40 / 108
40.侯爵家残党の処分 ***SIDEシリル
しおりを挟む
辺境伯の二人が、護衛を申し出てくれて助かった。マリーとも打ち解けて、孫娘と祖父のような関係に見える。地位を後継に譲ってまで、マリーを優先したことは感謝に尽きる。
兄上や義姉上以外と話していないが、アッシャー侯爵家の分家が騒いでいた。本家の失態をこれ幸いと、自分達にお鉢が回ってくると勘違いした連中だ。隣国であるヴァイセンブルク王国に責任を押し付け、外交を混乱させた責任を何だと思っているのか。
一歩間違えば、国同士の体面を守る戦争になった危険すらある。それを理解せず、本家であるアッシャー侯爵家を取り潰されたと騒ぐ連中を、兄上はまとめて処断した。公爵家すべての賛同が得られたほど、どちらに非があるか一目瞭然だった。
だが、こういった騒動を起こす連中は、おしなべて自分勝手だ。己の非を認めず、他責とすることに慣れていた。アッシャー侯爵家が処分されたのは当然だし、分家は残してやったのに。自分達で己の首を絞めたんだから、納得の上だろう。
アッシャーの一族は、すべて平民に落とされた。貴族として名を残すのは、嫁いだ元令嬢の貴族夫人が数人だけだ。さすがに離婚されると問題になるため、嫁ぎ先には義姉上から通達が出された。そのため、それ以上の騒動になっていない。
中途半端に温情で財産の持ち出しを許したためか、その金を使ってマリー襲撃の計画を立てた。僕達が何もせず、ただ彼らを自由にするわけがないだろう。王家に恨みを抱いている可能性が高い連中に、監視をつけるのは至極普通の行動だ。
彼らを捕縛するのは可能だが、手下として雇った実行部隊が把握できない。頭が捕まったと知らず、末端が暴走したら? 護衛は絶対に必要だった。それも腕ききで強く、絶対に裏切らない騎士だ。その条件に当て嵌まるアーサーとダレルを確保できたのは、マリーの人柄だろう。
綺麗で可愛いだけではなく、中身も魅力的で素敵な人だ。絶対に傷つけさせないし、僕の手元から逃さない。微笑む彼女を見守りながら、改めて決意した。新たに建設中のマリーの私室、窓にはお洒落な薔薇を形どった鉄格子をつけよう、と。
「シリル様、どうぞ」
お茶菓子を半分に割り、綺麗な細い指で摘まんで差し出される。ありがたく頂き、しっかり指も味わった。照れるマリーが妻なのが奇跡のようだな。
護衛の二人には話してあるが、数日中に街へ買い物に出かける予定だ。囮作戦ではなく、単にマリーと王都の散策を楽しむため。ついでに連中を一網打尽に出来たら、最高だけど。
二人にもお菓子を渡すマリーは、背を向けていて知らない。僕と彼らが目配せし合い、決意を固めたことを。何があっても、君は傷つけさせないからね。
兄上や義姉上以外と話していないが、アッシャー侯爵家の分家が騒いでいた。本家の失態をこれ幸いと、自分達にお鉢が回ってくると勘違いした連中だ。隣国であるヴァイセンブルク王国に責任を押し付け、外交を混乱させた責任を何だと思っているのか。
一歩間違えば、国同士の体面を守る戦争になった危険すらある。それを理解せず、本家であるアッシャー侯爵家を取り潰されたと騒ぐ連中を、兄上はまとめて処断した。公爵家すべての賛同が得られたほど、どちらに非があるか一目瞭然だった。
だが、こういった騒動を起こす連中は、おしなべて自分勝手だ。己の非を認めず、他責とすることに慣れていた。アッシャー侯爵家が処分されたのは当然だし、分家は残してやったのに。自分達で己の首を絞めたんだから、納得の上だろう。
アッシャーの一族は、すべて平民に落とされた。貴族として名を残すのは、嫁いだ元令嬢の貴族夫人が数人だけだ。さすがに離婚されると問題になるため、嫁ぎ先には義姉上から通達が出された。そのため、それ以上の騒動になっていない。
中途半端に温情で財産の持ち出しを許したためか、その金を使ってマリー襲撃の計画を立てた。僕達が何もせず、ただ彼らを自由にするわけがないだろう。王家に恨みを抱いている可能性が高い連中に、監視をつけるのは至極普通の行動だ。
彼らを捕縛するのは可能だが、手下として雇った実行部隊が把握できない。頭が捕まったと知らず、末端が暴走したら? 護衛は絶対に必要だった。それも腕ききで強く、絶対に裏切らない騎士だ。その条件に当て嵌まるアーサーとダレルを確保できたのは、マリーの人柄だろう。
綺麗で可愛いだけではなく、中身も魅力的で素敵な人だ。絶対に傷つけさせないし、僕の手元から逃さない。微笑む彼女を見守りながら、改めて決意した。新たに建設中のマリーの私室、窓にはお洒落な薔薇を形どった鉄格子をつけよう、と。
「シリル様、どうぞ」
お茶菓子を半分に割り、綺麗な細い指で摘まんで差し出される。ありがたく頂き、しっかり指も味わった。照れるマリーが妻なのが奇跡のようだな。
護衛の二人には話してあるが、数日中に街へ買い物に出かける予定だ。囮作戦ではなく、単にマリーと王都の散策を楽しむため。ついでに連中を一網打尽に出来たら、最高だけど。
二人にもお菓子を渡すマリーは、背を向けていて知らない。僕と彼らが目配せし合い、決意を固めたことを。何があっても、君は傷つけさせないからね。
388
あなたにおすすめの小説
何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています
鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。
指示を出さない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。
それなのに――
いつの間にか屋敷は落ち着き、
使用人たちは迷わなくなり、
人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。
誰かに依存しない。
誰かを支配しない。
それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。
必要とされなくてもいい。
役に立たなくてもいい。
それでも、ここにいていい。
これは、
「何もしない」ことで壊れなかった関係と、
「奪わない」ことで続いていった日常を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
夏の眼差し
通木遼平
恋愛
伯爵令嬢であるティナの婚約者とティナの妹が恋仲になり、ティナは婚約を解消することになる。婚約者に対して特に思い入れはなかったが、姉妹の婚約のすげ替えについての噂と勝手なことばかり言う妹に気疲れしたティナは、昔から彼女を気にかけてくれていたイライザ夫人の紹介で夫人の孫娘リネットの話し相手として雇われることになった。
家から離れ、リネット共に穏やかな日々を過ごすティナは、リネットの従兄であるセオドアと出会う。
※他サイトにも掲載しています
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる