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第4章 魔王なら出来て当たり前
47.お隣はお隣、うちはうち!
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爪を使って進むヤンは、順調に進んでいた。自慢の毛皮を汚すような泥もなく、上から冷たい水が滴ることもない。調子よく進む彼は、降ってきた何かが首に絡みついた途端、悲鳴を上げた。
「うっ、ひやぁああ! 我が君ぃ!!」
助けを求める配下を見捨てるほど、ルシファーは冷めていない。驚いて振り返った彼の目に映ったのは、綺麗な虹色の子蛇に絡みつかれたフェンリルだった。と言っても、絡みつくほど長くない。頭に乗せたと表現する方が近かった。
「森の王者だろう」
情けないと苦笑して、頭の上にいる虹蛇を覗き込む。あいにく妻子を抱いているので手が使えない。風を起こして手元に引き寄せようとしたが、その前にリリスが手を伸ばした。ひょいっと摘まんでイヴのおくるみの上に置く。
先ほど保護した子蛇より小さい気がした。
「さっきの夫婦の子か?」
「青いからそうだと思うわ」
魔力を色で見分けたリリスが、親子判定をする。これで行方不明の子が見つかったのであれば、懸念は一気に減る。転移が出来る子蛇と聞いたが、見た目は普通だ。
「本当に転移が出来るなら、親に渡す前に消えてしまっては困るな」
目印を付けておこう。ルシファーは子蛇の魔力にリンクを施した。これで解除するまでの間は、この子蛇がどこへ転移しても追いかけることが可能だ。
「問題は普段から転移しないように教える方法か」
「まだ赤ちゃんだもの」
リリスもこてりと首を傾げた。イヴは大きな目を見開き、子蛇をじっと見つめる。子蛇の方も赤子が珍しいのか、動かずに目を合わせた。不思議な見つめ合いの後、ぐったりと子蛇が倒れる。首をおくるみに押し付けて寝ているようだった。
「今のうちに運ぼう」
今後の対策は、親を交えて協議する方がいい。勝手に首輪や綱を付けるわけにもいかないのだから。ルシファーが速度を上げて進む中、ヤンは後方でぶつぶつと、文句を垂れていた。
「森の王でも怖い物は怖いのです。生きているか分からない何かが落ちてきたら、我が君だってびっくりするはず……我は悪くない」
「聞こえてるぞ、ヤン」
びくっと震えた隙に、爪が外れてヤンが後ろへ滑る。角度のついたツルツルの坂を勢いよく転がった。少し先で爪を立てる音がして、何とか巨体が止まる。ぱちくりと瞬きをしたリリスが、思わぬ指摘をした。
「ヤンったら、小さくなればいいのに」
「……そうだな」
焦っているときはそんなものだ。小さくなれば落下スピードも緩くなり、小さな力で止まれるのに。巨体のまま止まろうとするから、かなり後方まで落ちてしまった。まあ、それも経験だ。からりと笑って、ルシファーはいそいそと洞窟の出口に向かった。
追いかけるヤンが洞窟を抜ける頃、すでに子蛇の感動の対面が始まっている。
「ああ、ありがとうございます!」
感動する母蛇が、我が子を抱き締めて感涙する。その隣で、最初の子蛇が別の親に叱られていた。勝手に出歩いたことを咎めると、その子はけろりと言い放った。
「だって、隣のリンちゃんが出掛けたもん」
「お隣はお隣! うちはうち!」
ぴしゃんと母親に言い切られ、不満そうに赤い舌をちらつかせながら子蛇は黙った。ここで口答えしても勝てないと知っているのだ。こういう狡さは大人も子どもも関係ない。くすくす笑う彼らはすっかり忘れていた。
さきほど外へ子蛇を探しに行った二人の大公の存在を――。
「楽しそうだね、ルシファー。見つけたなら知らせてくれてもいいのに」
