45 / 530
第4章 魔王なら出来て当たり前
44.落下するフェンリルとお姫様方
しおりを挟む
こうなったら早く仕事を片付けて、帰城しよう。ぐっと拳を握り締めたルシファーに、ベールがふわりと近づいた。青いドラゴンはルキフェルだけだ。彼の背に乗ったベールが飛び降りると、ルキフェルもすぐに人化した。
「陛下、こちらです」
長い説明を省くところがベールらしい。早く帰ろうと決意したばかりのルシファーに異存はなかった。移動しようとした彼らの上空で悲鳴が上がる。
「きゃぁあああ! 受け止めて!!」
頭上から落ちてくる立場で、下の人に避けろではなく「受け止めろ」と要請する。なかなかの強者だ。聞き覚えのある声に顔を引き攣らせる3人が見上げた先は、巨大なもふもふだった。ぽんと音を立てて子犬サイズになり、落下の衝撃を和らげようとするフェンリル。
地上までの距離を測っている様子から、先に下りて巨大化して悲鳴の主を助けるつもりらしい。だがルシファーを見ると、彼は叫んだ。
「我が君、姫様達が!」
「分かった」
くるりと指先で魔力を編み、落下する人影を引き寄せた。真っ白なシーツに包まれた人物を両腕で受け止める。ふわりと舞ったシーツが、ばさりとルシファーの上に掛かった。お陰で落下した彼女の顔が露わになる。
艶のある黒髪を揺らすリリスは、ほっと安堵の息を吐いた。その腕の中で、幼いイヴは目を見開いている。まだはしゃいだりする意思表示が始まらないため、驚きが表情の大半だった。
「ぶぅ」
文句を言うように呻いた赤子に、白いシーツが近づく。
「イヴぅ……リリスも、無事でよかった」
頬ずりする魔王は、白いシーツの塊である。その顔を押し付けようとして、我が子が振った手にぱしんと拒まれた。
「今の、イヴ? 凄いな! もう魔力を操るのか」
にこにこ機嫌のいいルシファーの後ろから吹いた風で、シーツがはらりと足元に落ちた。白いシーツが取れても純白の魔王は、にこにこと笑顔を振りまく。しかしイヴはご機嫌ななめだった。
「だぁ!」
振り回す手は届かないのに、ぺちんとルシファーを叩く音がする。魔力を操っているのだ。それが嬉しいルシファーは笑顔を振りまいた。
「リリス、無事か……っ」
「ええ、ありがとう。イヴも平気ね、よかったわ」
家族で安全を確かめ合って安心しているところ悪いが……とルキフェルが声をかけた。
「なんでリリスがいるのさ。ルシファー? アスタロトに止められたはずだよね」
推測なのに確証を込めて尋ねる水色の髪の青年は、むっとしている。責める口調に、ベールが溜め息を重ねた。
「はぁ……我が眷族の危機に、このような」
「いやいや、オレが連れてきたんじゃないぞ」
「そうよ、イヴと私が勝手についてきたの。ヤンはおまけよ」
頑張って着地したのに、えらい言われようである。ヤンがしょんぼりと尻尾を垂らした。続いて耳も垂れてしまう。
「ごめんなさい。そういう意味じゃないの」
「じゃあ、どういう意味?」
ヤンの代わりに抗議するつもりなのか、ルキフェルが尖った口調で応じる。今回は幻獣達に危険が迫っており、緊急性があった。その事件に、なぜリリスが首を突っ込むのか。育児に忙しい時期なのに。いろいろと含ませた声は刺々しかった。
「原因を知ってるからよ! 私が一緒の方が早く解決するわ」
きょとんとした顔になったルキフェルの後ろで、ベールが「原因を知ってる?」と眉を寄せた。どうやらお姫様は遊びたくて同行した訳ではないらしい。そこまで気づくと、ルキフェルの表情が和らいだ。
「リリスは原因を知ってたのか。来る前に教えてくれたら助かったが」
「だって、教えたら私が来る理由がなくなるじゃない」
やっぱり来たくて、強引について来たらしい……。しょげたヤンを撫でるルシファーは苦笑いして、屈んだ。視線を合わせて言い聞かせる。
「危険じゃないか」
「平気よ。ルシファーが隣にいて、危険な場所なんてないわ」
正論すぎて、大公も魔王も反論できなかった。
「陛下、こちらです」
長い説明を省くところがベールらしい。早く帰ろうと決意したばかりのルシファーに異存はなかった。移動しようとした彼らの上空で悲鳴が上がる。
「きゃぁあああ! 受け止めて!!」
頭上から落ちてくる立場で、下の人に避けろではなく「受け止めろ」と要請する。なかなかの強者だ。聞き覚えのある声に顔を引き攣らせる3人が見上げた先は、巨大なもふもふだった。ぽんと音を立てて子犬サイズになり、落下の衝撃を和らげようとするフェンリル。
地上までの距離を測っている様子から、先に下りて巨大化して悲鳴の主を助けるつもりらしい。だがルシファーを見ると、彼は叫んだ。
「我が君、姫様達が!」
「分かった」
くるりと指先で魔力を編み、落下する人影を引き寄せた。真っ白なシーツに包まれた人物を両腕で受け止める。ふわりと舞ったシーツが、ばさりとルシファーの上に掛かった。お陰で落下した彼女の顔が露わになる。
