289 / 530
第17章 4歳の特別なお祝い
287.悩ましい種族分類作業
しおりを挟む
じっと見つめる。イヴは同じ銀の瞳で見つめ返してきた。愛娘のきらきらした眼差しに、ルシファーの真剣な表情が崩れる。
「ふわぁ、可愛い」
ぎゅっと抱き締める。にこにこしながら見守るリリスが「そうよね」と同意した。誰もここに異論はないが、今回は別問題である。ルキフェルは唸って考えて込んでしまうし、書類を睨むベールも眉を寄せた。
「ねえ、そうじゃなくて。種族わからないの?」
リリスがイヴを産んで4年目。魔族にとって我が子の4年目は大きな意味を持つ。生まれた赤子はどの種族でも大切に育てられるが、3年目までの生存率が低かった。うっかりミスや何らかの病気、ケガ、様々な要因で亡くなってしまう子も多い。
4年目を無事に迎えられた子は、新たに魔族としてお披露目される風習があった。日本人の知る七五三である。リリスは少し早く3歳でお披露目をしたが、それは即位記念祭に合わせた都合だった。今回はちょうどイヴの4歳記念と即位記念祭が重なるため、準備が必要なのだ。
種族の記載が今回の難関だった。リリスの時は「人族と魔族のハーフ」で通した。というのも、どの魔族の子か不明だったのだ。捨て子だと思われていたこともあり、あまり深く追求せず登録した。だが、イヴは状況が違う。
ルシファーとリリスの間に生まれたことは確実で、父親であるルシファーが単独で所有する「魔王種」に属するかどうかは、重要な懸案だった。ちなみに、リリスはその後「魔の森の子」と判明したため、「魔の森種」という新種でリリンと共に登録し直されている。
「リリスが魔の森種で、ルシファーが魔王種。どっちも特徴や詳細が不明なんだよね」
分類できずにルキフェルが悩む理由はここにあった。ルシファーは単独種族なので、彼と同じ特徴や能力を示してもらわないと分類できない。リリスも同じような状況にあり、魔の森に関する何らかの能力の提示が必要だった。
「イヴ、何かしてご覧」
「やぁ!」
そんな曖昧なお願いをされても、イヴだって困る。嫌だとそっぽを向いてしまった。イヴが示した特徴や能力と言えば、魔王の魔力の無効化と膨大な魔力である。とんでもない能力なのだが、ルシファーやリリスが持ち合わせない能力なので、分類には役立たなかった。
リリスの能力に、ルシファーの魔力との親和性があげられる。これは魔王ルシファーの魔法を受け止めて自分の魔法に変換可能だが、効力が無効になる類ではない。ルシファーに分類するより、リリスの方が近いのではないか? そんな意見も出始めていた。
イヴの種族問題は魔王城の上層部の頭を悩ませるが、思わぬ形で解決する。それは話し合う彼らの脇で起きた。
「まぁ! いってっちゃい!」
一人で何か騒ぐイヴを皆が振り返った瞬間、彼女は背中に白い翼を出した。飛んでいく鳥を見ながら手を振り、窓へ向かって歩いていく。その背中に白い一対の翼が生えていたのだ。それだけなら、両親ともに翼持ちなので問題ないが……頭の上に光る輪が浮かんでいた。
「リリスと同じだ!」
「魔の森種に分類で確定、と」
リリスが翼を出せば、同じように光る輪が現れる。この現象はルシファーにはなかった。ましてや魔王は以前黒い翼だったことも手伝い、ルキフェルは即座に分類を決める。
「もう少し調べてからの方が」
「そんな時間ないよ。早くしないと、こんなに溜まってるんだよ?」
同じ種族だったらいいのに、そんなルシファーの願いを込めた呟きは、大量の書類に押し潰された。イヴの身長と匹敵しそうな高さに積まれた書類は、すべて種族分類待ちの申請書だ。明らかにドラゴンの父親似のドラゴンであっても、魔王城からの裁定が必要になる。
種族名を名乗るということは、魔族にとって重大な出来事だった。リリスの妊娠騒動からベビーラッシュが続いたこと、人族による乱獲や攻撃がなかったことも重なり、魔族の4歳児が例年の数倍規模で増えている。
「うん、ごめん」
手早く処理するルキフェルの向かいに腰掛け、ルシファーも書類の分類を手伝い始めた。イヴは鳥を追いかけて窓辺から手を伸ばし「あらあら」と笑ったリリスに捕獲される。もうすぐ華やかなお祭りの時期が訪れようとしていた。
「ふわぁ、可愛い」
ぎゅっと抱き締める。にこにこしながら見守るリリスが「そうよね」と同意した。誰もここに異論はないが、今回は別問題である。ルキフェルは唸って考えて込んでしまうし、書類を睨むベールも眉を寄せた。
「ねえ、そうじゃなくて。種族わからないの?」
リリスがイヴを産んで4年目。魔族にとって我が子の4年目は大きな意味を持つ。生まれた赤子はどの種族でも大切に育てられるが、3年目までの生存率が低かった。うっかりミスや何らかの病気、ケガ、様々な要因で亡くなってしまう子も多い。
4年目を無事に迎えられた子は、新たに魔族としてお披露目される風習があった。日本人の知る七五三である。リリスは少し早く3歳でお披露目をしたが、それは即位記念祭に合わせた都合だった。今回はちょうどイヴの4歳記念と即位記念祭が重なるため、準備が必要なのだ。
種族の記載が今回の難関だった。リリスの時は「人族と魔族のハーフ」で通した。というのも、どの魔族の子か不明だったのだ。捨て子だと思われていたこともあり、あまり深く追求せず登録した。だが、イヴは状況が違う。
ルシファーとリリスの間に生まれたことは確実で、父親であるルシファーが単独で所有する「魔王種」に属するかどうかは、重要な懸案だった。ちなみに、リリスはその後「魔の森の子」と判明したため、「魔の森種」という新種でリリンと共に登録し直されている。
