315 / 530
第17章 4歳の特別なお祝い
313.懐かしい思い出がぽろり
しおりを挟む
「食べ過ぎる癖はどうしたら治るんだ?」
謁見は無事終わり、自室でイヴの腹を治す。食べすぎ注意と、言葉で伝えても同じことを繰り返すだろう。苦しい思いをしても、治った途端にお菓子に手を伸ばした。まったく懲りていない。まあ食べること自体を嫌いになられても困るのだが、量の調整をどう教えたものか。
毎回食べ過ぎて苦しそうな娘を見るのは嫌だし、食べ物を取り上げるのも可哀想だ。適量を見極めて食べられるようにするには、何が必要なのか考え込んだ。リリスの時はお腹がいっぱいになると、ぐいと食べ物を押しのけていたが。
目の前にあるだけ口に入れようとするイヴは、食べ物を制限すると大泣きする。そのくせ食べ過ぎて腹が痛くなり、これまた泣くのだ。自分が子どもの頃、こんな食べ方をした記憶がない。そのため対処方法が分からなかった。困惑する夫の横で、リリスはからりと笑う。
「いいのよ、痛い思いをすればそのうち覚えるわ」
大らかというか、大雑把というべきか。リリスはあまり気にしていない。妻の回答に気が楽になったルシファーも、明日の準備を始めた。明日は4歳のお祝いを受ける子ども達が保育園へ集まる。親も参加して大々的に我が子の成長を祝うのだ。当時3歳だったリリスも代表になったが、今回もイヴが代表で落ち着いた。
4歳のお祝いというが、実際のところ年齢は幅があった。10年に一度の即位記念祭で纏めて行うため、すでに9歳になった子もいる。逆に1~2歳だがお祝いしてしまおうと考える親もいた。統計を取ったことはないが、魔族はほぼ全員が通る道だった。2歳前後から10歳前後まで、好きな時期に参加する。
「明日はこれにしよう」
リリスも好きだった淡いピンクのワンピースを引っ張り出す。前に白いエプロンが付いていて、エプロンのフリルの先が濃桃色だった。この4歳のお披露目では、ドレスは事実上禁止である。幼子が大量に集まれば、想像がつくだろう。
初めて保育園に通った頃のリリスの再現である。髪を引っ張り、ドレスを破き、気に入らない子を突き飛ばす。魔獣の子も耳を掴まれて悲鳴を上げながら、噛みついて反撃することもあった。親がどんなに言い聞かせても、子どもは感情で動く。
そのため着飾っての参加は、シンプルな服装が歓迎された。ドレスが勿体ないなどの理由ではなく、危険だからだ。凶器になる装飾品、躓いて転ぶ可能性が高いドレスやマントも禁止。ひたすらに危険を排除した結果、シンプルなワンピースや半ズボンでの参加がスタンダードになった。
ちなみに、この暗黙のルールが明文化し施行されて以降、幼子の大きなケガはない。牙や爪のある子は、手袋をしたり噛まないよう工夫をして参加する。
「そういや……昔、ヤンの奴が他の魔獣を噛んで大騒ぎになったっけ」
思い出して呟くと、リリスが目を輝かせた。その事件があってから、魔獣の子は爪や牙にカバーをしたり、噛まないよう魔法陣を使うようになったのだ。そう説明したルシファーへ、リリスは当時の話をせがんだ。
別にヤンに口止めされていないし、問題ないだろう。単純にそう考えたルシファーは、話す順番を組み立てた。
「あの頃のヤンはまだ2歳前後で、可愛かったぞ。このくらいだったか」
可愛いと呼ばれるサイズの基準がおかしい。そもそも魔獣は2~3年で成獣のサイズになるので、外見は大人と同じだった。今ある立派なタテガミ部分が、やや小さかった程度だ。巨大なフェンリルの2歳は牛と変わらなかった。
ヤンはまだ名前がなく「次のセーレ」と呼ばれる。灰色の毛皮がもこもこした羊のようだった。当時は成長期で太っていたこともあり、魔熊と並んでも遜色ない体格を誇った。
「ヤンが噛んだのは、ハルピュイアの親だった」
寝物語にちょうどいい。リリスはベッドに横たわり、抱き寄せたイヴと耳を傾ける。彼女らに上掛けをふわりと被せたルシファーは、するりと隣に滑り込んだ。
