65 / 108
65.神殿も認めた正式な夫婦です
詳しい話はあとで聞くことにして、私とシリル様はディーお義姉様のところへ向かった。問題の王女は牢に隔離したけれど、使節団の人が何か騒動を起こすかもしれない。他国からの来賓も警備を固めているし、私達は一か所にまとまって休むことにしたの。
万が一襲撃があっても、現王妃であるディーお義姉様の部屋は安全よ。最高の警備がされているもの。徹夜だったアーサーは、ダレルと交代で休みに入った。扉の外で待機するダレルは、剣術より槍の扱いで有名な武人らしい。今も槍を手に護衛任務に就いていた。
「大変だったわね、二人とも……この部屋で休んで頂戴」
「ありがとうございます」
ディーお義姉様も部屋に戻ったところで騒ぎを聞きつけ、寝ていないから仕事が手につかないと苦笑いした。隣の部屋で休むと聞いている。用意されたベッドに乗り、シリル様と並んで横になる。
「ちょっと疑問なのだけれど、二人はその……正式な夫婦よね?」
「はい、神殿も認めています」
するりと答えが出た。神殿で一夜を過ごし、正式に認められたはず。なんのための確認かしら? もしかして、夫婦じゃなかったら隙ができるから? 話で聞く限り、サルセド王国の対応は怪しいでしょうし。確証が欲しかったのね。
「もちろんです」
シリル様も念押しのように同意した。何も嘘はないわ。神々に祝福され、きちんと神殿で夜を過ごした。届け出も受理され、誰も文句のつけようがない夫婦よ。笑顔で肯定したのに、ディーお義姉様は「そう」と赤い顔を逸らした。
首を傾げるも、それ以上のお話はなし。扉が閉まって、私は横になる。すぐに眠気が訪れた。ふわっと欠伸が出る。手で隠したら、指先を絡められた。
「シリル様?」
「マリーがここにいると安心したい」
「はい……」
答えながらも、ほとんど寝ていた。なんて返事をしたか曖昧なまま、シリル様の温もりに頬を緩める。温かいし、心地よい。問題が起きているけれど、サルセドの王女がいくら騒いでも覆らない。二つの国から抗議したら、周囲の国も理解してくれるでしょう。
数時間後、目が覚めたらすっきりしていた。寝不足のぼんやりは嘘のように消え、ぱちりと目が開く。正面には整ったシリル様の顔があって、照れてしまった。先に目が覚めてよかったわ。今のうちに顔を洗って、化粧を直してもら……あら? がっちりと手を掴まれているわ。
胸元に引き寄せる形でシリル様が抱き込んでいて、手が抜けそうにない。これは、乙女の一大事では? 寝起きで化粧が崩れた顔を見せることになる! 汗で崩れていないかしら? あたふたしながら、手を抜こうとした。
「ぷっ、あははっ。マリー、おはよう……かな?」
「起きていたんですね? もう!」
唇を尖らせたら、宥めるように触れるキスをもらった。私のほうが子供みたいだわ。
万が一襲撃があっても、現王妃であるディーお義姉様の部屋は安全よ。最高の警備がされているもの。徹夜だったアーサーは、ダレルと交代で休みに入った。扉の外で待機するダレルは、剣術より槍の扱いで有名な武人らしい。今も槍を手に護衛任務に就いていた。
「大変だったわね、二人とも……この部屋で休んで頂戴」
「ありがとうございます」
ディーお義姉様も部屋に戻ったところで騒ぎを聞きつけ、寝ていないから仕事が手につかないと苦笑いした。隣の部屋で休むと聞いている。用意されたベッドに乗り、シリル様と並んで横になる。
「ちょっと疑問なのだけれど、二人はその……正式な夫婦よね?」
「はい、神殿も認めています」
するりと答えが出た。神殿で一夜を過ごし、正式に認められたはず。なんのための確認かしら? もしかして、夫婦じゃなかったら隙ができるから? 話で聞く限り、サルセド王国の対応は怪しいでしょうし。確証が欲しかったのね。
「もちろんです」
シリル様も念押しのように同意した。何も嘘はないわ。神々に祝福され、きちんと神殿で夜を過ごした。届け出も受理され、誰も文句のつけようがない夫婦よ。笑顔で肯定したのに、ディーお義姉様は「そう」と赤い顔を逸らした。
首を傾げるも、それ以上のお話はなし。扉が閉まって、私は横になる。すぐに眠気が訪れた。ふわっと欠伸が出る。手で隠したら、指先を絡められた。
「シリル様?」
「マリーがここにいると安心したい」
「はい……」
答えながらも、ほとんど寝ていた。なんて返事をしたか曖昧なまま、シリル様の温もりに頬を緩める。温かいし、心地よい。問題が起きているけれど、サルセドの王女がいくら騒いでも覆らない。二つの国から抗議したら、周囲の国も理解してくれるでしょう。
数時間後、目が覚めたらすっきりしていた。寝不足のぼんやりは嘘のように消え、ぱちりと目が開く。正面には整ったシリル様の顔があって、照れてしまった。先に目が覚めてよかったわ。今のうちに顔を洗って、化粧を直してもら……あら? がっちりと手を掴まれているわ。
胸元に引き寄せる形でシリル様が抱き込んでいて、手が抜けそうにない。これは、乙女の一大事では? 寝起きで化粧が崩れた顔を見せることになる! 汗で崩れていないかしら? あたふたしながら、手を抜こうとした。
「ぷっ、あははっ。マリー、おはよう……かな?」
「起きていたんですね? もう!」
唇を尖らせたら、宥めるように触れるキスをもらった。私のほうが子供みたいだわ。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
死ぬまでに叶えたい十の願い
木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」
三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。
離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する——
二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。
氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁
瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。
彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。
【完結】クズ男と決別した私の未来は輝いている。
カシスサワー
恋愛
五年間、幸は彼を信じ、支え続けてきた。
「会社が成功したら、祖父に紹介するつもりだ。それまで俺を支えて待っていてほしい。必ず幸と結婚するから」
そう、圭吾は約束した。
けれど――すべてが順調に進んでいるはずの今、幸が目にしたのは、圭吾の婚約の報せ。
問い詰めた幸に、圭吾は冷たく言い放つ。
「結婚相手は、それなりの家柄じゃないと祖父が納得しない。だから幸とは結婚できない。でも……愛人としてなら、そばに置いてやってもいい」
その瞬間、幸の中で、なにかがプチッと切れた。