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第3章 守護者の見極めと嫉妬

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※性的表現があります。

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「……ん、ぁ……」

 シリルの唇の端を零れた唾液を舐め、甘く感じる自分に苦笑する。完全に捕らわれて、雁字搦がんじがらめになっている自覚はあった。逃げようなんて思わないくらい、嬉しいのだ。

 気位の高いシリルが、ここまで自分に執着してくれる――これ以上ない幸せだった。

 ふっと、甘い香りがした。ほんのりと香るそれは、リスキアから香ったモノと似ている気がして……。

「……ィ、ア……ン」

 何かに気を取られたライアンを察したのか、シリルが接吻けを強請る。力の入らない腕でライアンの頭をかき抱き、唇を触れさせた。すぐに互いの呼吸さえ奪う激しいキスに変わり、シリルは過ぎる快感に奥で脈打つライアンを締め上げる。

「……っ……ぁ、あ……」

 ずんと質量を増したライアンが、シリルの腰を思うままに突き上げた。細い腰が悩ましげに揺れる。

「――ぁ、やぁ、っ……はぁ――あン、ッ……」

 反り返った背を支えながら、シリルへの熱い想いを吐き出した。思うまま打ち付けた奥へ流し込まれた精を最後まで搾り取り、シリルはぐったりとライアンの上に崩れ落ちる。

 まだ身体の奥で脈打つライアンの熱に浮かされながら、シリルは意識を手放した。

 清潔なシーツに包まるシリルを抱き締めたまま、窓の外に目をやる。そこで初めて、今夜が満月だと気づいた。

 シリルと違い、ライアンの能力は月の満ち欠けに影響されない。だから、特に気にしていなかったのだが……ふと目に飛び込んできた円い月は青白い光を放っていた。

「シリル」

 抱き締めた肌は、情事の痕を色濃く残している。まだ少年と呼ぶに相応しい細い体は、誘うときの妖艶さが信じられないほどだった。

 ほんのりと甘い香りが鼻をつく。普段は嗅いだ覚えのない香りは、昼間にリスキアから感じたものと同じ気がした。そう、さっきの情事の最中にも香っていた……?

「……なんだか、甘い香りがする」

 呟けば、シリルが物憂げに瞼を押し上げる。見えなくなっていた紅い輝きがライアンの心を捕らえ、魅了し、束縛した。

「同族と接触したからだろう。血が近ければ近いほど、濃ければ濃いほど、香りは際立つ」

「そうなんだ?」

「ああ、一族が集まれば……大量の血を必要とする。餌を引き寄せる為の疑似餌のようなモノだと思うが、リスキアはほぼ純血種に近い。だから甘い芳香が漂うんだ」

 血だけなら純血種と同じだ。混血の証明であった不死の民の血は、もうリスキアの中に少しも流れていない筈だった。しかし、両親ともに純血種の生まれであるシリルと違い、どこまで血を分離しても彼は純血種にはなれない。

「オレとアイザックは何もないのに?」

「種族が違う。お前達には違う能力があるのだから、同じ現象が起きる訳がない……」

 アイザックの名が出た瞬間に不機嫌そうに鼻に皺を寄せた恋人の、あまりに分かりやすい焼きもちに顔が綻んだ。こんなに可愛い一面があるなんて、たまには別の種族や人間と接触するのもいい。ライアンは嬉しさに、腕へ力を込めた。
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