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第30章 受け継がれる未来へ
522.迷惑をかけられるのも幸せ
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アスタロトと別れて戻った部屋は、派手に散らかっていた。空き巣でも入ったかと心配するレベルだが、慣れているルシファーは入り口付近のワンピースを拾った。続いて隣の上着、それから靴が片方だけ。
魔力で浮遊させながら、ひとつずつ拾っていく。やがて奥から愛する奥様が顔を見せた。
「お帰りなさい、ルシファー。散らかしたのは後で片付けてもらうわ」
ここで、後で片付けると言わないのがリリスだ。それを許すルシファーという土壌があって、初めて出てくる強烈な個性あった。散らかした自覚はあるが、片付けるのはルシファー。侍女や侍従には仕事があるから任せると可哀想と言い切る彼女は、夫に任せることは当たり前だと思っていた。
非常識という勿れ、こんなリリスの横暴を「可愛い、可愛い」と許したルシファーの自業自得なのだから。そして迷惑だと考えていない。
拾った服をすべて一度収納へ放り込み、選んだブラウスを手に唸るリリスに近づいた。
「どうしたんだ?」
「このブラウスがいいの。でもこれに似合う買ったスカートがないのよ」
言葉足らずは昔から。似合うスカートがないのではなく、買ったスカートが行方不明なのだ。僅かな響きや不自然な単語から読み解き、ルシファーは落ちている服を纏めて収納へ投げ込んだ。そこからスカートだけを指定して引っ張り出す。
「これはどうだ?」
「それじゃなくて、綺麗なミントの……あ、そっちよ!」
両手に取り出した数枚の中から、リリスが大喜びで指定したのは……お気に入りの一枚だった。一緒に視察へ向かった際に購入し、愛用している。数十枚のスカートがあっても、いつも同じスカートを選んで着用する傾向が強かった。
リリスに手渡し、着替える間にシャイターンを手招きした。
「おいで、カッコよく仕上げよう」
「パパみたいなのがいい」
「そうか? じゃあ、これがいいな」
収納空間が使える魔族は、驚くほど物持ちがいい。使ってすぐ保管し、また取り出す繰り返しがそうさせるのか。ベール達に攻撃されていた頃手に入れた、一枚のローブを引っ張り出した。
ルシファーは裸でも問題なかったが、さすがに見かねたアスタロトが差し入れたのだ。紺に近い紫色だった。深い色が白い肌に映える。それを手直しし、シャイターンに被せた。
「ありがとう!」
父親のローブ姿はカッコイイと認識するシャイターンは、大喜びでくるりと回った。
「どう? 似合う?」
くーんと鼻を鳴らすロアに「よかった」と抱き付く。褒められたらしい。それはいいのだが、ローブを用意したのはルシファーだ。父親に最初に見せるべきでは? と拗ねて肩を落とした。
「イヴは帰ってきた?」
「まだよ」
もうすぐ晩餐の時間だというのに、リリスはけろりと返した。
「すぐ探さないと!」
「危険があれば、森が知らせてくれるわ。あまり干渉しすぎると、嫌われちゃうわよ」
「え? 嫌う……」
呆然とする夫と腕を組み、リリスは息子に微笑み掛けた。
「私達は先に行くけど、どうする?」
「一緒に行く」
パパが気の毒だ。そんな顔でシャイターンは、ロアに抱き付いた。ロアも慣れたもので、嬉しそうに鼻を寄せてぺろりと頬を舐める。
仲睦まじい魔王の末っ子と番をよそに、ルシファーは引っ張られるまま晩餐が行われる広間へ向かった。
広間に用意された椅子に腰掛けたルシファーは、少し離れた場所に娘の姿を見つけた。両親の代行で出席するゴルティーの隣に、まるで家族のように座っている。
「許さん、絶対に許さんぞ」
ぎりりと歯軋りの音をさせて悔しがる夫に、リリスはワインを勧めた。