「リリスが魔の森種で、ルシファーが魔王種。どっちも特徴や詳細が不明なんだよね」
分類できずにルキフェルが悩む理由はここにあった。ルシファーは単独種族なので、彼と同じ特徴や能力を示してもらわないと分類できない。リリスも同じような状況にあり、魔の森に関する何らかの能力の提示が必要だった。
「イヴ、何かしてご覧」
「やぁ!」
そんな曖昧なお願いをされても、イヴだって困る。嫌だとそっぽを向いてしまった。イヴが示した特徴や能力と言えば、魔王の魔力の無効化と膨大な魔力である。とんでもない能力なのだが、ルシファーやリリスが持ち合わせない能力なので、分類には役立たなかった。
リリスの能力に、ルシファーの魔力との親和性があげられる。これは魔王ルシファーの魔法を受け止めて自分の魔法に変換可能だが、効力が無効になる類ではない。ルシファーに分類するより、リリスの方が近いのではないか? そんな意見も出始めていた。
イヴの種族問題は魔王城の上層部の頭を悩ませるが、思わぬ形で解決する。それは話し合う彼らの脇で起きた。
「まぁ! いってっちゃい!」
一人で何か騒ぐイヴを皆が振り返った瞬間、彼女は背中に白い翼を出した。飛んでいく鳥を見ながら手を振り、窓へ向かって歩いていく。その背中に白い一対の翼が生えていたのだ。それだけなら、両親ともに翼持ちなので問題ないが……頭の上に光る輪が浮かんでいた。
「リリスと同じだ!」
「魔の森種に分類で確定、と」
リリスが翼を出せば、同じように光る輪が現れる。この現象はルシファーにはなかった。ましてや魔王は以前黒い翼だったことも手伝い、ルキフェルは即座に分類を決める。
「もう少し調べてからの方が」
「そんな時間ないよ。早くしないと、こんなに溜まってるんだよ?」
同じ種族だったらいいのに、そんなルシファーの願いを込めた呟きは、大量の書類に押し潰された。イヴの身長と匹敵しそうな高さに積まれた書類は、すべて種族分類待ちの申請書だ。明らかにドラゴンの父親似のドラゴンであっても、魔王城からの裁定が必要になる。
種族名を名乗るということは、魔族にとって重大な出来事だった。リリスの妊娠騒動からベビーラッシュが続いたこと、人族による乱獲や攻撃がなかったことも重なり、魔族の4歳児が例年の数倍規模で増えている。
「うん、ごめん」
手早く処理するルキフェルの向かいに腰掛け、ルシファーも書類の分類を手伝い始めた。イヴは鳥を追いかけて窓辺から手を伸ばし「あらあら」と笑ったリリスに捕獲される。もうすぐ華やかなお祭りの時期が訪れようとしていた。
40
あなたにおすすめの小説
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです
珂里
ファンタジー
ある日、5歳の彩菜は突然神隠しに遭い異世界へ迷い込んでしまう。
そんな迷子の彩菜を助けてくれたのは王国の騎士団長だった。元の世界に帰れない彩菜を、子供のいない団長夫婦は自分の娘として育ててくれることに……。
日本のお父さんお母さん、会えなくて寂しいけれど、彩菜は優しい大人の人達に助けられて毎日元気に暮らしてます!
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。
桜城恋詠
ファンタジー
聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。
異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。
彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。
迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。
「絶対、誰にも渡さない」
「君を深く愛している」
「あなたは私の、最愛の娘よ」
公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。
そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?
命乞いをしたって、もう遅い。
あなたたちは絶対に、許さないんだから!
☆ ☆ ☆
★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。
こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。
※9/28 誤字修正
【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
魔族の住むゲヘナ国の幼女エウリュアレは、魔力もほぼゼロの無能な皇帝だった。だが彼女が持つ価値は、唯一無二のもの。故に強者が集まり、彼女を守り支える。揺らぐことのない玉座の上で、幼女は最弱でありながら一番愛される存在だった。
「私ね、皆を守りたいの」
幼い彼女の望みは優しく柔らかく、他国を含む世界を包んでいく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/20……完結
2022/02/14……小説家になろう ハイファンタジー日間 81位
2022/02/14……アルファポリスHOT 62位
2022/02/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる