【完結】紅く染まる夜の静寂に ~吸血鬼はハンターに溺愛される~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第3章 守護者の見極めと嫉妬

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「どうした? シリル」

 腕を伸ばしてシリルを抱き寄せ、少し低い位置にある紅い瞳の上に接吻ける。不満そうな態度が嫉妬に見えて、嬉しくなって頬にもキスを贈った。

「……なんでも、ない」

「愛してるよ」

 囁いて唇を重ねれば、シリルがぎゅっと首に手を回した。身長差の所為で引き寄せられ、そのまま腰に手を回して抱き上げてやる。

 甘えた仕草は珍しく、常に2人でいると嫉妬さえ忘れてしまうのだと、今更ながらに思い知った。出会った当初のシリルの無表情の意味が、ようやく実感できる。長い時間を生きていると、徐々に感情が刺激されなくなり希薄になるのだろう。

「……これが、あのシリル・ヴィンクヴィストとは……到底信じられん」

 愕然とした様子のリスキアに首を傾げるライアンは、以前のシリルを知らない。だからリスキアの驚きは実感がなく、そんなに違ったのだろうか? と疑問が浮かぶ程度だった。

 首筋に唇の温もりを感じたライアンは、そっとシリルを抱え直した。

 触れやすいよう、頚動脈を晒してやれば、血を飲み下す微かな音が聞こえる。鼓動の音に似て安心できる音――本来自分の血を分け与えることは、死に繋がる恐怖を生む筈なのに、正反対の想いが込み上げていた。

 この血がシリルの体を生かしていると知っているから、吸血行為はキスと同じ愛情を伝える行為でしかない。

 ライアンの血を飲んで頬を桜色に染めるシリルを下ろしてやると、右手の爪で左手首を軽く切る。シリルの行為を予想していたライアンは、少し眉を顰めたものの無言で見守った。

「リスキア、傷を」

 差し出される左手をリスキアの右手の傷の上に置く。垂れた血が癒していく傷口は、瞬く間に消えてしまった。完全に傷が消えると、シリルは無造作に左手をライアンに差し出す。

「ライアン」

 恭しく接吻けて、表面の血を舐め取った。シリルの傷はリスキアのそれより早く消えてしまう。ライアンの体液が持つ治癒能力は、吸血したシリルにも遺憾なく発揮されていた。

「助かった」

 アイザックの礼を受け流し、ライアンは格闘の所為で荒れた室内を見回し、廊下を目で指し示す。

「奥でお茶でも飲もうぜ。ここは散らかり過ぎだ」

 同意した3人を伴って、部屋を後にした。
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