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第二章
63.次の獲物はドーレクにしよう
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持ち帰った魚は喜ばれ、特に一部の獣人やエルフに評判が良かった。捕獲に苦労しなかった分、帰ってきてからの生簀掘りが疲れた。エイシェットのブレスをぶち込んだあと、魔法で大地にお願いして穴を広げてもらったのだ。二度とやりたくない。
海水の中で泳ぐ魚は、捕まえた時の半分以下に減った。生簀の縁に腰掛けたオレの隣で、エイシェットは跳ねた魚をつまみ食いしている。可愛い少女姿のまま、彼女の胴体と同じ太さの魚を頭から齧るのは、怖いのでよそでやって欲しい。
「また、行く?」
地震でヴァンク国を滅ぼしたのは、もう10日以上前だった。慌てふためく各国の報告を聞いて乾杯したのは3日ほど前、その後はぼんやりと魔力の回復を図りながら時間を潰していた。
そろそろか。
「そうだな、次はドーレク国を潰そう」
「……海、行かない?」
あ、そっちか。行きたいのは戦場じゃなく、デートの海。エイシェットはお年頃の少女なので、ある意味健全な思考だ。気づかなかったオレが悪い。婚約者の肩書があるうちは、エイシェットとの時間も大切にしなきゃな。
「海はドーレクを滅ぼしてからのご褒美デートだろ」
「うん!」
嬉しそうに頷いた彼女は、手元の魚を一気に食べた。真っ赤な血で汚れた手足を拭いてやり、洗濯済みのワンピースを用意してやる。普段から鱗に覆われる彼女に羞恥心はなく、平然と汚れたワンピースを脱いだ。慌てて目を逸らす。着替え終えたエイシェットは、くるりと回った。
「可愛い」
疑問系ではなく確定だった。だから否定せずに肯定する。確かに可愛い。
「似合ってるよ」
再び隣に腰掛けて寄りかかる彼女の銀髪を撫でながら、この先の展開を考える。バルト国は一番最後と決めた。周囲の国々の末路を見ながら、震えて己の順番を待つがいい。容赦なく滅ぼしてやろう。
新しい勇者の召喚が出来ないなら、バルト国の反撃方法は限られる。もっとも……魔王イヴリース曰く、オレより魔力量の多い勇者はいない、と。その理由は濁して教えなかったが、異世界から召喚された際の何かが、魔力量に反映されるらしい。
「ドーレクに仕掛けるなら、奴隷の解放をお願いね」
書物を抱えたリリィが、隣に腰を下ろした。エイシェットの反対側だ。書物だと思ったのは、綴じた紙の束だった。
「これ、捕らえられて使役されるエルフのリストよ」
どこで入手したのか、聞く必要はない。それがここにある事実こそが重要だった。指の第一関節ほどもある厚さの紙束は、傷つけられた人の数なのだ。そしてリリィは「使役される」と表現した。寿命の長いエルフ達はまだ使役され続けているらしい。
「貸してくれるか? 読んでおく」
「そのつもりで持ってきたの。エイシェット、安心して。サクヤを誘惑する気は私になくてよ」
くすくす笑って、頬を膨らませたエイシェットへのフォローを忘れない。立ち上がりながら、リリィはオレに紙束を渡した。ずっしりとした紙の重さに、覚悟が決まる。エルフを救ってドーレク国を地獄に変えてやる。
使役して楽をしてきたなら、そうだな。奴らを使役される側にするのも有りか。人間は脆いから壊さないように使わないと……とすれば、吸血種に協力要請するのが理想だな。
「エイシェット、デート前の課題をこなす準備だ。ちょっと手伝ってくれ」
嬉しそうに笑うエイシェットを連れ、オレは足早に城の地下へ向かった。
海水の中で泳ぐ魚は、捕まえた時の半分以下に減った。生簀の縁に腰掛けたオレの隣で、エイシェットは跳ねた魚をつまみ食いしている。可愛い少女姿のまま、彼女の胴体と同じ太さの魚を頭から齧るのは、怖いのでよそでやって欲しい。
「また、行く?」
地震でヴァンク国を滅ぼしたのは、もう10日以上前だった。慌てふためく各国の報告を聞いて乾杯したのは3日ほど前、その後はぼんやりと魔力の回復を図りながら時間を潰していた。
そろそろか。
「そうだな、次はドーレク国を潰そう」
「……海、行かない?」
あ、そっちか。行きたいのは戦場じゃなく、デートの海。エイシェットはお年頃の少女なので、ある意味健全な思考だ。気づかなかったオレが悪い。婚約者の肩書があるうちは、エイシェットとの時間も大切にしなきゃな。
「海はドーレクを滅ぼしてからのご褒美デートだろ」
「うん!」
嬉しそうに頷いた彼女は、手元の魚を一気に食べた。真っ赤な血で汚れた手足を拭いてやり、洗濯済みのワンピースを用意してやる。普段から鱗に覆われる彼女に羞恥心はなく、平然と汚れたワンピースを脱いだ。慌てて目を逸らす。着替え終えたエイシェットは、くるりと回った。
「可愛い」
疑問系ではなく確定だった。だから否定せずに肯定する。確かに可愛い。
「似合ってるよ」
再び隣に腰掛けて寄りかかる彼女の銀髪を撫でながら、この先の展開を考える。バルト国は一番最後と決めた。周囲の国々の末路を見ながら、震えて己の順番を待つがいい。容赦なく滅ぼしてやろう。
新しい勇者の召喚が出来ないなら、バルト国の反撃方法は限られる。もっとも……魔王イヴリース曰く、オレより魔力量の多い勇者はいない、と。その理由は濁して教えなかったが、異世界から召喚された際の何かが、魔力量に反映されるらしい。
「ドーレクに仕掛けるなら、奴隷の解放をお願いね」
書物を抱えたリリィが、隣に腰を下ろした。エイシェットの反対側だ。書物だと思ったのは、綴じた紙の束だった。
「これ、捕らえられて使役されるエルフのリストよ」
どこで入手したのか、聞く必要はない。それがここにある事実こそが重要だった。指の第一関節ほどもある厚さの紙束は、傷つけられた人の数なのだ。そしてリリィは「使役される」と表現した。寿命の長いエルフ達はまだ使役され続けているらしい。
「貸してくれるか? 読んでおく」
「そのつもりで持ってきたの。エイシェット、安心して。サクヤを誘惑する気は私になくてよ」
くすくす笑って、頬を膨らませたエイシェットへのフォローを忘れない。立ち上がりながら、リリィはオレに紙束を渡した。ずっしりとした紙の重さに、覚悟が決まる。エルフを救ってドーレク国を地獄に変えてやる。
使役して楽をしてきたなら、そうだな。奴らを使役される側にするのも有りか。人間は脆いから壊さないように使わないと……とすれば、吸血種に協力要請するのが理想だな。
「エイシェット、デート前の課題をこなす準備だ。ちょっと手伝ってくれ」
嬉しそうに笑うエイシェットを連れ、オレは足早に城の地下へ向かった。
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