【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第二十一章 寿命という概念

第96話 隠し続けたズレ(1)

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 宿で朝食を終えて外へ出ると、祭りで賑わう通りは多くの人が行き交っていた。夜に使う仮面は紐を通して腰や後頭部に結えると楽だと教わった。宿の主人の言う通り、祭りに向かう人々はあちこちに仮面を下げている。

 収納魔法があるので持ち歩く必要はないが、周囲に溶け込む目的と、祭りの雰囲気を楽しむために腰紐に結えた。歩くたびにからからと乾いた音を立てる。

 この音も、祭りの間の風物詩だろう。

「この国が元通りになってよかった」

 ジルが壊したあとで戻したのは見ていたが、こうして祭りが出来るまで人の心も癒えたのだと安心した。美しい街並みを見たいのは事実だが、厳しい現実を突きつけられそうで怖かったのも本音だ。

 腕を組んだジルが「ちゃんと直ってただろ?」とどこか得意げに囁く。くすくす笑いながら頷いた。きっと過去の宮廷魔術師時代のルリアージェだったら「戻せばいいわけじゃない」と反発しただろう。しかし、こうして付き合いが長くなるほどに、魔性の考え方や嘘のない言動の心地よさが身に沁みる。

 人と違い他者を騙して貶め、謀略によって地位を築くような魔性は少ない。魔王の寵愛を奪い合う上級魔性の間ではあるかもしれないが、たいていの魔性は己の実力や容姿を誇り、自信を持っていた。だから正々堂々と相手を叩きのめす。その在り様は潔くて、ルリアージェは居心地がよかった。

「街が崩れた時はどうなるかと思ったが」

 にこにこと機嫌よく歩くルリアージェは気づかない。何かもの言いたげな顔をしたジル、目を逸らしたライラの様子に。ジルの配下である3人は口を引き結んで、視線を合わせないようにしていた。

「王族は無事だったんだろう? 腕を失ったライオット王子殿下は、まだ王太子殿下の補佐をされているのか」

 思い浮かんだ疑問をそのまま声に乗せたルリアージェの耳に、驚きの言葉が聞こえた。

「そこの方、外国の方だろ。今の王子殿下にライオット様というお名前はないぞ」

「リア、行こう」

 焦った様子で遮ろうとするジルだが、ルリアージェは首を横に振った。

「話を聞きたい」

 祭りの喧騒を味わうため、家の外にベンチを置いて楽しんでいる。そんな風情の年寄りは、親切そうに説明を続けた。

「ライオット様というお名前は、2代前の宰相様じゃな。第二王子殿下で優秀な方だったと聞く。なぜか妻を娶らず、王族も自ら除籍を申し出た稀有な方だと親に聞いたものだ」

「……庶民出身の妃のお子か?」

 衝撃から立ち直れないルリアージェが、震える声で確認する。
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