【完結】破天荒な妖精姫は醜い夫を切望する

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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38.お父様との約束も守りました

 正式な呼び出しは、必ず名前を伴います。その響きが彼の下へ届いて、すぐに応じてくれました。マーリンは美しい男性の姿で現れるのですが、お兄様に見られたことがあり「夜這いを掛けた不埒な男」として成敗されかけたのですよ。もちろんマーリンが負ける筈はありませんけれど。

 光り輝く月光色の髪を持ち、私と同じ虹色の瞳のお方です。私の髪色がもう少し銀色寄りならば、兄妹のように見えたでしょうか。顔立ちは雰囲気が全く違います。私は儚い印章を与えると言われますが、彼はどこまでも華やかでした。

「マーリン様、お願いがあるの」

『事情はあらかた察しておる。無事でよかった。そなたは何を願う? 罪人の断罪か』

「二度と私に求婚できないよう、お願いして欲しいのです。私が出向けばいいのですが、あの方々はなぜか興奮して話を聞かず、好き勝手な主張をなさるので。人妻となった今、あのような危険な殿方と同席は出来ませんの」

『……淑女の鑑のような口ぶりだが、私とそなたの認識に大きな差異があるようだ。それはともかく、人知れず処理してやろう』

「ありがとうございます。助かりますわ」

 妖精王マーリン様は私を抱き締めて消えました。本当にお優しい方で、昼間は現れることが出来ないのに起きた事件などは把握しておられる。不思議ですが、妖精達が伝えてくれているのでしょう。

 お父様との約束も守りました。ちゃんとお申し付けの通り、妖精王様にお願いしましたもの。ところで、妖精王様はどこまでを範囲と考えたのかしら。罪人の断罪と仰ったので、実行した犯人と命じた隣国の公爵令息までですね。

 あふっと欠伸をひとつ。昼間あんなに早く眠ったのに、夜はちゃんと眠くなりますのね。疲れているのかも。私の肌が荒れたら皆様が「あんな夫を選ぶからだ」と口出ししそうなので、お肌のために寝ましょう。自分に言い訳しながらベッドに入り、ふと気になって隣室へ続く扉を見つめました。

 鍵が掛かっていなければ、一緒に眠っていただけないかしら。帰り際のお父様へご挨拶しましたが、二人で仲良く話していて妬けました。きっと手紙の返事を書く間に仲良くなったんですわ。ならば私は夫婦として仲良くなる方法を実行しなくては!

 ベッドから降り、足音を忍ばせて扉に近づきます。そっと開いたら、私の上に人影が……え?

「ヴィー、何をしてる?」

「アレクシス様のベッドに潜り込もうとしておりました」

 隠す必要もないので正直に申し上げました。先日同じベッドで眠ったので、拒絶される理由はないはずです。ドキドキしながら待つ私の髪に大きな手が置かれ、滑って頬を撫でてくれました。嬉しくて擦り寄ると、アレクシス様は苦笑いして自ら部屋に誘います。

「仕方ない。おいで」

「はい!」

 夜中とは思えぬ声で返事をしてしまい、二人で顔を見合わせて「しぃ」と仕草を合わせました。アレクシス様のベッドに入り、腕枕で横になります。距離が近くて嬉しい。ぎゅっとしがみ付くと、優しく抱き寄せられました。

「もう大丈夫だ、俺がいる。心配せず眠れ」

 ……もしかして、私が怖くて眠れないと思われたのでしょうか。都合がいいので、そのままにします。頷いて目を閉じた私は、アレクシス様の温もりと匂いに包まれて眠りにつきました。
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