【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
367 / 386
第二十二章 世界の色が変わる瞬間

第102話 個性という暴走(1)

しおりを挟む
 雪で作られた大きな城は見事だった。魔術で灯された水晶が色とりどりに雪像を彩り、見応えのある光景に ルリアージェは満足して黒い城へ戻る。

「もう少ししたらサークレラの祭りがあって、次の夏はタイカの海祭りか」

 有名な祭りをほぼ網羅すると指折り数えるジルへ、ルリアージェは頷いた。

 ジルの居城は、気づけば帰る場所になっている。リオネルやリシュア、パウリーネはもちろん、ライラにもそう認識されていた。いつの間にか個人の部屋が増やされ、城はひと回り大きくなっている。それでも漆黒の空間が狭く感じないのは、外の空間ごと広げたためだ。

「あとで、みんなの部屋を見せてもらえるか?」

 それぞれ個性的な魔性ばかりなので、きっと部屋も個性的だろう。目を輝かせるルリアージェの願いを、彼らは快諾した。断る理由がない。

「夏祭りが終わったら、部屋巡りね。ドラゴンはその後かしら」

 くすくす笑うライラが呟けば、ジルが一瞬考え込んだ。すぐに何もなかった風を装うが、気づいたルリアージェが答えを待つ。無言の圧力に負けたジルは、苦笑いして白状した。

「いや、部屋は作ったが何も入ってない。寝る必要もないから、物置と同じだ」

「あたくしは植物をたくさん植えたわ」

 少女の私室が植物園という暴露に、大地の精霊王の娘だからとルリアージェは納得する。ジルが物置扱いというのも、不思議と似合う気がした。鉢植えを置いたのではなく、本当に地面を作って床から生やしたかも知れない。それはそれで興味があった。

「3人はどうだ?」

 話を向けると、リシュアは笑顔で「サークレラで暮らしていた部屋をそっくり移設しました」と言う。移設と言うからには、文字通り持ってきたのだろう。国王の私室を奪われたサークレラ王城は、どうなったのか。聞きたいような、聞いてはいけないような。複雑な心持ちになる。

「私は普通ですわよ。部屋を全て柔らかなベッドで埋め尽くしてますわ」

 それは普通じゃない。パウリーネの常識のなさがバレた瞬間だった。まあ、休む部屋なら居心地の良さだけ追求すればいいので、あながち見当違いでもない。

「私も別段変わったものは無いと思いますよ」

 笑っているのに黒い感情が滲むリオネルに、なぜか部屋を見たらいけない気にさせられた。

「この際ですから、家具を入れて人族のような部屋を作ってみましょうか。リア様にお見せするのですから、競っても面白いでしょう」

 リシュアの提案に、ジルが手を叩いた。

「それだ! 夏祭りが終わるまでに死蔵品の家具を並べて部屋を作るぞ!」

「居心地のいい部屋を作ればいいのね」

 人族の部屋にある物を思い浮かべながら暴走する彼らを、ルリアージェは微笑んで見守った。他人に迷惑をかけずに遊ぶなら、多少非常識でも構わないだろう、と。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

転生勇者の異世界見聞録

yahimoti
ファンタジー
ゲームのメインストーリーが終わったエンドロール後の異世界に転生したのは定年後の会社員。体は子供だけど勇者としての転生特典のチートがある。まあ、わしなりにこの剣と魔法の異世界を楽しむのじゃ。1000年前の勇者がパーティメンバーを全員嫁さんにしていた?何をしとるんじゃ勇者は。わしゃ知らんぞ。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

処理中です...