【完結】古代竜の生贄姫 ~虐待から溺愛に逆転した世界で幸せを知りました~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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45.策略の匂いに古代竜は唸る

 思いついたのは二つだった。猟師はなぜ公爵家に通報しなかったか。不審者を追いかけたとしても、地元の猟師が撒かれるのも変よね。だって、猟師にとって庭も同然の通い慣れた林なのに。その二つを告げると、ギータ様は「惜しい」と笑った。まだあるの?

「通報しなかったのは証拠の品がなく、不審者を逃がしてしまったから……と考えることも出来る。だが、裏の林に詳しい猟師が、どうして埋めた場所を見つけられなかった?」

 指摘されて、なるほどと納得した。猟師は普段から裏の林に入れる人物で、屋敷という目印があるのだから場所を忘れるのはおかしいわ。戻ってきて、不審者がいた場所の周辺を掘ればいいんだもの。それに一度掘り起こされた場所は分かりやすいはず。

「付け加えるなら、噂の発生時期に作為を感じる」

「もっと早く噂にならなければおかしい、って意味ですよね」

「我が花嫁は賢いな」

 くしゃりと髪を乱して撫でるのが好きなギータ様に合わせ、自然と髪を流すことが増えた。ハーフアップ程度で、出来るだけきっちり結わない。撫でられるのが心地いいのもあるし、ギータ様が触れてくれる機会を楽しみにしてるのもあるわ。

 にぃ……子猫ペキが膝に上り、私の膝で伸びをした。何かに熱中していると、猫は邪魔するって聞いたけど。本当にそうね。抱っこしたいときは嫌がるくせに。ふふっと笑って、柔らかな毛を撫でた。

「毛皮が好きなのか?」

「え? そういうわけでは」

 口の中でぶつぶつと「毛を生やしたら、俺も撫でられる」と奇妙なことを言い出したので、ペキを椅子の上に下ろした。精一杯手を伸ばして、ギータ様の銀髪に触れる。優しく撫でたら、金の瞳が瞬いた。すごく綺麗な色の組み合わせだわ。

「ギータ陛下はこのままで。毛がぼさぼさのドラゴンって、変ですよ」

 想像した頭の中で、長毛猫のようなゴジラが浮かんだ。うん、そんなのカッコ悪いわ。私の想像した姿を読んだのか、身震いしたギータ様は「やめよう」と口にした。単純な疑問で、毛って生やせるんですね。一部の人に羨ましがられる能力かも。茶トラのペキは短毛種なので、絨毯に似た手触りだった。

「なんたら公爵の件は、神殿に調べさせよう」

 ナンタラって……ランヘルでも大差ないですから、ちゃんと覚えてください。たぶん馬鹿にしてるだけだと思うけど。

「魔女の噂は許せんな」

 セサル達も否定してくれるので、すぐ収めるのでは? そう尋ねたら、ギータ様は首を横に振って否定した。

「いや、故意に広めた噂だ。消えかけたらまた流すだろう。せっかく神に祀り上げられたのだ。神らしく否定してやろう」

 王家の崩壊待ちは、ギータ様の退屈の虫を起こしてしまったようですね。ランヘル公爵家の冥福を祈りましょう。

「お前もいい性格をしている。簡単に滅ぼすほど優しくないので、祈りはまだ早いぞ」

 大声をあげて笑うギータ様に驚いたのか、ペキが唸り声を上げてベッドの下に逃げ込む。こんな騒ぎの中、まだ眠ってるアデライダが凄いわ。
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