【完結】虚

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第三章

107.復讐の覚悟を問う

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 魔王が世界の創造主の欠片であり、それが代々受け継がれたとしたら? この世界の人間はどんなに強くても、どれだけ鍛えたとしても魔王に勝つことはない。だから異世界から人間を召喚しなくてはならなかった。魔王を倒せる可能性があり、創造主の創造物ではない人間が必要なのだ。

 魔王が女神を封じていたなら、何らかの力関係に変化が生じていたはず。油断したのかも知れないが、創造主は完全な姿で倒されている。にもかかわらず、ほとんどの権能と力を食われた後で女神を封印した。その方法が残っていたら……?

 知る人物は魔王のみ。オレが殺してしまったイヴリースだ。

「イヴリースを助けないと」

 立ち上がったオレに、ヴラゴが冷たい声を掛けた。

「お前は女神が誰なのか、理解して口を開いたのか? ぎりぎりで迷うなら、もう手を出すな」

 肩が揺れる。見ないフリをした部分だった。今の話からして、魔王城を離れられないリリィが女神である可能性が高い。リリィが女神だと仮定すれば、話の辻褄はあう。

 あれだけ強大な力を持ちながら、魔王が死ぬまで「封印されていた」上、黒い霧を消し去る能力がありながら動けない。魔王城を離れられない理由は何だ? だが彼女はオレを迎えに来たとき、魔王城を離れてバルト国近くの屋敷にいた。

「オレを友と呼んだイヴリースを殺したことを後悔してる。恩人であるリリィに感謝もしてる。だけどさ……もしオレやヴラゴの仮定が事実なら、オレは友を2人とも……彼女の策略で失うところだったんだ」

 叫ぶようにして吐き捨てた。日本に戻っても誰もオレを知らない。日本自体が消滅させられた。この世界で生きていくしかないのに、最初の友人も、次の友人も殺されるのか? いずれ番のエイシェットだって殺されるかもしれない。

「オレを召喚した人間が操られたとしても、復讐の手は止めない! 裏に手を回した奴がいるなら……絶対に許さない! それが恩人だとしても。いや、オレを利用するために助けた奴に恩を感じる必要なんて、あるのか?」

 恩を着せて使うために選んだ駒なら、手入れもするだろう。オレは助けられたんじゃなく、拾われたんだ。都合のいい条件をそろえた駒がいた、ただそれだけ。

「お前が決めたのなら、私も手伝うとしよう。死人の魂を呪縛する術も、解除する手段もにある」

 意味ありげに己の顳を叩くヴラゴがにやりと笑い、オレは深呼吸して同じように口角を持ち上げた。袖を摘まむエイシェットは何も言わずに、腰に手を回して抱き着く。彼女の銀髪を撫でながら、これ以上誰も失わない方法を考える。それが無駄であっても、抜け道などなかったとしても……。

 思考を止めなければ、いつか――手が届くと信じたかった。
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