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本編
第160話 少し肌寒いお茶会
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お茶会――それは優雅に着飾ったご令嬢と、美しい庭や部屋の調度品や高級なお茶を楽しむ王侯貴族のイベントのはずだが。思っていたのと違う、そんな感想を抱いたのは侍女だけではなく、ベルンハルトも同じだった。
「こちらをどうぞ」
「色が綺麗、この青は本当にハーブですの?」
「ええ、レモンを入れるとピンク色になって」
「素敵ね」
アゼリアやカサンドラが振舞うのは、バタフライピーと呼ばれるマメ科の植物を使った青いお茶だ。ハーブティに分類され、見た目に合わせてミントやレモングラスも混ぜた薫り高い逸品だった。調合に苦労したカサンドラは、義娘になるヴィルヘルミーナの感嘆の声に微笑む。
カサンドラはお茶に合わせたのか、青紫のドレス姿でポットを置いた。侍女に任せず自ら注ぐことで、歓迎の意を強く示した形だ。この辺の事情は公爵家の娘であるヴィルヘルミーナも理解し、笑顔で礼を言った。王姉である彼女に認められるのは素直に嬉しい。
隣に腰掛けたベルンハルトは穏やかな笑みを浮かべるものの、女性達のやりとりにビクビクしていた。婚約者探しと付き合いでお茶会は何度も参加しているが、これほど恐ろしい場所と思ったことはない。腹の探り合いのような会話は、どこか寒い気がした。社交場が女性の戦場とはよく言ったものだ。
美しい婚約者は淡緑のドレスにオレンジ色のリボンをあしらったドレスだった。選んでプレゼントしたのはベルンハルトだ。オレンジが目立ちすぎないよう、山吹に近い黄色系にして薄く柔らかな生地にさせた。自らの衣装も合わせ、リボンと同じ生地のスカーフを胸に飾る。
「遅れてごめんなさいね」
黒髪の魔王と腕を組んで現れたアゼリアは、目が覚めるように鮮やかなピンクのドレスだった。赤い巻き毛と濃淡になるため違和感はないが、今まで避けてきた色だ。濃色のドレスを好む妹を知るベルンハルトが視線を向けると、蕩けるような笑みを浮かべるイヴリースがいた。
彼のプレゼントで間違いないだろう。番となる婚約者にプレゼントをするのは獣人や魔族にとって、至上の喜びだった。受け取って身に着けてくれたら、それだけで一日幸せな気分でいられる。気持ちはわかるが、よくアゼリアが素直に身に着けたものだと感心した。
「さすがは私の娘ね」
着こなしを褒める母に、ヴィルヘルミーナも同様の声を上げる。それぞれに互いの姿を褒めあうのは淑女のマナーらしい。驚くほど多彩な表現で互いを褒めあう彼女達は、婚約者や夫を同伴していた。
カサンドラがお茶を淹れて差し出したカップを、アゼリアが受け取った。まずイヴリースの前に置き、次に自分のカップを並べる。庭に作られたお茶会用のガゼボは広く、6人が揃っても問題なかった。
女性達は3人とも獣耳や尻尾があり、イヴリースも角や翼を隠さない。この空間で完全に人間の姿を保っているのはベルンハルトとアウグストのみ。別々に繁栄してきた種族だが、これからこのような光景も珍しくなくなるのだろう。
「義勇兵が戻るときに帰ってしまうのでしょう? 残念だわ」
アゼリアがヴィルヘルミーナに話を向ける。長い兎耳を揺らして首をかしげ、彼女は目を細めて笑った。
「あら、私……毎日でもお邪魔するつもりですわ」
少し離れた草原に設置された魔法陣を意味ありげに視線で示し、魔力を注いで活用すると言い放つ。思いがけない申し出に「それはいい」とベルンハルトは声を上げた。
「まあ、お兄様。来ていただくばかりでは愛想を尽かされますわよ」
妹の忠告に苦笑いし、1日おきに行き来する生活を約束した。
「こちらをどうぞ」
「色が綺麗、この青は本当にハーブですの?」
「ええ、レモンを入れるとピンク色になって」
「素敵ね」
アゼリアやカサンドラが振舞うのは、バタフライピーと呼ばれるマメ科の植物を使った青いお茶だ。ハーブティに分類され、見た目に合わせてミントやレモングラスも混ぜた薫り高い逸品だった。調合に苦労したカサンドラは、義娘になるヴィルヘルミーナの感嘆の声に微笑む。
カサンドラはお茶に合わせたのか、青紫のドレス姿でポットを置いた。侍女に任せず自ら注ぐことで、歓迎の意を強く示した形だ。この辺の事情は公爵家の娘であるヴィルヘルミーナも理解し、笑顔で礼を言った。王姉である彼女に認められるのは素直に嬉しい。
隣に腰掛けたベルンハルトは穏やかな笑みを浮かべるものの、女性達のやりとりにビクビクしていた。婚約者探しと付き合いでお茶会は何度も参加しているが、これほど恐ろしい場所と思ったことはない。腹の探り合いのような会話は、どこか寒い気がした。社交場が女性の戦場とはよく言ったものだ。
美しい婚約者は淡緑のドレスにオレンジ色のリボンをあしらったドレスだった。選んでプレゼントしたのはベルンハルトだ。オレンジが目立ちすぎないよう、山吹に近い黄色系にして薄く柔らかな生地にさせた。自らの衣装も合わせ、リボンと同じ生地のスカーフを胸に飾る。
「遅れてごめんなさいね」
黒髪の魔王と腕を組んで現れたアゼリアは、目が覚めるように鮮やかなピンクのドレスだった。赤い巻き毛と濃淡になるため違和感はないが、今まで避けてきた色だ。濃色のドレスを好む妹を知るベルンハルトが視線を向けると、蕩けるような笑みを浮かべるイヴリースがいた。
彼のプレゼントで間違いないだろう。番となる婚約者にプレゼントをするのは獣人や魔族にとって、至上の喜びだった。受け取って身に着けてくれたら、それだけで一日幸せな気分でいられる。気持ちはわかるが、よくアゼリアが素直に身に着けたものだと感心した。
「さすがは私の娘ね」
着こなしを褒める母に、ヴィルヘルミーナも同様の声を上げる。それぞれに互いの姿を褒めあうのは淑女のマナーらしい。驚くほど多彩な表現で互いを褒めあう彼女達は、婚約者や夫を同伴していた。
カサンドラがお茶を淹れて差し出したカップを、アゼリアが受け取った。まずイヴリースの前に置き、次に自分のカップを並べる。庭に作られたお茶会用のガゼボは広く、6人が揃っても問題なかった。
女性達は3人とも獣耳や尻尾があり、イヴリースも角や翼を隠さない。この空間で完全に人間の姿を保っているのはベルンハルトとアウグストのみ。別々に繁栄してきた種族だが、これからこのような光景も珍しくなくなるのだろう。
「義勇兵が戻るときに帰ってしまうのでしょう? 残念だわ」
アゼリアがヴィルヘルミーナに話を向ける。長い兎耳を揺らして首をかしげ、彼女は目を細めて笑った。
「あら、私……毎日でもお邪魔するつもりですわ」
少し離れた草原に設置された魔法陣を意味ありげに視線で示し、魔力を注いで活用すると言い放つ。思いがけない申し出に「それはいい」とベルンハルトは声を上げた。
「まあ、お兄様。来ていただくばかりでは愛想を尽かされますわよ」
妹の忠告に苦笑いし、1日おきに行き来する生活を約束した。
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