戻るなり唇を尖らせて文句を並べるルキフェルの隣で、ベールが長い腕を組む。だがベールは何も言わなかった。だからルシファーも言わなくて済む。勝手に勘違いして外へ飛び出したのは、お前達の方だろう? と。
「うっ、ひやぁああ! 我が君ぃ!!」
助けを求める配下を見捨てるほど、ルシファーは冷めていない。驚いて振り返った彼の目に映ったのは、綺麗な虹色の子蛇に絡みつかれたフェンリルだった。と言っても、絡みつくほど長くない。頭に乗せたと表現する方が近かった。
「森の王者だろう」
情けないと苦笑して、頭の上にいる虹蛇を覗き込む。あいにく妻子を抱いているので手が使えない。風を起こして手元に引き寄せようとしたが、その前にリリスが手を伸ばした。ひょいっと摘まんでイヴのおくるみの上に置く。
先ほど保護した子蛇より小さい気がした。
「さっきの夫婦の子か?」
「青いからそうだと思うわ」
魔力を色で見分けたリリスが、親子判定をする。これで行方不明の子が見つかったのであれば、懸念は一気に減る。転移が出来る子蛇と聞いたが、見た目は普通だ。
「本当に転移が出来るなら、親に渡す前に消えてしまっては困るな」
目印を付けておこう。ルシファーは子蛇の魔力にリンクを施した。これで解除するまでの間は、この子蛇がどこへ転移しても追いかけることが可能だ。
「問題は普段から転移しないように教える方法か」
「まだ赤ちゃんだもの」
リリスもこてりと首を傾げた。イヴは大きな目を見開き、子蛇をじっと見つめる。子蛇の方も赤子が珍しいのか、動かずに目を合わせた。不思議な見つめ合いの後、ぐったりと子蛇が倒れる。首をおくるみに押し付けて寝ているようだった。
「今のうちに運ぼう」
今後の対策は、親を交えて協議する方がいい。勝手に首輪や綱を付けるわけにもいかないのだから。ルシファーが速度を上げて進む中、ヤンは後方でぶつぶつと、文句を垂れていた。
「森の王でも怖い物は怖いのです。生きているか分からない何かが落ちてきたら、我が君だってびっくりするはず……我は悪くない」
「聞こえてるぞ、ヤン」
びくっと震えた隙に、爪が外れてヤンが後ろへ滑る。角度のついたツルツルの坂を勢いよく転がった。少し先で爪を立てる音がして、何とか巨体が止まる。ぱちくりと瞬きをしたリリスが、思わぬ指摘をした。
「ヤンったら、小さくなればいいのに」
「……そうだな」
焦っているときはそんなものだ。小さくなれば落下スピードも緩くなり、小さな力で止まれるのに。巨体のまま止まろうとするから、かなり後方まで落ちてしまった。まあ、それも経験だ。からりと笑って、ルシファーはいそいそと洞窟の出口に向かった。
追いかけるヤンが洞窟を抜ける頃、すでに子蛇の感動の対面が始まっている。
「ああ、ありがとうございます!」
感動する母蛇が、我が子を抱き締めて感涙する。その隣で、最初の子蛇が別の親に叱られていた。勝手に出歩いたことを咎めると、その子はけろりと言い放った。
「だって、隣のリンちゃんが出掛けたもん」
「お隣はお隣! うちはうち!」
ぴしゃんと母親に言い切られ、不満そうに赤い舌をちらつかせながら子蛇は黙った。ここで口答えしても勝てないと知っているのだ。こういう狡さは大人も子どもも関係ない。くすくす笑う彼らはすっかり忘れていた。
さきほど外へ子蛇を探しに行った二人の大公の存在を――。
「楽しそうだね、ルシファー。見つけたなら知らせてくれてもいいのに」
戻るなり唇を尖らせて文句を並べるルキフェルの隣で、ベールが長い腕を組む。だがベールは何も言わなかった。だからルシファーも言わなくて済む。勝手に勘違いして外へ飛び出したのは、お前達の方だろう? と。
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