「厳しくすると、さらに燃え上がると聞いたわ。放っておきなさい」
反論しようとしたところへ、大公達が顔を見せる。ルシファーは言葉をぐっと飲み込んだ。
魔力で浮遊させながら、ひとつずつ拾っていく。やがて奥から愛する奥様が顔を見せた。
「お帰りなさい、ルシファー。散らかしたのは後で片付けてもらうわ」
ここで、後で片付けると言わないのがリリスだ。それを許すルシファーという土壌があって、初めて出てくる強烈な個性あった。散らかした自覚はあるが、片付けるのはルシファー。侍女や侍従には仕事があるから任せると可哀想と言い切る彼女は、夫に任せることは当たり前だと思っていた。
非常識という勿れ、こんなリリスの横暴を「可愛い、可愛い」と許したルシファーの自業自得なのだから。そして迷惑だと考えていない。
拾った服をすべて一度収納へ放り込み、選んだブラウスを手に唸るリリスに近づいた。
「どうしたんだ?」
「このブラウスがいいの。でもこれに似合う買ったスカートがないのよ」
言葉足らずは昔から。似合うスカートがないのではなく、買ったスカートが行方不明なのだ。僅かな響きや不自然な単語から読み解き、ルシファーは落ちている服を纏めて収納へ投げ込んだ。そこからスカートだけを指定して引っ張り出す。
「これはどうだ?」
「それじゃなくて、綺麗なミントの……あ、そっちよ!」
両手に取り出した数枚の中から、リリスが大喜びで指定したのは……お気に入りの一枚だった。一緒に視察へ向かった際に購入し、愛用している。数十枚のスカートがあっても、いつも同じスカートを選んで着用する傾向が強かった。
リリスに手渡し、着替える間にシャイターンを手招きした。
「おいで、カッコよく仕上げよう」
「パパみたいなのがいい」
「そうか? じゃあ、これがいいな」
収納空間が使える魔族は、驚くほど物持ちがいい。使ってすぐ保管し、また取り出す繰り返しがそうさせるのか。ベール達に攻撃されていた頃手に入れた、一枚のローブを引っ張り出した。
ルシファーは裸でも問題なかったが、さすがに見かねたアスタロトが差し入れたのだ。紺に近い紫色だった。深い色が白い肌に映える。それを手直しし、シャイターンに被せた。
「ありがとう!」
父親のローブ姿はカッコイイと認識するシャイターンは、大喜びでくるりと回った。
「どう? 似合う?」
くーんと鼻を鳴らすロアに「よかった」と抱き付く。褒められたらしい。それはいいのだが、ローブを用意したのはルシファーだ。父親に最初に見せるべきでは? と拗ねて肩を落とした。
「イヴは帰ってきた?」
「まだよ」
もうすぐ晩餐の時間だというのに、リリスはけろりと返した。
「すぐ探さないと!」
「危険があれば、森が知らせてくれるわ。あまり干渉しすぎると、嫌われちゃうわよ」
「え? 嫌う……」
呆然とする夫と腕を組み、リリスは息子に微笑み掛けた。
「私達は先に行くけど、どうする?」
「一緒に行く」
パパが気の毒だ。そんな顔でシャイターンは、ロアに抱き付いた。ロアも慣れたもので、嬉しそうに鼻を寄せてぺろりと頬を舐める。
仲睦まじい魔王の末っ子と番をよそに、ルシファーは引っ張られるまま晩餐が行われる広間へ向かった。
広間に用意された椅子に腰掛けたルシファーは、少し離れた場所に娘の姿を見つけた。両親の代行で出席するゴルティーの隣に、まるで家族のように座っている。
「許さん、絶対に許さんぞ」
ぎりりと歯軋りの音をさせて悔しがる夫に、リリスはワインを勧めた。
「厳しくすると、さらに燃え上がると聞いたわ。放っておきなさい」
反論しようとしたところへ、大公達が顔を見せる。ルシファーは言葉をぐっと飲み込んだ。
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