【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
358 / 386
第二十一章 寿命という概念

第98話 許されるならずっと

しおりを挟む
 これが答えだ。世界を滅ぼす魔性でも、翼ある一族の末裔だろうと、ジルはジルだった。何も本質は変わらない。彼の能力や顔を好きになったわけじゃない。

 ジルがルリアージェをそのまま受け入れるように、自分も受け入れればいいだけ。何も特別なことじゃなかった。

 頬に手を滑らせて、ジルの胸に飛び込んだ。反射的に受け止めた彼の腕が背に回る。抱きしめられる状態で、自然と表情が和らいだ。

「ジルは一緒にいてくれるんだろう?」

「もちろんだ」

 即答した声に迷いがないのが、本当に嬉しくて幸せで頬が緩んだ。だらしない顔をしている自覚があるから、ジルの胸元から顔をあげられない。

「よかったわ」

 ライラがほっとした声で呟く。もし彼女がジルを拒否したら、一時的に預かるつもりでいた。気持ちが落ち着けば、またジルへの恋心で丸く収まるだろうと。長い寿命があるからこそ、彼や彼女は時間経過が心にとって最高の薬だと知っている。どんなに憎んだ相手でも、数十年も経てば許せることを経験で理解していた。

「ライラ、パウリーネ、リシュア、リオネル」

 安堵の表情を浮かべる魔性達を呼んで、ルリアージェはやっと顔をあげる。真っ赤な耳や首筋、頬が照れている事実を雄弁に告げていた。しかし誰も指摘せず、次の言葉を待つ。

「私が歳を取らない不老長寿ならば、今後も迷惑をかけるがよろしく頼む」

「「「はい」」」

「もちろんよ」

 真っ直ぐ目を見て言い切ったルリアージェは、肩から力を抜いて振り返る。抱きついた男の顔を覗き込み、自分だけを写す紫の瞳に微笑みを向けた。

「ジル、責任を取ってもらうぞ。最後まで隣にいろ。誰より近い位置で、ずっと……」

「最高の褒美だよ、リア。絶対に離れない」

 言い切ったジルが額に、頬に口付ける。反射的に目を閉じた瞼に触れて、最後に唇を重ねた。

「ふ……ぅ、んっ……」

 長いキスを終えたルリアージェに「可愛い」と囁いたジルが、彼女の顔を見せないよう抱きしめて隠す。目をそらしていた3人と、パウリーネに目元を手で覆われて暴れるライラに苦笑した。

 気が利く配下に「もういいぞ」と声をかけると、腕の中でルリアージェがもがいた。

「キ、キスするなんて」

「やだ、せっかく知らないふりするつもりだったのに」

 くすくす笑うライラに指摘され、ルリアージェは真っ赤になって崩れ落ちた。両手で顔を覆って膝から崩れた彼女を、ジルがひょいっと抱き上げる。お姫様抱っこ状態に、さらに恥ずかしくて顔を出せなくなった。

「少し休むといいよ」

 優しく声をかけられ、頷くしかなかった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。

八神 凪
ファンタジー
久我和人、35歳。  彼は凶悪事件に巻き込まれた家族の復讐のために10年の月日をそれだけに費やし、目標が達成されるが同時に命を失うこととなる。  しかし、その生きざまに興味を持った別の世界の神が和人の魂を拾い上げて告げる。    ――君を僕の世界に送りたい。そしてその生きざまで僕を楽しませてくれないか、と。  その他色々な取引を経て、和人は二度目の生を異世界で受けることになるのだが……

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!

音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ 生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界 ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生 一緒に死んだマヤは王女アイルに転生 「また一緒だねミキちゃん♡」 ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差 アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

処理中です...