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第17章 4歳の特別なお祝い
288.赤紫を選んだのに……?
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魔族にとって、即位記念祭は重要な行事だ。最強の純白魔王ルシファーが魔族を統一したことを祝う祭りであり、各種族が一同に会する集まりだった。ここで未来の妻や夫を見つける魔族も少なくない。
ある意味、種族を超えた婚活や親善の場になっていた。過去の因縁があったとしても、この祭りの間は一切の騒動を禁じられる。祭りで鉢合わせして話すうちに打ち解け、遺恨を水に流す事例もあるくらいだった。
「今回はイヴのお披露目がメインだな」
「メインはあくまで陛下の即位記念です」
アスタロトが復帰するまで、しっかり手綱を握るベールが言葉を返す。むすっと膨れたが、ルシファーは無駄な口論をしなかった。話を進める間に、イヴのお祭りにすり替える。そのために不要な衝突を避ける気だった。
ルシファーは過去の失敗を教訓に、今回の計画を立てている。その努力をきちんとした方向に向けてくれたら、どれだけ助かるか。すっかり見透かされた上、呆れられているなど、知る由もなかった。
「イヴのドレスやお飾りは、予算が組めるのか?」
「はい。こちらになります。宝石類はここ数年大量に産出していますので、どれでもお選びいただけます」
新しく産出した原石を記したファイルを差し出され、真剣に捲っていく。魔の森であるリリンが眠りに入ると、大きな宝石が産出するらしい。その話をリリスから聞いて、首を傾げた記憶が蘇る。なんでも、宝石は溢れ出した魔力が結晶化したものだとか。
考えを打ち切り、ぱらぱらと捲っていた手を止めた。大粒の宝石がひとつ、記されている。薄紫の原石の絵を見た瞬間、そこから指が動かなくなった。
「これだ、これにしよう」
「薄紫……赤寄りの色ですか」
ピンクではないが、赤に近い紫だ。透き通っており、内部で光を弾く照りのある石だった。黒髪と銀瞳の娘は、肌が白いこともあり寒色の印象が強い。緑や青も似合うが、ルシファーは「これこそイヴに似合う色」と感じた。
冷たい色より、暖かい色の方が相応しい。ルシファーの鶴の一声で、宝石は確定した。お飾りを同じ石で揃えるなら、ドレスの色も決まってくる。すぐに職人達に集合の指示が出され、宝石の現物が取り寄せられた。
「ルシファーが何を選んだのか、楽しみだわ」
イヴを抱いたリリスも同席し、集められた職人達も固唾を飲んで見守る。収納空間からベールが取り出した宝石箱は、ひと抱えもあった。この時点で、細工物の担当者であるスプリガン達が目を輝かせる。靴を担当するケットシーは顔を引き攣らせ、ドレス担当のアラクネ達は足を折りたたみながら色に注目した。
「こちらになります」
黄金と白金で緻密な彫刻が施された箱を開けば、内側は黒い布が覆っていた。ベールはするりと布を外し、中から大粒の原石をひとつ拾い上げる。半年前ならイヴのベッドに使えそうな箱は、7割ほど埋まっていた。すべて同じ宝石である。
「ベリル系?」
指で触れて判断したスプリガンへ、ベールは淡々と「変色性金緑石です」と告げた。産出した際は金色の縁が付いた緑の石だった。当たる光によって、色を変えるため「変色性」と冠した経緯がある。
現在は室内の照明に反射して、赤紫の美しい色で光っていた。
「現在は赤紫ですが、陽光では緑や青に見えることが多い石ですよね」
お飾りの宝石として希少価値があるため、スプリガンは大喜びだった。以前のリリスが百合や鈴蘭のようなイメージだったので、イヴも花に例えようと騒ぎ始める。その脇で、アラクネは考え込んだ。
「色が変わる……つまり、青緑でも赤紫でもおかしくないドレスの色を選ばないと」
