わたくしは何も存じません

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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本編

81.タイミングが悪かった、というやつだ

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 調査の結果が届いたのは夕食時だった。アウグストの後ろをとぼとぼ歩くカールとケヴィンが加わり、ガブリエルの祖父母を加えた九人での食卓だ。長いテーブルの向かいで、傷だらけの従兄二人にガブリエルは眉尻を下げた。

「叔父様、厳しくしないでってお願いしたのに」

「このくらいは普通だ。戦えない男を作ってどうする!」

 脳筋らしい返答だが、王妃教育も詰込み型の脳筋教育である。根性で乗り切れとばかり、大量に知識を詰める教育を受けたガブリエルは「そうね」と流された。助けの手が伸びたと喜んだカール達の顔が、絶望に染まる。ダメだ、明日は殺されるかもしれない。

「兄上、さきほど報告があった」

 コース料理と呼ぶほどではないが、前菜と主菜は別に運ばれる。席に着くと同時に、川魚を使った前菜とスープが並んだ。前菜はサラダを兼ねているため、たっぷりと新鮮な野菜が積まれている。豪快に野菜を平らげたアウグストは、副官ヴィリの尋問で得られた情報を口にした。

「侵入した連中だが、ウテシュ王国の双子王子らしい」

「ならば、カタリーナ王女殿下の婚約者候補か」

 エッカルトが頷きながら、川魚を口に入れる。しっかり火を通したのに柔らかな身は、香辛料とハーブが添えられていた。味の濃さは個々に調整できるようになっている。子供であるガブリエルやラファエルへの配慮だった。

 美味しく食べるガブリエルが手を止め、こてりと首を傾げる。

「あのお姫様の?」

「今日帰ったんだよね?」

 ゼークト王国から来た一行は、すでに帰路に就いた。カタリーナは騎士団により、馬車に押し込められての帰国の途中である。香辛料を避けてハーブだけの魚を口に入れるラファエルが口を挟んだ。

「そうだ。よく覚えているな」

 ヨーゼフが褒め、嬉しそうに姉弟は顔を綻ばせる。

「双子に関しては、ウテシュ王国へ引き取り連絡を出すとして……問題は警備体制だ」

 迷い込んだ高貴な方々は、きちんと引き取らせればいい。それまで生かしておけばいいだけの話で、特に問題はなかった。彼らが侵入した経路や方法を、じっくり聞き出したロイスナーの騎士は思わぬ穴に頭を抱えた。

「……ゼークト王国からの騎士団の続きだと思われたらしい」

 申し訳なさそうに説明が始まった。まずゼークト王国からカタリーナ王女回収に来た騎士団は、事前通告があった。そのため身元調査が不要で、ある程度簡単に入国できる。そもそもゼークト王国が友好国であり、国境に山脈が横たわっていた。そのため塀や砦がない。

 国境はあっさりと通過した。牛や羊も勝手に国境を行き来しているので、その点は緩い。入国したゼークト王国の騎士団は真っすぐに屋敷を目指した。屋敷の門で所属を証明する書類を出したため、彼らが通過する。すぐ後に旗のない一行が追い付いたことで、ゼークト王国の一団だと思い込んだ。

「それで通過させたようなんだ……まあ、旗を隠したウテシュ王国に問題があるから、賠償請求しておいてくれ」

 ヨーゼフはなるほどと頷く。今後は確認を徹底させるとして、故意に国旗を隠したのなら……ウテシュ王国に抗議が必要だった。他国の領地内では、国旗を提示することが義務なのだから。






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