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28.何を望むかと問われたら
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報告はさらに続いた。
侯爵家へご子息死亡の連絡が入るまでに、なんと間に八人も挟まっていたの。要は伝言ゲームね。少しずつニュアンスがずれて、最後は全く違う内容になった。友人二人を間に挟んでも起きる騒動だから、八人もいたら、全然別の話に発展するのもわかる。
誰が悪いと問われたら……なんとも。罪の追求がしづらい状況だわ。でも、賠償問題になって姫を差し出したヴァイセンブルク王国に対し、ソールズベリー王国は何らかの補償をしなければならない。
「ヴァイセンブルク王国の名誉を傷つけたこと、正式な謝罪をするべきだ。アッシャー侯爵家は厳しく処断する。その上で、アンネマリー姫には補償を行いたい。遠慮なく請求してくれ。ソールズベリー王家の名において叶えると約束しよう」
「アンネマリー・カリン・フォン・ヴァイセンブルクは、補償に母国への継続支援を望みます。幾久しく、私とアリスター王弟殿下の仲が続く限り、途切れぬ支援を、どうか」
お願いしますと言っていいの? でも補償だからお願いしてはダメよね。困って言葉を尻すぼみにして逃げた。隣でシリル様が肩を震わせる。笑ったわね? あとで怖いわよ!
「なんとも謙虚な姫君だ」
「可憐だな」
周囲の貴族の言葉に、シリル様が反応して表情が険しくなる。確か、ディーお義姉様達の話では、閉じ込めて誰にも見せたくないとか。次からはヴェールでも被ろうかしら。結婚式のヴェールに似せて、華やかなものなら場の空気を壊さなそう。
「よろしいでしょうか」
ヴァイセンブルクの宰相が手を挙げて発言を求める。クリスお義兄様が頷くと、彼は私に向き直り丁寧に一礼した。自国の王族に対する敬意を示した彼に、私もゆったりと頷いて返礼とする。
「アンネマリー姫様、陛下方が心配しておられます。どうか、母国にお戻りになっ」
「ダメだ! マリーは僕の妻だ」
シリル様が言葉を遮って被せた。ああ、やってしまった。思わず目を閉じて、天を仰ぐ。だがすぐに切り替えた。こうなったら、私の気持ちを伝えて諦めてもらいましょう。
「宰相の言うとおり、一度戻ることは可能ですが……その際は夫も同行します。別れる気はありません。この点は承知しておいてください」
ざわっと周囲が揺れる。私が弟にしても歳の離れたシリル様を、夫と呼ぶことに驚いた様子ね。結婚式も挙げたのだから、当然でしょう。驚くほうがおかしいわ。
「王族は国に命を捧げる代わりに、民の養いで豊かな生活を享受します。私は今までヴァイセンブルクの民に養われてきた。恩返しのために嫁ぎ、両国の絆を結ぶ役目を得たことを感謝しています」
シリル様は繋いだ私の手をしっかりと握り、泣き出しそうな顔で見上げる。子供なのに綺麗な顔で、大人びた振る舞いをするのに幼子のようで……愛おしい方だわ。
「私がようやく見つけた役目を奪わないでほしい。両陛下にはそう伝えるよう命じます」
最後は厳しく言い切る口調になった。宰相は目を見開いたが、静かに頭を下げる。反論はなかった。
ほっとした私が肩の力を抜いたところへ、拍手が聞こえる。ディーお義姉様の目が涙で濡れて、彼女の拍手に釣られたように広間の貴族から拍手が送られた。これって、何への拍手なのかしらね。
侯爵家へご子息死亡の連絡が入るまでに、なんと間に八人も挟まっていたの。要は伝言ゲームね。少しずつニュアンスがずれて、最後は全く違う内容になった。友人二人を間に挟んでも起きる騒動だから、八人もいたら、全然別の話に発展するのもわかる。
誰が悪いと問われたら……なんとも。罪の追求がしづらい状況だわ。でも、賠償問題になって姫を差し出したヴァイセンブルク王国に対し、ソールズベリー王国は何らかの補償をしなければならない。
「ヴァイセンブルク王国の名誉を傷つけたこと、正式な謝罪をするべきだ。アッシャー侯爵家は厳しく処断する。その上で、アンネマリー姫には補償を行いたい。遠慮なく請求してくれ。ソールズベリー王家の名において叶えると約束しよう」
「アンネマリー・カリン・フォン・ヴァイセンブルクは、補償に母国への継続支援を望みます。幾久しく、私とアリスター王弟殿下の仲が続く限り、途切れぬ支援を、どうか」
お願いしますと言っていいの? でも補償だからお願いしてはダメよね。困って言葉を尻すぼみにして逃げた。隣でシリル様が肩を震わせる。笑ったわね? あとで怖いわよ!
「なんとも謙虚な姫君だ」
「可憐だな」
周囲の貴族の言葉に、シリル様が反応して表情が険しくなる。確か、ディーお義姉様達の話では、閉じ込めて誰にも見せたくないとか。次からはヴェールでも被ろうかしら。結婚式のヴェールに似せて、華やかなものなら場の空気を壊さなそう。
「よろしいでしょうか」
ヴァイセンブルクの宰相が手を挙げて発言を求める。クリスお義兄様が頷くと、彼は私に向き直り丁寧に一礼した。自国の王族に対する敬意を示した彼に、私もゆったりと頷いて返礼とする。
「アンネマリー姫様、陛下方が心配しておられます。どうか、母国にお戻りになっ」
「ダメだ! マリーは僕の妻だ」
シリル様が言葉を遮って被せた。ああ、やってしまった。思わず目を閉じて、天を仰ぐ。だがすぐに切り替えた。こうなったら、私の気持ちを伝えて諦めてもらいましょう。
「宰相の言うとおり、一度戻ることは可能ですが……その際は夫も同行します。別れる気はありません。この点は承知しておいてください」
ざわっと周囲が揺れる。私が弟にしても歳の離れたシリル様を、夫と呼ぶことに驚いた様子ね。結婚式も挙げたのだから、当然でしょう。驚くほうがおかしいわ。
「王族は国に命を捧げる代わりに、民の養いで豊かな生活を享受します。私は今までヴァイセンブルクの民に養われてきた。恩返しのために嫁ぎ、両国の絆を結ぶ役目を得たことを感謝しています」
シリル様は繋いだ私の手をしっかりと握り、泣き出しそうな顔で見上げる。子供なのに綺麗な顔で、大人びた振る舞いをするのに幼子のようで……愛おしい方だわ。
「私がようやく見つけた役目を奪わないでほしい。両陛下にはそう伝えるよう命じます」
最後は厳しく言い切る口調になった。宰相は目を見開いたが、静かに頭を下げる。反論はなかった。
ほっとした私が肩の力を抜いたところへ、拍手が聞こえる。ディーお義姉様の目が涙で濡れて、彼女の拍手に釣られたように広間の貴族から拍手が送られた。これって、何への拍手なのかしらね。
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