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外伝
外伝2–8.前世と同じ隣国の襲撃
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涼しい廊下を通って、温室を発見した。ここはお茶会をするのに向いているわね。綺麗に整えられた庭を眺めて、侍女オススメの夕日スポットも堪能した。夕食が近づいて、慌てて着替えに戻る。
用意されたドレスは、金糸と銀糸が黒絹を彩る豪華なものだった。お飾りも大粒の琥珀があしらわれている。
子ども達の着替えは侍女に任せ、大人しく袖を通した。いつもなら食事の時はもっと気軽な恰好なのだけれど、この屋敷に相応しい装いが必要な気がしたの。エレンやフィーネと手を繋いで、食堂へ案内される。開いた扉の向こうに、長いテーブルが2本。奥が霞むんじゃないかと冗談を言いたくなるくらい、食堂が広い。
一番奥まで歩く私を、両側のテーブルについた貴族が笑顔で迎えた。見覚えのある方もいるので、大公家の臣下や縁戚だと分かる。たどり着いた椅子に座り、ほっと息を吐いた。
「だから本邸は嫌なんだ」
子どもみたいな我が侭を口にするヴィル。面倒なのね、わかるわ。でも皆、悪意があるわけじゃないもの。たまにならいいと思う。毎日は疲れるけど。
左右にロッテ様達王族と、アンネ達が並ぶ。地位を考えたらあり得ない配置だけど、ロッテ様の提案らしい。親しい者同士で食べたいと。圧倒されるこの屋敷では、反論のしようがないわ。
料理は申し分なく美味しく、子ども達も喜んでいた。食後のデザートが運ばれる中、突然伝令が入る。不作法を詫びた使者は、私が忘れていた事件を口にした。
「隣国が、旧アウエンミュラー領の鉱山に攻め込みました」
「……っ! ヴィル」
「わかってる、心配しないで。ローザの帰る土地を奪われたりしない」
前世でも同じ事件が起きた。今回も時期は似ているし、ある程度領地の鉱山に手入れをしたところで襲われたのも一致している。隣国は周辺や鉱山の内部を整える手間を省き、採掘間近になった土地を襲った。
重なる記憶に血の気が引いた。あの時は、領民に犠牲者が多く出たの。同じ思いはもう嫌よ。
「大公閣下、我が一族に先鋒を!」
「抜け駆けする気か。貴様のところは以前に先鋒を賜った。今回は我らの番だ」
「なにを?! 俺の本気を見せつけてくれるわ!」
報告を聞き終えた食堂は、蜂の巣を突いたような騒ぎになった。誰かに行ってくれではなく、自分が行くと皆が立候補している。前世とは逆の光景に、私は頬が緩んだ。なぜかしら、何も始まっていないし終わっていないのに……勝利が見えるわ。
「俺が出向くまでもないか」
大公としての一人称で呟いたヴィルの声は、深刻さの欠片もない。途端にしんと静まり返った食堂に、ヴィルの指示が飛んだ。先鋒を賜ったと拳を突き上げた伯爵が、一礼して意気揚々と出ていく。戦の準備を整えるため、他の貴族達も慌てて後を追った。
「ローザ、あなたが心配するのは奪われる事じゃないわ。相手が殲滅されて賠償金が取れなくなることよ」
笑いながらロッテ様はそう言い放ち、家令のディーターが同意の頷きを。それから空になったロッテ様のグラスにワインを注いだ。血のように赤い見事なワインは、ほんのり甘い香りがする。同じワインを注いだグラスが並べられた。
「当地の名産ワインにございます。ご賞味ください」
私達は縁起を担いで、ワインで乾杯した。これが勝利の幕開けになると信じて。
用意されたドレスは、金糸と銀糸が黒絹を彩る豪華なものだった。お飾りも大粒の琥珀があしらわれている。
子ども達の着替えは侍女に任せ、大人しく袖を通した。いつもなら食事の時はもっと気軽な恰好なのだけれど、この屋敷に相応しい装いが必要な気がしたの。エレンやフィーネと手を繋いで、食堂へ案内される。開いた扉の向こうに、長いテーブルが2本。奥が霞むんじゃないかと冗談を言いたくなるくらい、食堂が広い。
一番奥まで歩く私を、両側のテーブルについた貴族が笑顔で迎えた。見覚えのある方もいるので、大公家の臣下や縁戚だと分かる。たどり着いた椅子に座り、ほっと息を吐いた。
「だから本邸は嫌なんだ」
子どもみたいな我が侭を口にするヴィル。面倒なのね、わかるわ。でも皆、悪意があるわけじゃないもの。たまにならいいと思う。毎日は疲れるけど。
左右にロッテ様達王族と、アンネ達が並ぶ。地位を考えたらあり得ない配置だけど、ロッテ様の提案らしい。親しい者同士で食べたいと。圧倒されるこの屋敷では、反論のしようがないわ。
料理は申し分なく美味しく、子ども達も喜んでいた。食後のデザートが運ばれる中、突然伝令が入る。不作法を詫びた使者は、私が忘れていた事件を口にした。
「隣国が、旧アウエンミュラー領の鉱山に攻め込みました」
「……っ! ヴィル」
「わかってる、心配しないで。ローザの帰る土地を奪われたりしない」
前世でも同じ事件が起きた。今回も時期は似ているし、ある程度領地の鉱山に手入れをしたところで襲われたのも一致している。隣国は周辺や鉱山の内部を整える手間を省き、採掘間近になった土地を襲った。
重なる記憶に血の気が引いた。あの時は、領民に犠牲者が多く出たの。同じ思いはもう嫌よ。
「大公閣下、我が一族に先鋒を!」
「抜け駆けする気か。貴様のところは以前に先鋒を賜った。今回は我らの番だ」
「なにを?! 俺の本気を見せつけてくれるわ!」
報告を聞き終えた食堂は、蜂の巣を突いたような騒ぎになった。誰かに行ってくれではなく、自分が行くと皆が立候補している。前世とは逆の光景に、私は頬が緩んだ。なぜかしら、何も始まっていないし終わっていないのに……勝利が見えるわ。
「俺が出向くまでもないか」
大公としての一人称で呟いたヴィルの声は、深刻さの欠片もない。途端にしんと静まり返った食堂に、ヴィルの指示が飛んだ。先鋒を賜ったと拳を突き上げた伯爵が、一礼して意気揚々と出ていく。戦の準備を整えるため、他の貴族達も慌てて後を追った。
「ローザ、あなたが心配するのは奪われる事じゃないわ。相手が殲滅されて賠償金が取れなくなることよ」
笑いながらロッテ様はそう言い放ち、家令のディーターが同意の頷きを。それから空になったロッテ様のグラスにワインを注いだ。血のように赤い見事なワインは、ほんのり甘い香りがする。同じワインを注いだグラスが並べられた。
「当地の名産ワインにございます。ご賞味ください」
私達は縁起を担いで、ワインで乾杯した。これが勝利の幕開けになると信じて。
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