【完結】虚

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第二章

68.おっさんに礼を言われるなんてな

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 ドーレク国、麗しき青の都と謳われた美しい観光地だった。白い壁と青い屋根に統一された都は、赤い血に塗れている。

「手抜きしないで掘り起こせ。そうそう、丁寧にな」

 吸血種に血を吸われた人間全てが、アンデッドになるわけではない。ここには理由と法則があった。牙により血を吸われること、死体へ魔力による刻印がなされること。二つの条件が揃った時、初めて人間はアンデッドになる。

 魔族に近い長い寿命を得るが、脆く壊れやすい。壊れても死ねるわけではなく、主君が命じるまで解放されることはなかった。ヴラゴのおっさん曰く、一種の呪いなのだとか。斬られても手足を無理やりくっつけて動き回るアンデッドは、人間の枠から弾き出された存在だった。だが魔族としても認定されない。魔物さえ顔を顰めるはみ出し者なのだ。

 歩き回る彼らは命令一つで何でもこなす。文字通り、何でもだ。同族であった人間を殺し、仲間を増やし、平伏してオレ達の命令に忠実に従う。便利な使い捨ての駒だった。

「無事か?」

 地下に閉じ込められた奴隷のエルフ救出に向かったところ、入り口が崩れた壁で覆われていた。慌てたオレはヴラゴにアンデッド召集を頼んだのだ。換気口があるから窒息しないまでも、やはり生き埋めの恐怖心は抑えられないだろう。それに早く出して自由に過ごさせてやりたかった。

 物語のエルフと違い、美形ばかりの種族ではない。良くも悪くも見下されていたため、性的な被害はほぼゼロだと聞いた。換気口から声をかけるオレの横で、アンデッドが青黒く変色した手で瓦礫を除去する。

「遅いぞ、もっと必死でやれよ。手足の一本や二本折れてもいいからさ」

 お前らが奴隷に対して行った非道をそっくり返してやる。アンデッドの特徴として、生前の能力を超える能力は身に付かない。痛みや空腹も残るし睡眠もとると学んだ。まあ限界を超えて働かせても壊れるだけで、死ねないのがアンデッドだ。

 命令に従い、手足を犠牲にして動く人間から悲鳴が上がる。エルフを閉じ込めた地下室への通路が、徐々に広くなった。人が通れる程度で妥協しろって? 冗談だろ。全部綺麗に掃除させるぞ。

 小さな石まですべて除去させた。エルフ達は靴も与えられなかったんだから。万が一でも傷つけるような小石が残ってたら、お前らの手足を切り落とすと脅したら、それはもう丁寧に石拾いを始めた。

「出来るんなら最初からやれよ」

 言われる前に動くのが奴隷だろ。そう言ってエルフに無理を強いたんだから。

 階下の鉄格子の扉を開ける。錠を壊し、エルフを繋ぐ鎖をすべて断ち切った。傷付いたエルフには治癒を施し、魔力を封じる枷を外していく。日が昇った時間だというのに、ヴラゴ達も協力してくれた。眠いので目元を擦っているのは仕方ない。

「おっさん、鎖だけ外したら休んでてくれ。昨日の木陰でカインとアベルが待ってるぜ」

 守り手も準備しておいた。そう告げると吸血鬼の長は苦笑いし、オレの黒髪を乱暴にかき回す。ぐしゃぐしゃになって前が見えなくなったところで、ぼそっと声が振ってきた。

「ありがとよ」

「早く行けっての」

 憎まれ口を叩いてしまい、後ろから蝙蝠に蹴飛ばされる。そのまま飛んでいくおっさんを見送り、列を成したエルフの治癒に専念した。
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