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46.正しく誤解しろ(SIDEセティ)
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*****SIDE セティ
こんな心の声がイシスに聞こえでもしたら、穢れてしまう。怖がって首に手を回すイシスの耳を、両手で塞いだ。同時に結界でイシスを守る。
悲鳴もあげないのか、この子は。何もかも諦めて受け止めてきた。身体以上に心を傷つけられた哀れなイシスに頬を寄せる。心の中さえ、痛い怖いと泣くことが出来ないのだ。
「愚か者がっ! 我が花嫁を何と心得る!」
叱咤の声に怨嗟が滲む。黒い靄となって男の身を包んだ。紫の瞳が赤に偏り、怒りに燃えた。大司教の指示で捕らえられ、どこかへ運ばれる男の悲鳴が聞こえた。それも結界とこの手に阻まれてイシスには届かない。
右手を持ち上げ、見せつけるように小指から握った。表面上の懇願と裏腹に、心の中でイシスを罵る者の心臓を握り潰す。魔物のような耳汚い苦痛を滲ませた悲鳴が途絶え、ぐちゃりと水音が周囲を怯えさせた。
畏怖や嫌悪の眼差しは慣れている。大司教を含め、神官達を睥睨して立ち上がった。両手で抱いたイシスは、嫌われたくないと泣く。その祈りに応えるように頬に口付けた。
「そなたの祈りはすべて聞き届けよう」
この子は価値がある。だから手を出すな。神殿への牽制を込めたこの言葉を、彼らが都合よく聞き間違えるよう……オレは意味ありげな言葉を選んだ。
意図を汲んで、正しく誤解しろ。
大司教はこの国の王族だ。王位継承争いに敗れた王兄だが、正妃の息子ではない。この男の心に渦巻く野望に火をつけてやろう。
踊れ、愚か者どもよ。破壊神として同族に恐れられ、忌み嫌われた邪神の力を見るがいい。仕掛けてこい――そして罪を償うために、派手に滅びて見せしめとなれ。
踵で床を叩き、転移する。引き払った宿に戻ることはなく、裏路地で赤毛青目に切り替えた。イシスも同じように幻影を被せ、手を繋いで歩く。
「今日の仕事は終わりだから、一緒に甘い物を探そう」
買いに行こうと言えば、この子は与えられるものを受け取るばかり。探すと表現を変えることで、さまざまな物に興味を持たせようと思った。思惑は当たったようで、イシスは目を輝かせる。
「甘いの?」
「そうだ。どれが美味しいか探そう」
「うん!」
先程の恐怖を忘れたように、イシスは無邪気に手を引っ張る。繋いだ左手と逆に、まだ右手に絵本を掴んでいた。これはいい目印になるな。敢えて片付けずに放置することに決め、イシスに従って屋台をいくつか冷やかす。種類を決めずに買い込み、広場の休憩所で机に広げた。
「これ、うーってなる」
顔を顰めて酸っぱいを表現するイシスに、どれと口を開ける。
「あーん?」
頷くと、酸っぱいと評した果物を口に入れる。心配そうな顔だが、イシスが言うほど酸っぱいと思わなかった。子供の舌は敏感だからか。続いてしょっぱい串焼きを齧り、甘いジュースを飲む。最後に辛い揚げ菓子を齧り、イシスが泣き出した。
口が痛いと泣くため、キスで治療する。しっかり舌を絡め、喉の手前まで唾液を流して治療した。周囲はまだ人が少ない時間帯で、あまり注目された様子はない。だが、さりげなく視線が注がれていた。
思惑通り動き出した神殿と王族を心の中で嘲笑い、オレは涙目のイシスに甘い飴を含ませた。
こんな心の声がイシスに聞こえでもしたら、穢れてしまう。怖がって首に手を回すイシスの耳を、両手で塞いだ。同時に結界でイシスを守る。
悲鳴もあげないのか、この子は。何もかも諦めて受け止めてきた。身体以上に心を傷つけられた哀れなイシスに頬を寄せる。心の中さえ、痛い怖いと泣くことが出来ないのだ。
「愚か者がっ! 我が花嫁を何と心得る!」
叱咤の声に怨嗟が滲む。黒い靄となって男の身を包んだ。紫の瞳が赤に偏り、怒りに燃えた。大司教の指示で捕らえられ、どこかへ運ばれる男の悲鳴が聞こえた。それも結界とこの手に阻まれてイシスには届かない。
右手を持ち上げ、見せつけるように小指から握った。表面上の懇願と裏腹に、心の中でイシスを罵る者の心臓を握り潰す。魔物のような耳汚い苦痛を滲ませた悲鳴が途絶え、ぐちゃりと水音が周囲を怯えさせた。
畏怖や嫌悪の眼差しは慣れている。大司教を含め、神官達を睥睨して立ち上がった。両手で抱いたイシスは、嫌われたくないと泣く。その祈りに応えるように頬に口付けた。
「そなたの祈りはすべて聞き届けよう」
この子は価値がある。だから手を出すな。神殿への牽制を込めたこの言葉を、彼らが都合よく聞き間違えるよう……オレは意味ありげな言葉を選んだ。
意図を汲んで、正しく誤解しろ。
大司教はこの国の王族だ。王位継承争いに敗れた王兄だが、正妃の息子ではない。この男の心に渦巻く野望に火をつけてやろう。
踊れ、愚か者どもよ。破壊神として同族に恐れられ、忌み嫌われた邪神の力を見るがいい。仕掛けてこい――そして罪を償うために、派手に滅びて見せしめとなれ。
踵で床を叩き、転移する。引き払った宿に戻ることはなく、裏路地で赤毛青目に切り替えた。イシスも同じように幻影を被せ、手を繋いで歩く。
「今日の仕事は終わりだから、一緒に甘い物を探そう」
買いに行こうと言えば、この子は与えられるものを受け取るばかり。探すと表現を変えることで、さまざまな物に興味を持たせようと思った。思惑は当たったようで、イシスは目を輝かせる。
「甘いの?」
「そうだ。どれが美味しいか探そう」
「うん!」
先程の恐怖を忘れたように、イシスは無邪気に手を引っ張る。繋いだ左手と逆に、まだ右手に絵本を掴んでいた。これはいい目印になるな。敢えて片付けずに放置することに決め、イシスに従って屋台をいくつか冷やかす。種類を決めずに買い込み、広場の休憩所で机に広げた。
「これ、うーってなる」
顔を顰めて酸っぱいを表現するイシスに、どれと口を開ける。
「あーん?」
頷くと、酸っぱいと評した果物を口に入れる。心配そうな顔だが、イシスが言うほど酸っぱいと思わなかった。子供の舌は敏感だからか。続いてしょっぱい串焼きを齧り、甘いジュースを飲む。最後に辛い揚げ菓子を齧り、イシスが泣き出した。
口が痛いと泣くため、キスで治療する。しっかり舌を絡め、喉の手前まで唾液を流して治療した。周囲はまだ人が少ない時間帯で、あまり注目された様子はない。だが、さりげなく視線が注がれていた。
思惑通り動き出した神殿と王族を心の中で嘲笑い、オレは涙目のイシスに甘い飴を含ませた。
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