艶のある黒髪を揺らすリリスは、ほっと安堵の息を吐いた。その腕の中で、幼いイヴは目を見開いている。まだはしゃいだりする意思表示が始まらないため、驚きが表情の大半だった。
「ぶぅ」
文句を言うように呻いた赤子に、白いシーツが近づく。
「イヴぅ……リリスも、無事でよかった」
頬ずりする魔王は、白いシーツの塊である。その顔を押し付けようとして、我が子が振った手にぱしんと拒まれた。
「今の、イヴ? 凄いな! もう魔力を操るのか」
にこにこ機嫌のいいルシファーの後ろから吹いた風で、シーツがはらりと足元に落ちた。白いシーツが取れても純白の魔王は、にこにこと笑顔を振りまく。しかしイヴはご機嫌ななめだった。
「だぁ!」
振り回す手は届かないのに、ぺちんとルシファーを叩く音がする。魔力を操っているのだ。それが嬉しいルシファーは笑顔を振りまいた。
「リリス、無事か……っ」
「ええ、ありがとう。イヴも平気ね、よかったわ」
家族で安全を確かめ合って安心しているところ悪いが……とルキフェルが声をかけた。
「なんでリリスがいるのさ。ルシファー? アスタロトに止められたはずだよね」
推測なのに確証を込めて尋ねる水色の髪の青年は、むっとしている。責める口調に、ベールが溜め息を重ねた。
「はぁ……我が眷族の危機に、このような」
「いやいや、オレが連れてきたんじゃないぞ」
「そうよ、イヴと私が勝手についてきたの。ヤンはおまけよ」
頑張って着地したのに、えらい言われようである。ヤンがしょんぼりと尻尾を垂らした。続いて耳も垂れてしまう。
「ごめんなさい。そういう意味じゃないの」
「じゃあ、どういう意味?」
ヤンの代わりに抗議するつもりなのか、ルキフェルが尖った口調で応じる。今回は幻獣達に危険が迫っており、緊急性があった。その事件に、なぜリリスが首を突っ込むのか。育児に忙しい時期なのに。いろいろと含ませた声は刺々しかった。
「原因を知ってるからよ! 私が一緒の方が早く解決するわ」
きょとんとした顔になったルキフェルの後ろで、ベールが「原因を知ってる?」と眉を寄せた。どうやらお姫様は遊びたくて同行した訳ではないらしい。そこまで気づくと、ルキフェルの表情が和らいだ。
「リリスは原因を知ってたのか。来る前に教えてくれたら助かったが」
「だって、教えたら私が来る理由がなくなるじゃない」
やっぱり来たくて、強引について来たらしい……。しょげたヤンを撫でるルシファーは苦笑いして、屈んだ。視線を合わせて言い聞かせる。
「危険じゃないか」
「平気よ。ルシファーが隣にいて、危険な場所なんてないわ」
正論すぎて、大公も魔王も反論できなかった。
50
あなたにおすすめの小説
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです
珂里
ファンタジー
ある日、5歳の彩菜は突然神隠しに遭い異世界へ迷い込んでしまう。
そんな迷子の彩菜を助けてくれたのは王国の騎士団長だった。元の世界に帰れない彩菜を、子供のいない団長夫婦は自分の娘として育ててくれることに……。
日本のお父さんお母さん、会えなくて寂しいけれど、彩菜は優しい大人の人達に助けられて毎日元気に暮らしてます!
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。
桜城恋詠
ファンタジー
聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。
異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。
彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。
迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。
「絶対、誰にも渡さない」
「君を深く愛している」
「あなたは私の、最愛の娘よ」
公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。
そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?
命乞いをしたって、もう遅い。
あなたたちは絶対に、許さないんだから!
☆ ☆ ☆
★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。
こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。
※9/28 誤字修正
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる