【完結】虚

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第三章

102.信じられる者は誰だ?

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 転がっていく。用意したダイスは数千回目にして、ようやく望んだ目を出した。闇の中で微笑み手を伸ばす。あと少しだ、そうしたら何もかも取り戻せるはず。

 私を殺したあの男はすでに滅びた。だが我が身から奪った権能と魔力は健在だ。それを取り戻し、この身を完全復活させたら……何から壊そうか。愛していると言いながら胸を貫き、涙を零したお前は血を啜り肉を貪った。愛するからこそ許したかったが。

 この暗闇に打ち捨てられ、届かぬ光に焦がれる。お前はもういないのに、それでも外を求めた。骨に肉や皮膚が蘇るたび、虫に食い荒らされ獣に食まれる。何度も味わう激痛と絶望が色を増して、地上に溢れ出た。生を謳歌する者よ、滅びればよい。

「奪われたすべてを取り返す義務があり、奪い返す権利があるの……だから邪魔をしないで」

 お前を殺す気はない。新たなお前は以前のお前ではないから。大人しくしていれば見逃す気だった。なのに目覚める私を封じようとするのか? あの何もない暗闇の中に? 気高き我が身を……!

 あの日、私は復活した。魔王という肩書を継承した、お前にそっくりの優しい子を滅ぼして――。




 迷っても答えは出ない。だがずっと不思議だった。助けてもらった恩と世話になる負い目から、追及できずに来たが……リリィは「何」だ? 魔術を使うが人間ではない。大量の魔力を有し、黒い霧を浄化する唯一の魔族だが種族は不明だった。

 角も牙もない。美しい外見を持ち、魔王が死んでから復活したと言う話しか口にしなかった。嘘がつけないのは種族特性だと言われたが、ならば種族名を口にしないのは? 長寿のエルフの婆さんも知らない種族なんて、存在するのか?

 それほど長く眠っていたなら……封印されたという意味か。

 ――リリィを信じるな

 蘇ったのはヴラゴのセリフだった。強く堅実で誠実なあの男が、オレに忠告した。その意味と価値が重くのしかかる。そうだ、あの言葉を聞いてすぐじゃないか。魔王城が襲われて混乱する中、あれほどの強者であるヴラゴが死んだ。

 魔王城には結界があったはず。裏の祠から人間が出て……? 女神を封印した祠だと聞いたが、なぜあの場所に魔王城がある? どちらが先だ。城の裏に女神を封じたのか、それとも女神を封じた祠を守るために魔王の城が建てられたのか。

 魔族の王が魔王で、圧倒的な強者が引き継いできた。血族であることが多いのは、様々な種族を混ぜながら強さを保った魔王の一族の努力の賜物だ。なら、どうしてそこまでして魔王の地位に固執する?

 魔王城から離れることが許されず、王となっても特別な権限や能力が増えるわけでもない。魔王になることはデメリットの方が多い気がした。行動の制限と城の結界を維持する義務、魔族を守ることも王の務めのひとつ。

「くそっ、こんな時に相談する相手もいないなんてな」

「私、いる」

 頑張って一緒に考える、だから! 訴えるエイシェットが腹に飛びつき、半泣きで頬をすり寄せた。

「ごめん、そうだな。まだ支離滅裂だが……怖い話を聞いてくれるか?」

 鼻を啜る彼女が頷くのを待って、オレは恐ろしい仮定を口にした。
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