47 / 113
47.侵入経路特定の手柄が行ったり来たり
私達に用意されたのは夫婦で滞在できる続き部屋の客間です。当然、夜は一緒に眠りました。屋敷からレースの寝着を届けてもらいましたもの。届けに来た侍女のエレンは気が利くので、化粧品や翌日のドレス一式も運んでくれました。今日はアレクシス様色のシルバーグレーのAラインにします。
アレクシス様の胸元には、同じ絹を使ったハンカチを畳んで差し込みました。夫婦で同じ絹を身に着けるのは、一心同体を吹聴する行為ですもの。絶対に忘れてはいけません。夫婦仲を疑われれば、外部から邪魔が入ります。
着替えの間は隣室へ移動していた私は、髪を結う間にペンを手に取りました。妖精王様の集めた情報をひとまとめにして、アレクシス様に提示します。朝食は国王ご夫妻にお呼ばれしていますので、先にお渡ししますね。文字で書き連ねた内容をじっくり読んで、額を押さえたアレクシス様が呻きました。
「これはまた、頭の痛い」
結果を申し上げれば、レードルンド辺境伯家の領地が侵入経路ではありませんでした。砦はきっちり守られていましたし、見回りの兵が賄賂を受け取った形跡もありません。隣国と接しているのはほぼ辺境伯家の領地ですが、僅かに隣領地も接していました。地図で見ても首を傾げるくらい僅かです。
「ここは川です。そのため監視兵が足りないのではないかと」
妖精王様が指摘されました。国境といえど、辺境伯家の隣にある小さな子爵家は戦う力を持ちません。領地も小さく、かろうじて三角の領地の先が隣国に接しているだけでした。監視らしい監視は行っていないでしょう。川下に当たるアクセーン王国から侵入した事例は、過去に報告がありませんでした。
平民同士の交流はあれど、国としては国境が接している認識がほとんどない場所です。それも川と河原が繋がっているだけの接点……普通は気にしないでしょう。今回も妖精達の報告がなければ、誰も信じないほど目立たない場所でした。
「よく見つけたな」
「以前から目を付けていたようですね。戦を仕掛けるならば、ここから攻め上がるつもりだったと思います。妖精達によれば、何度もアクセーン王国の制服の兵士を見かけたそうです」
アクセーン王国の王太子殿下は、私を誘拐しようと計画したことがあります。妖精王様に邪魔され、崖を崩して道を塞がれたので未遂で終わりました。その後もこそこそと計画を練っていたのでしょうか。崖のある街道を通らないルートを見つけていました。
「これは国王陛下にご相談の案件だな」
「はい、お任せします」
驚いた顔をしたアレクシス様は、叱りつけるように眉を寄せて声を低くしました。何か怒らせてしまったのでしょうか。
「これは妖精王様の情報だ」
「はい」
「つまり、ヴィーの手柄なのだぞ? なぜ俺に任せる!」
「情報は私経由ですが、何もしていないからですわ。集めたのは妖精王様、それを元に戦略を練って戦うのはアレクシス様でしょう。私は中継しただけで手柄はございません」
むっとした顔でさらに言い募ろうとしたアレクシス様ですが、朝食のお呼び出しが入りました。王宮の侍女に笑顔で「今参ります」と答え、アレクシス様へ手を差し伸べます。腕を組んで並んで歩く間も、アレクシス様のご機嫌は直りませんでした。
殿方って難しいですわ。別に手柄を譲る気はございませんし、適材適所ですのに。こういう高潔なところ、国王陛下にアピールしたら良いかも知れませんね。
アレクシス様の胸元には、同じ絹を使ったハンカチを畳んで差し込みました。夫婦で同じ絹を身に着けるのは、一心同体を吹聴する行為ですもの。絶対に忘れてはいけません。夫婦仲を疑われれば、外部から邪魔が入ります。
着替えの間は隣室へ移動していた私は、髪を結う間にペンを手に取りました。妖精王様の集めた情報をひとまとめにして、アレクシス様に提示します。朝食は国王ご夫妻にお呼ばれしていますので、先にお渡ししますね。文字で書き連ねた内容をじっくり読んで、額を押さえたアレクシス様が呻きました。
「これはまた、頭の痛い」
結果を申し上げれば、レードルンド辺境伯家の領地が侵入経路ではありませんでした。砦はきっちり守られていましたし、見回りの兵が賄賂を受け取った形跡もありません。隣国と接しているのはほぼ辺境伯家の領地ですが、僅かに隣領地も接していました。地図で見ても首を傾げるくらい僅かです。
「ここは川です。そのため監視兵が足りないのではないかと」
妖精王様が指摘されました。国境といえど、辺境伯家の隣にある小さな子爵家は戦う力を持ちません。領地も小さく、かろうじて三角の領地の先が隣国に接しているだけでした。監視らしい監視は行っていないでしょう。川下に当たるアクセーン王国から侵入した事例は、過去に報告がありませんでした。
平民同士の交流はあれど、国としては国境が接している認識がほとんどない場所です。それも川と河原が繋がっているだけの接点……普通は気にしないでしょう。今回も妖精達の報告がなければ、誰も信じないほど目立たない場所でした。
「よく見つけたな」
「以前から目を付けていたようですね。戦を仕掛けるならば、ここから攻め上がるつもりだったと思います。妖精達によれば、何度もアクセーン王国の制服の兵士を見かけたそうです」
アクセーン王国の王太子殿下は、私を誘拐しようと計画したことがあります。妖精王様に邪魔され、崖を崩して道を塞がれたので未遂で終わりました。その後もこそこそと計画を練っていたのでしょうか。崖のある街道を通らないルートを見つけていました。
「これは国王陛下にご相談の案件だな」
「はい、お任せします」
驚いた顔をしたアレクシス様は、叱りつけるように眉を寄せて声を低くしました。何か怒らせてしまったのでしょうか。
「これは妖精王様の情報だ」
「はい」
「つまり、ヴィーの手柄なのだぞ? なぜ俺に任せる!」
「情報は私経由ですが、何もしていないからですわ。集めたのは妖精王様、それを元に戦略を練って戦うのはアレクシス様でしょう。私は中継しただけで手柄はございません」
むっとした顔でさらに言い募ろうとしたアレクシス様ですが、朝食のお呼び出しが入りました。王宮の侍女に笑顔で「今参ります」と答え、アレクシス様へ手を差し伸べます。腕を組んで並んで歩く間も、アレクシス様のご機嫌は直りませんでした。
殿方って難しいですわ。別に手柄を譲る気はございませんし、適材適所ですのに。こういう高潔なところ、国王陛下にアピールしたら良いかも知れませんね。
あなたにおすすめの小説
異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない
木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。
生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。
ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。
その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする
葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。
そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった!
ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――?
意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました
恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」
交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。
でも、彼は悲しむどころか、見たこともない
暗い瞳で私を追い詰めた。
「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」
私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、
隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。