「リリス様の靴は銀のグラデーションでしたが、今回は淡いピンク? いや、青紫もあるから……」
靴を担当するケットシーも悩み始めた。その脇で、ルシファーは大きく首を傾げて呟く。
「変色性って、なんだ?」
ある意味、種族を超えた婚活や親善の場になっていた。過去の因縁があったとしても、この祭りの間は一切の騒動を禁じられる。祭りで鉢合わせして話すうちに打ち解け、遺恨を水に流す事例もあるくらいだった。
「今回はイヴのお披露目がメインだな」
「メインはあくまで陛下の即位記念です」
アスタロトが復帰するまで、しっかり手綱を握るベールが言葉を返す。むすっと膨れたが、ルシファーは無駄な口論をしなかった。話を進める間に、イヴのお祭りにすり替える。そのために不要な衝突を避ける気だった。
ルシファーは過去の失敗を教訓に、今回の計画を立てている。その努力をきちんとした方向に向けてくれたら、どれだけ助かるか。すっかり見透かされた上、呆れられているなど、知る由もなかった。
「イヴのドレスやお飾りは、予算が組めるのか?」
「はい。こちらになります。宝石類はここ数年大量に産出していますので、どれでもお選びいただけます」
新しく産出した原石を記したファイルを差し出され、真剣に捲っていく。魔の森であるリリンが眠りに入ると、大きな宝石が産出するらしい。その話をリリスから聞いて、首を傾げた記憶が蘇る。なんでも、宝石は溢れ出した魔力が結晶化したものだとか。
考えを打ち切り、ぱらぱらと捲っていた手を止めた。大粒の宝石がひとつ、記されている。薄紫の原石の絵を見た瞬間、そこから指が動かなくなった。
「これだ、これにしよう」
「薄紫……赤寄りの色ですか」
ピンクではないが、赤に近い紫だ。透き通っており、内部で光を弾く照りのある石だった。黒髪と銀瞳の娘は、肌が白いこともあり寒色の印象が強い。緑や青も似合うが、ルシファーは「これこそイヴに似合う色」と感じた。
冷たい色より、暖かい色の方が相応しい。ルシファーの鶴の一声で、宝石は確定した。お飾りを同じ石で揃えるなら、ドレスの色も決まってくる。すぐに職人達に集合の指示が出され、宝石の現物が取り寄せられた。
「ルシファーが何を選んだのか、楽しみだわ」
イヴを抱いたリリスも同席し、集められた職人達も固唾を飲んで見守る。収納空間からベールが取り出した宝石箱は、ひと抱えもあった。この時点で、細工物の担当者であるスプリガン達が目を輝かせる。靴を担当するケットシーは顔を引き攣らせ、ドレス担当のアラクネ達は足を折りたたみながら色に注目した。
「こちらになります」
黄金と白金で緻密な彫刻が施された箱を開けば、内側は黒い布が覆っていた。ベールはするりと布を外し、中から大粒の原石をひとつ拾い上げる。半年前ならイヴのベッドに使えそうな箱は、7割ほど埋まっていた。すべて同じ宝石である。
「ベリル系?」
指で触れて判断したスプリガンへ、ベールは淡々と「変色性金緑石です」と告げた。産出した際は金色の縁が付いた緑の石だった。当たる光によって、色を変えるため「変色性」と冠した経緯がある。
現在は室内の照明に反射して、赤紫の美しい色で光っていた。
「現在は赤紫ですが、陽光では緑や青に見えることが多い石ですよね」
お飾りの宝石として希少価値があるため、スプリガンは大喜びだった。以前のリリスが百合や鈴蘭のようなイメージだったので、イヴも花に例えようと騒ぎ始める。その脇で、アラクネは考え込んだ。
「色が変わる……つまり、青緑でも赤紫でもおかしくないドレスの色を選ばないと」
「リリス様の靴は銀のグラデーションでしたが、今回は淡いピンク? いや、青紫もあるから……」
靴を担当するケットシーも悩み始めた。その脇で、ルシファーは大きく首を傾げて呟く。
「変色性って、なんだ?」
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