謁見は無事終わり、自室でイヴの腹を治す。食べすぎ注意と、言葉で伝えても同じことを繰り返すだろう。苦しい思いをしても、治った途端にお菓子に手を伸ばした。まったく懲りていない。まあ食べること自体を嫌いになられても困るのだが、量の調整をどう教えたものか。
毎回食べ過ぎて苦しそうな娘を見るのは嫌だし、食べ物を取り上げるのも可哀想だ。適量を見極めて食べられるようにするには、何が必要なのか考え込んだ。リリスの時はお腹がいっぱいになると、ぐいと食べ物を押しのけていたが。
目の前にあるだけ口に入れようとするイヴは、食べ物を制限すると大泣きする。そのくせ食べ過ぎて腹が痛くなり、これまた泣くのだ。自分が子どもの頃、こんな食べ方をした記憶がない。そのため対処方法が分からなかった。困惑する夫の横で、リリスはからりと笑う。
「いいのよ、痛い思いをすればそのうち覚えるわ」
大らかというか、大雑把というべきか。リリスはあまり気にしていない。妻の回答に気が楽になったルシファーも、明日の準備を始めた。明日は4歳のお祝いを受ける子ども達が保育園へ集まる。親も参加して大々的に我が子の成長を祝うのだ。当時3歳だったリリスも代表になったが、今回もイヴが代表で落ち着いた。
4歳のお祝いというが、実際のところ年齢は幅があった。10年に一度の即位記念祭で纏めて行うため、すでに9歳になった子もいる。逆に1~2歳だがお祝いしてしまおうと考える親もいた。統計を取ったことはないが、魔族はほぼ全員が通る道だった。2歳前後から10歳前後まで、好きな時期に参加する。
「明日はこれにしよう」
リリスも好きだった淡いピンクのワンピースを引っ張り出す。前に白いエプロンが付いていて、エプロンのフリルの先が濃桃色だった。この4歳のお披露目では、ドレスは事実上禁止である。幼子が大量に集まれば、想像がつくだろう。
初めて保育園に通った頃のリリスの再現である。髪を引っ張り、ドレスを破き、気に入らない子を突き飛ばす。魔獣の子も耳を掴まれて悲鳴を上げながら、噛みついて反撃することもあった。親がどんなに言い聞かせても、子どもは感情で動く。
そのため着飾っての参加は、シンプルな服装が歓迎された。ドレスが勿体ないなどの理由ではなく、危険だからだ。凶器になる装飾品、躓いて転ぶ可能性が高いドレスやマントも禁止。ひたすらに危険を排除した結果、シンプルなワンピースや半ズボンでの参加がスタンダードになった。
ちなみに、この暗黙のルールが明文化し施行されて以降、幼子の大きなケガはない。牙や爪のある子は、手袋をしたり噛まないよう工夫をして参加する。
「そういや……昔、ヤンの奴が他の魔獣を噛んで大騒ぎになったっけ」
思い出して呟くと、リリスが目を輝かせた。その事件があってから、魔獣の子は爪や牙にカバーをしたり、噛まないよう魔法陣を使うようになったのだ。そう説明したルシファーへ、リリスは当時の話をせがんだ。
別にヤンに口止めされていないし、問題ないだろう。単純にそう考えたルシファーは、話す順番を組み立てた。
「あの頃のヤンはまだ2歳前後で、可愛かったぞ。このくらいだったか」
可愛いと呼ばれるサイズの基準がおかしい。そもそも魔獣は2~3年で成獣のサイズになるので、外見は大人と同じだった。今ある立派なタテガミ部分が、やや小さかった程度だ。巨大なフェンリルの2歳は牛と変わらなかった。
ヤンはまだ名前がなく「次のセーレ」と呼ばれる。灰色の毛皮がもこもこした羊のようだった。当時は成長期で太っていたこともあり、魔熊と並んでも遜色ない体格を誇った。
「ヤンが噛んだのは、ハルピュイアの親だった」
寝物語にちょうどいい。リリスはベッドに横たわり、抱き寄せたイヴと耳を傾ける。彼女らに上掛けをふわりと被せたルシファーは、するりと隣に滑り込んだ。
40
あなたにおすすめの小説
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる