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45.満足するまで踊ったのは久しぶり
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「バレンティナ様をダンスにお誘いしても構いませんか?」
皇族に分類される親族同士は、互いを肩書きで呼ばない。そのルールは、お母様に説明を受けていた。ややこしいからでしょうね。私が既婚でも未婚でも関係なく「バレンティナ」の個人名に「様」の敬称が付く。これはオスカル様に対しての私の呼び方と同じだった。
堅苦しい「皇女殿下」がないだけ、親密に感じる。なぜかオスカル様は私ではなく、お母様にお伺いを立てた。穏やかに頷くお母様に促され、彼の手を取る。会釈して一緒に皇族席から降りた。
ゆったり流れるのは、三拍子の音楽。ダンス初心者から上級者まで踊る一般的な曲が、一流の楽師達により奏でられる。耳に馴染んだ心地よい音楽に口元を綻ばせ、まずは互いに向かい合って一礼する。それからオスカル様が差し出す手に重ね、ホールへ一礼。
重ねる手を軸にくるりと半回転し、ステップに入った。このダンス曲は、どこからでも踊れるのが利点ね。タイミングをはかって合流した。流れるようなステップでリードされる。
手は握らず、もう片方の手をオスカル様の肩に添える。彼も空いた手を私の背中に触れさせた。腰は夫婦や婚約者のみなので、僅かに上の背中に手を当てるのが正しい。
息が切れるまで、曲が変わっても踊り続けた。オスカル様のリードは踊りやすく、久しぶりに夜会を堪能する。ベルナルドはダンスが嫌いだったから、結婚してからはお父様としか踊れなかった。兄か弟がいたらよかったのだけれど……既婚者が家族以外と踊ることは、モンテシーノス王国で歓迎されない。
踊るのが大好きな私は、いつも躍る未婚令嬢達を羨ましく思っていた。未婚のご令嬢は、次々とお相手を替えて踊れるのだ。そうして息の合う異性を探すお見合いでもあった。
「ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
微笑みあって、運ばれたシャンパンに手を伸ばす。私は侍従に告げて、葡萄のジュースに変更してもらった。全体にスローテンポな曲ばかりで、助かったわ。体力が落ちているから、華やかで複雑なアップテンポだと付いていけなかった。
下がって壁際へ移動したところで、周囲を人に囲まれてしまう。侯爵など当主である年配の方からのご挨拶から、年若い未婚の方々の値踏みまで。
過去に経験しているが、しばらく離れていた社交界の慌ただしい洗礼を受けた。侯爵家だった頃の経験を活かし、挨拶を捌く。お名前を記憶しながら、次々と受けて流した。公爵家になれば、貴族の頂点だ。その家に未婚令嬢、それも皇族の血を引く出戻りがいるとなれば、貴族も必死だった。
息子や甥、孫を勧める当主には「父の意向に従います」と曖昧に誤魔化す。これで半分は処理できた。残ったのは、若い令息のお誘いだ。隣でオスカル様もご令嬢方にダンスをせがまれていた。
カルレオン帝国の大公家は、事実上の皇族と同じ。実際に皇弟や皇兄が継いだ経緯があるため、積極的なアピールをしながらも、令嬢達は一歩引いていた。不敬罪が適用されるギリギリを攻めてくる。
「私は誰とも踊らないよ」
「でも今踊ってらしたわ」
「君達とは踊らない。そこを空けてくれ」
むっとした口調で麗しいご令嬢を押し除け、私にエスコートの手を差し出した。上に重ねると、私に誘いをかけた令息達を睥睨する。
「君らも下がってくれないか」
蹴散らすようにして、皇族席へ戻った。階段に足をかけてしまえば、もう声掛けの心配はない。戻ってきた私達を見て、お母様は「あらあら」と苦笑いする。ナサニエルを膝に抱いたお母様は、揶揄うような口調で尋ねた。
「恋のお相手は見つかったかしら?」
皇族に分類される親族同士は、互いを肩書きで呼ばない。そのルールは、お母様に説明を受けていた。ややこしいからでしょうね。私が既婚でも未婚でも関係なく「バレンティナ」の個人名に「様」の敬称が付く。これはオスカル様に対しての私の呼び方と同じだった。
堅苦しい「皇女殿下」がないだけ、親密に感じる。なぜかオスカル様は私ではなく、お母様にお伺いを立てた。穏やかに頷くお母様に促され、彼の手を取る。会釈して一緒に皇族席から降りた。
ゆったり流れるのは、三拍子の音楽。ダンス初心者から上級者まで踊る一般的な曲が、一流の楽師達により奏でられる。耳に馴染んだ心地よい音楽に口元を綻ばせ、まずは互いに向かい合って一礼する。それからオスカル様が差し出す手に重ね、ホールへ一礼。
重ねる手を軸にくるりと半回転し、ステップに入った。このダンス曲は、どこからでも踊れるのが利点ね。タイミングをはかって合流した。流れるようなステップでリードされる。
手は握らず、もう片方の手をオスカル様の肩に添える。彼も空いた手を私の背中に触れさせた。腰は夫婦や婚約者のみなので、僅かに上の背中に手を当てるのが正しい。
息が切れるまで、曲が変わっても踊り続けた。オスカル様のリードは踊りやすく、久しぶりに夜会を堪能する。ベルナルドはダンスが嫌いだったから、結婚してからはお父様としか踊れなかった。兄か弟がいたらよかったのだけれど……既婚者が家族以外と踊ることは、モンテシーノス王国で歓迎されない。
踊るのが大好きな私は、いつも躍る未婚令嬢達を羨ましく思っていた。未婚のご令嬢は、次々とお相手を替えて踊れるのだ。そうして息の合う異性を探すお見合いでもあった。
「ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
微笑みあって、運ばれたシャンパンに手を伸ばす。私は侍従に告げて、葡萄のジュースに変更してもらった。全体にスローテンポな曲ばかりで、助かったわ。体力が落ちているから、華やかで複雑なアップテンポだと付いていけなかった。
下がって壁際へ移動したところで、周囲を人に囲まれてしまう。侯爵など当主である年配の方からのご挨拶から、年若い未婚の方々の値踏みまで。
過去に経験しているが、しばらく離れていた社交界の慌ただしい洗礼を受けた。侯爵家だった頃の経験を活かし、挨拶を捌く。お名前を記憶しながら、次々と受けて流した。公爵家になれば、貴族の頂点だ。その家に未婚令嬢、それも皇族の血を引く出戻りがいるとなれば、貴族も必死だった。
息子や甥、孫を勧める当主には「父の意向に従います」と曖昧に誤魔化す。これで半分は処理できた。残ったのは、若い令息のお誘いだ。隣でオスカル様もご令嬢方にダンスをせがまれていた。
カルレオン帝国の大公家は、事実上の皇族と同じ。実際に皇弟や皇兄が継いだ経緯があるため、積極的なアピールをしながらも、令嬢達は一歩引いていた。不敬罪が適用されるギリギリを攻めてくる。
「私は誰とも踊らないよ」
「でも今踊ってらしたわ」
「君達とは踊らない。そこを空けてくれ」
むっとした口調で麗しいご令嬢を押し除け、私にエスコートの手を差し出した。上に重ねると、私に誘いをかけた令息達を睥睨する。
「君らも下がってくれないか」
蹴散らすようにして、皇族席へ戻った。階段に足をかけてしまえば、もう声掛けの心配はない。戻ってきた私達を見て、お母様は「あらあら」と苦笑いする。ナサニエルを膝に抱いたお母様は、揶揄うような口調で尋ねた。
「恋のお相手は見つかったかしら?」
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