【完結】古代竜の生贄姫 ~虐待から溺愛に逆転した世界で幸せを知りました~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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46.神らしく振る舞う傲慢さ

 ギータ様が神殿の方々を呼びつけたのが5日前、私がセサル達から噂を聞いて一週間近くが経過していた。人間の調査は時間がかかる、むすっとした口調でぼやくギータ様に苦笑いする。

 日差しが入る窓辺の長椅子で、寝転がるギータ様に膝を貸すことも慣れてきた。

「お嬢様、神殿の方々が陛下にお目にかかりたいと」

「お? やっと来たか」

 優雅な所作で身を起こし、足が痺れた私を抱き上げる。いわゆるお姫様抱っこなのだけど、ぐらりと揺れたので慌てて首に手を回した。にやりと笑う口角を見て、わざと揺らしたのねと唇を尖らせた。

「ふむ、お前に惚れた男の前で、そのように唇を突き出すとは……食べられたいのか?」

 意地悪な言い方をされて、慌てて唇を隠した。そんな意味じゃないと知ってるくせに。侍女は首や耳を赤くしたものの、何もなかったように案内する。プロってすごいわ。主家の秘密は見なかったフリでやり過ごすのね。

「ギータ様、私、自分で歩きます」

「フランカは俺を甲斐性無しにしたいのか?」

 甲斐性って、抱っこしないと無くなるの? 多分違うと思うけど。意味を考えている間に、客間へ到着した。侍女がノックして到着を告げ、恭しくドアを開く。部屋の中では、神殿のお偉いさんが座っていた……なぜか、床へじかに。

 客間はソファがあるのに、足元のラグも避けて床に一列に並んで座っていた。これは知ってるわ、前世で「正座」と呼ばれた座り方ね。驚いた私同様、侍女も固まった。が何事もなかったように頭を下げて出ていく。やっぱり侍女のプロ根性は侮れないわね。

「お声がけをお許しください」

 全員が平伏する。その上で、一番豪華な服を着たおじさんが口を開いた。あの人、神官長だっけ? 神殿の偉い人だったと思うわ。

「構わん、話せ」

 ギータ様は長椅子に腰掛け、私を膝の上に横抱きにした。人前で恥ずかしいのと、この異様な雰囲気に呑まれて固まる。白い髪を撫でながら、ギータ様は報告結果を求めた。

「ランヘル公爵領における建物は、異形神を祀るものでした。我らギータ・リ・アシスが国教であるにも関わらず、国内に別の神を祀ることは反逆行為に等しく」

「反逆? 別に構わないが……ならばランヘル公爵領は、俺の庇護対象から外そう」

 別の神様を祀る地域なら、確かに守る必要はない。でもギータ様の口調は、別の意味を含んでいる気がして……もしかして!

 自分の庇護下じゃなくなった土地なら、ドラゴンが暴れても問題ない。なんて、物騒なこと考えていませんよね? 不安になって見上げると、くすくす笑うギータ様が「正解」と小声で伝えてきた。ああ、やっぱり。

「では……まだ信仰する民や神殿をお見捨てになると?」

「逆だ。本当に俺を信仰しているなら、違う神殿が目の前に立つことを信者達は許すのか?」

 うわっ、悪辣。思わず心の中で呟いた。だって、それは「俺のために新たな神殿を壊し、ランヘル公爵を貶めろ」と命じたのも同じ。神様らしく振る舞うって、こういう意味だったのね?
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