【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
279 / 530
第16章 魔王様の育児論

277.焦るほど嘘くさい

しおりを挟む
 手を打った草原で爆発があり、噴火だと確認されたのは夜のことだった。予定通り、温泉街の屋敷で露天風呂を楽しんでいるところに、ルキフェルが報告書を持ち込んだ。

「珍しいな」

 普段はアスタロトが来るのに。そう首を傾げたら、呆れたように言われた。

「忘れたの? もう休暇に入ったよ。今回は二ヶ月寝倒すみたいだし」

 意味ありげに後半を濁した。アデーレも途中から、休暇をとって合流するんだっけ? にやりと笑い合い、報告書の被害状況を確認する。魔王軍によって閉鎖された地域なので、人的被害はなかった。ここから先の復旧に関しては、アムドゥスキアスが担当になる。

「アドキスと相談して、復旧の手配をしないと」

「うーん、今回は人的被害がないよね。それと観光地だったり草原だから、予想される今後の被害もないんだ。魔族の生息地と離れてるから、ある程度放置して収まったら手を加えるのが早いかな」

「そうか。なら数ヶ月は様子見しよう」

 リリスとイヴを先に上がらせた風呂で、ルシファーはのんびりと寛ぐ。ルキフェルも当たり前のように、隣で湯に浸かった。

「ところで、リリス達と喧嘩したの?」

「いいや。どうしてだ?」

「一緒に入ってないから」

 ずばりと指摘され、ルシファーは慌てて言い募った。焦れば焦るほど、怪しく見えるのを忘れている。

「あ、えっと、リリスは先に上がったんだ。イヴがのぼせて、そう……それだけだぞ」

「ふーん。どんまい」

 ぽんと肩を叩きながら、付け加えられた言葉は、日本人が持ち込んだ「気にするなよ」という慰めだった。確実に、怒ったリリスに置いて行かれた可哀想な夫扱いだ。

「そうじゃない。本当にイヴがのぼせたんだ」

「うん、分かってる。それでいいから……座らないとアレコレ丸見えだよ」

 ざぶんとまた湯に浸かる。なぜか負けたような気がする。そうじゃないのに……本当の本当なんだぞ。ぶつぶつと文句を言うルシファーを揶揄いながら、久しぶりに温泉を堪能したルキフェルは明るく帰っていった。

 屋敷の部屋に入れば、イヴに魔法で風を送るリリスが子守唄を口遊んでいる。ほのぼのした光景なのに、音が微妙な外れ方をするせいで落ち着かなかった。それはイヴも同じようで、閉じた目をちらちらと開けては、母の顔を窺う。音がズレてると指摘していいか、迷っている顔だった。

「イヴ」

 小声で呼んで首を横に振る。それで通じたらしい。イヴはぎゅっと目を閉じた。寝たふりをする我が子の黒髪を撫で、リリスの隣に腰掛けた。

「また噴火したのね」

「ああ。聞こえたか……予想して手を打ったお陰で、誰もケガをしていない。魔の森が少し焦げたが、リリンは無事だろうか」

「連絡がないから、平気ね。明日の視察は現場?」

 草原の現場視察をするのかと尋ねられ、否定した。すでに魔王軍が報告書をあげたのに、上司が乗り込んだら傷つけてしまう。彼らの報告書は信用に足る内容で、疑い確認する必要はなかった。

「予定通り、温泉街を見て回って帰ろう」

 噴火で予定は多少狂ったが、魔王城経由になった視察は継続だ。アスタロトも休暇直前に呼び出されたものの、そのまま城に帰った。大きな問題はない。

「イヴがね、パパと一緒に眠りたいんですって」

「ん? それは嬉しいな。3年で忘れられなくて良かった」

 幼い娘に「あんた誰」と言われたら、世を儚みそうな魔王へ、妃はからりと笑った。

「実はね、一度忘れちゃって! 過去の映像を見せて思い出させたのよ」

 冗談か本当か判断できず、でもリリスが言うなら事実だろうと飲み込む。自業自得の切ない感情は、苦く感じた。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

処理中です...