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61.夜会の招待状がまた届きます
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アルムニア太公家は、当主である大叔父様、跡取りのオスカル様、次の嫡女であるリリアナと三世代揃った。未来は安泰だと、お祖父様が笑う。
新しく夜会を開くことになり、その準備に忙しいと愚痴を溢しながら、なぜか我が家にいる。皇帝陛下が忙しいのは分かるけど、ここにいる理由が分からなかった。リリアナが滞在しているから? それともエルに会いに来たのかしら。
「お父様、また抜け出してきましたのね」
呆れたと溜め息を吐くお母様の言葉に、なるほどと納得した。忙しすぎて、逃げてきたようで。お母様がそれに気付いたのは、玄関ホールの声だった。ベルトラン将軍は、よく響く声をしている。屋敷中に聞こえそうだった。
「皇帝陛下を迎えに参った」
「お待ちください」
家令のサロモンが受け答える間に、お祖父様はリリアナを抱っこした。頬擦りして「お髭が痛い」と抗議される。エルのベッドに近づき、リリアナと一緒に覗き込んだ。一石二鳥ですね。
皆がエルよりリリアナを優先するのは、当然だ。エルはまだ赤子で、順番を理解しないが……リリアナは敏感だった。自分が優先されることで、年長者の自覚が芽生えたらしい。最近では「エルも」と抱っこを促すことも増えた。
「陛下、お戻りください」
「わかっておる。もう少し遅れて来い」
戻る気はあるが、息抜きも大事なんだ。そう反論するお祖父様は、将軍に連れられて玄関へ向かった。リリアナと手を繋ぎ、見送りに立つ。エルはベッドでお留守番だ。というのも、ぐっすり眠っているから。
「仕事を終えたらまた来る」
「いつでもお待ちしています」
微笑んでそう返した。実はお祖母様から話を聞いている。末娘であるお母様が可愛くて大好きなお祖父様は、帝国に戻って来たことが嬉しくて仕方ないのだとか。
リリアナやエルにかこつけているが、お母様に会うのも楽しみらしい。お祖母様はそこで付け加えた。孫である私も、ですって。その話を聞いてから、お祖父様が来るたびに思い出してしまう。
「夜会の招待状はもう届いたか?」
「はい。もちろん参加しますわ」
「ふむ。前回と同じく、皇族席のカーテンは用意しておく」
エルも一緒に参加できるよう、授乳やオムツ替えが出来るカーテンの部屋を用意する。そう言い置いて、お祖父様は帰って行った。馬車ではなく、馬を引いてきた将軍の心境を思うと、なんとも気の毒になる。本当に忙しいのね。
「リリアナもドレスを用意しましょうね。何色が好きかしら」
「私、青か紫がいいわ」
青も紫も、銀髪に似合いそう。すでにドレスは持っていると胸を張る小さなレディに頷き、明日はドレスに宝石を合わせる約束をした。
一緒に選ぶのも楽しいわね。普段は衣装の担当をする侍女が選んでくれるみたいだけど、リリアナは小さな約束に目を輝かせた。
新しく夜会を開くことになり、その準備に忙しいと愚痴を溢しながら、なぜか我が家にいる。皇帝陛下が忙しいのは分かるけど、ここにいる理由が分からなかった。リリアナが滞在しているから? それともエルに会いに来たのかしら。
「お父様、また抜け出してきましたのね」
呆れたと溜め息を吐くお母様の言葉に、なるほどと納得した。忙しすぎて、逃げてきたようで。お母様がそれに気付いたのは、玄関ホールの声だった。ベルトラン将軍は、よく響く声をしている。屋敷中に聞こえそうだった。
「皇帝陛下を迎えに参った」
「お待ちください」
家令のサロモンが受け答える間に、お祖父様はリリアナを抱っこした。頬擦りして「お髭が痛い」と抗議される。エルのベッドに近づき、リリアナと一緒に覗き込んだ。一石二鳥ですね。
皆がエルよりリリアナを優先するのは、当然だ。エルはまだ赤子で、順番を理解しないが……リリアナは敏感だった。自分が優先されることで、年長者の自覚が芽生えたらしい。最近では「エルも」と抱っこを促すことも増えた。
「陛下、お戻りください」
「わかっておる。もう少し遅れて来い」
戻る気はあるが、息抜きも大事なんだ。そう反論するお祖父様は、将軍に連れられて玄関へ向かった。リリアナと手を繋ぎ、見送りに立つ。エルはベッドでお留守番だ。というのも、ぐっすり眠っているから。
「仕事を終えたらまた来る」
「いつでもお待ちしています」
微笑んでそう返した。実はお祖母様から話を聞いている。末娘であるお母様が可愛くて大好きなお祖父様は、帝国に戻って来たことが嬉しくて仕方ないのだとか。
リリアナやエルにかこつけているが、お母様に会うのも楽しみらしい。お祖母様はそこで付け加えた。孫である私も、ですって。その話を聞いてから、お祖父様が来るたびに思い出してしまう。
「夜会の招待状はもう届いたか?」
「はい。もちろん参加しますわ」
「ふむ。前回と同じく、皇族席のカーテンは用意しておく」
エルも一緒に参加できるよう、授乳やオムツ替えが出来るカーテンの部屋を用意する。そう言い置いて、お祖父様は帰って行った。馬車ではなく、馬を引いてきた将軍の心境を思うと、なんとも気の毒になる。本当に忙しいのね。
「リリアナもドレスを用意しましょうね。何色が好きかしら」
「私、青か紫がいいわ」
青も紫も、銀髪に似合いそう。すでにドレスは持っていると胸を張る小さなレディに頷き、明日はドレスに宝石を合わせる約束をした。
一緒に選ぶのも楽しいわね。普段は衣装の担当をする侍女が選んでくれるみたいだけど、リリアナは小さな約束に目を輝かせた。
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