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108.初めての大きな水たまり
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フェルの背中に乗って移動した。びゅんびゅん景色が飛んでくの、早いんだ。木の間を走ってるのに全然ぶつからないの、偉いよね。僕だったら顔をぶつけてるもん。その前に、こんなに早く走れないかも。手を叩いて喜ぶ僕のお腹で、トムは小さく鳴きながら景色を見ていた。
袋から顔を出すトムが落ちないように、慌てて手で押さえる。そんな僕をセティがしっかり後ろから抱っこしてくれた。セティがいたら落ちないって知ってるから、僕は右や左、上も全部に目を向ける。途中でフェルが止まって休憩したけど、僕のための休憩なんだって。
フェルは凄い狼だから、ずっと走ってても疲れない。セティの説明に僕はぽかんと口を開けた。驚き過ぎて声が出て来ないよ。フェルは神様の眷族だから強いと聞いたけど、眷族って何だろう。
「眷族は、そうだな……オレの手下だ」
手下、ボスがセティになるの? 狼の群れのボスがフェルで、その上にセティがいる形みたい。いっぱいボスがいると狼は混乱しそうだね。でも頭のいい動物だから、平気なんだって。僕はあまり物を知らないから、きっと狼にはなれないと思う。
「どうした?」
「狼じゃなくても、僕も手下になれる?」
「手下じゃなくて、お嫁さんになるんだろ」
笑いながら直されちゃった。そっか、僕はお嫁さんだから狼になれなくても、手下にならなくてもいいのか。ほっとしながら、セティに抱き着いたら後ろからフェルも乗っかってきた。遊んでると思ったのかな。表面は硬い毛があるけど、中に手を入れるとふかふかの毛皮だ。
あったかい。僕、洞窟を出てからずっとあったかいままだ。少し怖い思いをしても、すぐにセティが助けてくれるし、ゲリュオンもトムもみんな優しい。お父さんとお母さんも出来た。僕、洞窟を出て本当に良かった。
にこにこしながらセティに抱き着くと、どうしてか変な顔をしてた。
「セティ、お腹痛いの?」
「……少し複雑なだけ。イシスはオレの伴侶なんだけど、って思った」
難しくてよくわかんない。でもセティが唇を尖らせてたので、背伸びしてキスしてみた。途端に嬉しそうに笑うから、大成功だった。僕がお呪いのキスすると、こんなに喜んでくれるんだね。今夜もお呪いの時にキスしてみよう。わくわくする。
「さて出発するか」
休憩は終わり。そう言って僕を抱っこしたセティは、またフェルの背中に跨った。勢いよく走るフェルの背中がぐわんと大きく動く。鍛えた筋肉が動くの、ゲリュオンみたい。大きく動く背中に、えいっと抱き着いてみる。
トムが騒いだので、潰してごめんねをした。お腹にいるから潰れちゃうね。頬ずりして満足したトムを袋にしまい、袋を背中に向けた。これならセティも後ろにいて安心だから、もう一度フェルに抱き着く。お日様みたいな匂いがする。あったかくて柔らかくて、少し鼻がむずむずした。くちゅんとくしゃみをしたら、笑ったセティに起こされちゃった。
お腹にトムの袋を戻し、セティが指さす方角を見ると……大きな水たまりがあった。すっごく大きくて、お父さんがいっぱいいても足りないくらい。右も左も全部水たまりだ!
「おっきい!!」
「海だ。初めてだろ、寄っていくぞ」
表面が揺れる水たまりの名前は「海」だった。言葉では知ってるよ、絵本に出てきた。でも絵本に描いた絵だと小さく見えたし、こんな臭いがするって分からない。なんだろう、変な臭いがする。
「これ、何の臭い?」
「海の潮の香りだ」
塩、しょっぱい白い粉。あれと臭いが違う気がするけど。首をかしげる僕に、楽しそうなセティが手を引く。離れた場所で座って動かなくなったフェルを置いて、僕達は海に近づいた。
袋から顔を出すトムが落ちないように、慌てて手で押さえる。そんな僕をセティがしっかり後ろから抱っこしてくれた。セティがいたら落ちないって知ってるから、僕は右や左、上も全部に目を向ける。途中でフェルが止まって休憩したけど、僕のための休憩なんだって。
フェルは凄い狼だから、ずっと走ってても疲れない。セティの説明に僕はぽかんと口を開けた。驚き過ぎて声が出て来ないよ。フェルは神様の眷族だから強いと聞いたけど、眷族って何だろう。
「眷族は、そうだな……オレの手下だ」
手下、ボスがセティになるの? 狼の群れのボスがフェルで、その上にセティがいる形みたい。いっぱいボスがいると狼は混乱しそうだね。でも頭のいい動物だから、平気なんだって。僕はあまり物を知らないから、きっと狼にはなれないと思う。
「どうした?」
「狼じゃなくても、僕も手下になれる?」
「手下じゃなくて、お嫁さんになるんだろ」
笑いながら直されちゃった。そっか、僕はお嫁さんだから狼になれなくても、手下にならなくてもいいのか。ほっとしながら、セティに抱き着いたら後ろからフェルも乗っかってきた。遊んでると思ったのかな。表面は硬い毛があるけど、中に手を入れるとふかふかの毛皮だ。
あったかい。僕、洞窟を出てからずっとあったかいままだ。少し怖い思いをしても、すぐにセティが助けてくれるし、ゲリュオンもトムもみんな優しい。お父さんとお母さんも出来た。僕、洞窟を出て本当に良かった。
にこにこしながらセティに抱き着くと、どうしてか変な顔をしてた。
「セティ、お腹痛いの?」
「……少し複雑なだけ。イシスはオレの伴侶なんだけど、って思った」
難しくてよくわかんない。でもセティが唇を尖らせてたので、背伸びしてキスしてみた。途端に嬉しそうに笑うから、大成功だった。僕がお呪いのキスすると、こんなに喜んでくれるんだね。今夜もお呪いの時にキスしてみよう。わくわくする。
「さて出発するか」
休憩は終わり。そう言って僕を抱っこしたセティは、またフェルの背中に跨った。勢いよく走るフェルの背中がぐわんと大きく動く。鍛えた筋肉が動くの、ゲリュオンみたい。大きく動く背中に、えいっと抱き着いてみる。
トムが騒いだので、潰してごめんねをした。お腹にいるから潰れちゃうね。頬ずりして満足したトムを袋にしまい、袋を背中に向けた。これならセティも後ろにいて安心だから、もう一度フェルに抱き着く。お日様みたいな匂いがする。あったかくて柔らかくて、少し鼻がむずむずした。くちゅんとくしゃみをしたら、笑ったセティに起こされちゃった。
お腹にトムの袋を戻し、セティが指さす方角を見ると……大きな水たまりがあった。すっごく大きくて、お父さんがいっぱいいても足りないくらい。右も左も全部水たまりだ!
「おっきい!!」
「海だ。初めてだろ、寄っていくぞ」
表面が揺れる水たまりの名前は「海」だった。言葉では知ってるよ、絵本に出てきた。でも絵本に描いた絵だと小さく見えたし、こんな臭いがするって分からない。なんだろう、変な臭いがする。
「これ、何の臭い?」
「海の潮の香りだ」
塩、しょっぱい白い粉。あれと臭いが違う気がするけど。首をかしげる僕に、楽しそうなセティが手を引く。離れた場所で座って動かなくなったフェルを置いて、僕達は海に近づいた。
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