速度に関しては人間が走るより少し早い程度で電車の方が早いのだという。

 ピンク色の髪の少女は、どうやら妖怪達の間でも規格外の身体能力を持っているようだった。

 刀鍛冶の住む街は、田畑に囲まれた田舎で家の数よりも田んぼや畑の方が多いような場所だった。コンビニもスーパーもなく、駅すら無人駅だった。

 「凄い田舎ですね。自然豊かというか・・・」

 サクヤは、駅に着くと辺りを漂いながらそんなことを言う。俺もこんなに田舎に来たことはなかったので人生初の経験だ。

 「電車が2時間に一回しか来ないってさ。帰るとき注意しないとダメだな。」

 「そーですね・・・峰さんは、こちらで泊まるんですよね。」

 「ああ、リューが言うには、刀鍛冶の家に泊まれるように手配してくれてるらしい。なんというか、至れり尽くせりって感じだよな。」

 「はい。もっと、難易度の高いお願いをされるのかと思いました。」

 「ああ、もっと面倒な話かと思ったよな。」

 実際、リューの準備は万端だった。まるで調べたようにここ数日はバイトが休みであることもあって、泊りがけでいられるように手配してくれたし、交通費も出してくれた。彼女は「出来るのは数日かかるから、その間、仕事を見せてもらいなよ。あの村には温泉もあるから楽しんできなよ。」と言ってきた。

 魔女とは思えない手当だ。逆に不気味だ。いや、こんなことを考えていたら、脅されてしまう。

 「それで、刀鍛冶の方はどこに住んでいらっしゃるんですか?」

 「なんでも刀鍛冶の家は、山の上にあるからって言ってたけど・・・」

 駅を出て辺りを見渡してみる。大自然が俺たちを迎え入れてくれる。街にはない落ち着いた雰囲気が、心にゆったりとした安心感を与えてくれる。しかし、問題があった。

 「山って・・・どの山だ?」

 周囲が山に囲まれていることを除けば、非常にわかりやすい説明だ。

 「全部総当りするしかないか・・・」

 「そ、そうですね。」

 結局、適当に山を登って探してみて、最終的に見つかったのは、3つ目の山だった。

 歩くことは、嫌いではないが山をまさか三つ登ることになるとは思わなかった。

 「やっとついたぁ・・・」と張ってきた太ももをさすりながら呟いた。

 そんな中、サクヤが恐る恐ると言った様子で俺に尋ねてくる。

 「あの・・・今更なんですけど、電話でリューさんにきくというのは出来なかったんでしょうか・・・?」

 「・・・・・・」

 本当に今更だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

処理中です...