38 / 113
38.お父様との約束も守りました
正式な呼び出しは、必ず名前を伴います。その響きが彼の下へ届いて、すぐに応じてくれました。マーリンは美しい男性の姿で現れるのですが、お兄様に見られたことがあり「夜這いを掛けた不埒な男」として成敗されかけたのですよ。もちろんマーリンが負ける筈はありませんけれど。
光り輝く月光色の髪を持ち、私と同じ虹色の瞳のお方です。私の髪色がもう少し銀色寄りならば、兄妹のように見えたでしょうか。顔立ちは雰囲気が全く違います。私は儚い印章を与えると言われますが、彼はどこまでも華やかでした。
「マーリン様、お願いがあるの」
『事情はあらかた察しておる。無事でよかった。そなたは何を願う? 罪人の断罪か』
「二度と私に求婚できないよう、お願いして欲しいのです。私が出向けばいいのですが、あの方々はなぜか興奮して話を聞かず、好き勝手な主張をなさるので。人妻となった今、あのような危険な殿方と同席は出来ませんの」
『……淑女の鑑のような口ぶりだが、私とそなたの認識に大きな差異があるようだ。それはともかく、人知れず処理してやろう』
「ありがとうございます。助かりますわ」
妖精王マーリン様は私を抱き締めて消えました。本当にお優しい方で、昼間は現れることが出来ないのに起きた事件などは把握しておられる。不思議ですが、妖精達が伝えてくれているのでしょう。
お父様との約束も守りました。ちゃんとお申し付けの通り、妖精王様にお願いしましたもの。ところで、妖精王様はどこまでを範囲と考えたのかしら。罪人の断罪と仰ったので、実行した犯人と命じた隣国の公爵令息までですね。
あふっと欠伸をひとつ。昼間あんなに早く眠ったのに、夜はちゃんと眠くなりますのね。疲れているのかも。私の肌が荒れたら皆様が「あんな夫を選ぶからだ」と口出ししそうなので、お肌のために寝ましょう。自分に言い訳しながらベッドに入り、ふと気になって隣室へ続く扉を見つめました。
鍵が掛かっていなければ、一緒に眠っていただけないかしら。帰り際のお父様へご挨拶しましたが、二人で仲良く話していて妬けました。きっと手紙の返事を書く間に仲良くなったんですわ。ならば私は夫婦として仲良くなる方法を実行しなくては!
ベッドから降り、足音を忍ばせて扉に近づきます。そっと開いたら、私の上に人影が……え?
「ヴィー、何をしてる?」
「アレクシス様のベッドに潜り込もうとしておりました」
隠す必要もないので正直に申し上げました。先日同じベッドで眠ったので、拒絶される理由はないはずです。ドキドキしながら待つ私の髪に大きな手が置かれ、滑って頬を撫でてくれました。嬉しくて擦り寄ると、アレクシス様は苦笑いして自ら部屋に誘います。
「仕方ない。おいで」
「はい!」
夜中とは思えぬ声で返事をしてしまい、二人で顔を見合わせて「しぃ」と仕草を合わせました。アレクシス様のベッドに入り、腕枕で横になります。距離が近くて嬉しい。ぎゅっとしがみ付くと、優しく抱き寄せられました。
「もう大丈夫だ、俺がいる。心配せず眠れ」
……もしかして、私が怖くて眠れないと思われたのでしょうか。都合がいいので、そのままにします。頷いて目を閉じた私は、アレクシス様の温もりと匂いに包まれて眠りにつきました。
光り輝く月光色の髪を持ち、私と同じ虹色の瞳のお方です。私の髪色がもう少し銀色寄りならば、兄妹のように見えたでしょうか。顔立ちは雰囲気が全く違います。私は儚い印章を与えると言われますが、彼はどこまでも華やかでした。
「マーリン様、お願いがあるの」
『事情はあらかた察しておる。無事でよかった。そなたは何を願う? 罪人の断罪か』
「二度と私に求婚できないよう、お願いして欲しいのです。私が出向けばいいのですが、あの方々はなぜか興奮して話を聞かず、好き勝手な主張をなさるので。人妻となった今、あのような危険な殿方と同席は出来ませんの」
『……淑女の鑑のような口ぶりだが、私とそなたの認識に大きな差異があるようだ。それはともかく、人知れず処理してやろう』
「ありがとうございます。助かりますわ」
妖精王マーリン様は私を抱き締めて消えました。本当にお優しい方で、昼間は現れることが出来ないのに起きた事件などは把握しておられる。不思議ですが、妖精達が伝えてくれているのでしょう。
お父様との約束も守りました。ちゃんとお申し付けの通り、妖精王様にお願いしましたもの。ところで、妖精王様はどこまでを範囲と考えたのかしら。罪人の断罪と仰ったので、実行した犯人と命じた隣国の公爵令息までですね。
あふっと欠伸をひとつ。昼間あんなに早く眠ったのに、夜はちゃんと眠くなりますのね。疲れているのかも。私の肌が荒れたら皆様が「あんな夫を選ぶからだ」と口出ししそうなので、お肌のために寝ましょう。自分に言い訳しながらベッドに入り、ふと気になって隣室へ続く扉を見つめました。
鍵が掛かっていなければ、一緒に眠っていただけないかしら。帰り際のお父様へご挨拶しましたが、二人で仲良く話していて妬けました。きっと手紙の返事を書く間に仲良くなったんですわ。ならば私は夫婦として仲良くなる方法を実行しなくては!
ベッドから降り、足音を忍ばせて扉に近づきます。そっと開いたら、私の上に人影が……え?
「ヴィー、何をしてる?」
「アレクシス様のベッドに潜り込もうとしておりました」
隠す必要もないので正直に申し上げました。先日同じベッドで眠ったので、拒絶される理由はないはずです。ドキドキしながら待つ私の髪に大きな手が置かれ、滑って頬を撫でてくれました。嬉しくて擦り寄ると、アレクシス様は苦笑いして自ら部屋に誘います。
「仕方ない。おいで」
「はい!」
夜中とは思えぬ声で返事をしてしまい、二人で顔を見合わせて「しぃ」と仕草を合わせました。アレクシス様のベッドに入り、腕枕で横になります。距離が近くて嬉しい。ぎゅっとしがみ付くと、優しく抱き寄せられました。
「もう大丈夫だ、俺がいる。心配せず眠れ」
……もしかして、私が怖くて眠れないと思われたのでしょうか。都合がいいので、そのままにします。頷いて目を閉じた私は、アレクシス様の温もりと匂いに包まれて眠りにつきました。
あなたにおすすめの小説
異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない
木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。
生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。
ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。
その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする
葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。
そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった!
ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――?
意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。
その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。
婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。
孤独な結婚生活を送る中。
ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。
始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。
他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。
そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。
だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。
それから一年ほどたった冬の夜。
カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。
そこには彼の想いが書かれてあった。
月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。
カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。
※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。
※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。
稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