【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第二十一章 寿命という概念

第96話 隠し続けたズレ(3)

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「ジル」

 もう一度名を呼ばれ、ジルが唇を噛む。それでも顔を上げないので、ルリアージェは数歩近づいた。反射的に下がろうとして踏みとどまる男の顎に手を触れ、強引に顔を上げさせる。身長差で顔を覗いたルリアージェがにっこり笑った。

「私は怒ってない。ただ説明して欲しいだけだ」

「……でも、あたくし達は黙ってたのよ」

「そうですわ、知った後も黙ってましたもの」

 罪悪感から声を詰まらせるライラとパウリーネに、ルリアージェは指摘した。

「だが嘘をついて誘導はしなかった。黙っていただけだろう?」

 目を見開いたライラが「でも」と呟く。自分達でも悪いことをしたと反省しているのに、これ以上責め立てる気はなかった。だからルリアージェは軽く聞こえるよう明るく言い放つ。

「ついでだ、他にも隠していることがあれば言ってしまえ」

 茶化した言い方だが、 今度は誰も目を逸らさない。もう隠し事はないと示すような態度に、ルリアージェが昼食の提案でもしようとしたとき、ジルがルリアージェの前に膝をついた。

「どうした?」

「……オレはリアに隠し事がまだある」

 続きを待つルリアージェは無言で先を促す。しかしジルは何も言えない。ルリアージェに嘘はつけないし、この件は言いたくない。隠し事があるかと聞かれれば頷くしかなかった。それでも隠し事の中身を聞かれないなら誤魔化したいのが本音だ。

 ルリアージェの姿を焼き付けるように見つめるジルの覚悟に気づいて、魔性達は目を逸らした。泣き出しそうなパウリーネと、痛みを耐えるように眉を寄せたリシュア。ライラも唇を噛み締める。

 彼らの様子に、よほどの話だとルリアージェが理解するのに、さほど 時間は要らなかった。この場で気付かないフリをするのが賢い選択かも知れない。迷うルリアージェが、じっと見上げるジルへ何か言おうとした瞬間、先に動いたのはリオネルだった。

「私がお伝えしましょう。自覚はないでしょうが、リア様はジル様と出会ってから歳を取っておられません」

「どういう、意味だ?」

 時間の経過が鈍くなっていたから、歳を取らないという話か。ジルの城で時間の流れが違ったならば、その流れに飲み込まれた自分の身体が、人の世の年齢をズレるのは理解できる。しかし彼の口調は違う意味にとれた。

「正確にいうなら……」

「いい、リオネル。オレがきちんと説明するべきだ」

 遮ったジルがルリアージェの手を取って、その甲にキスを落とす。それから手を返して、手のひらに頬を押し当てた。

「リアがオレを遠ざけるとしても、これはオレの罪であり罰だ」
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