【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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118.僕はセティの物

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 苦しくて咳き込んじゃう。そう思ったのに、全然苦しくない。ちゃんと息をして、何もなく吐き出す。なんで?! どうして! 不思議過ぎて、セティを振り返った。

 そこにいたのはタイフォン様。神様だった。いつもと同じ黒髪のセティなのに、当たり前みたいに「神様だ」と感じる。ここにいるのは人間のフリしてるセティじゃなくて、破壊神タイフォン様……。

は?」

「一緒だよ」

 同じ人ってこと? でもすぐに違いがわかった。言われたのは「僕も一緒」という意味。違う、いつもの僕じゃなかった。長い黒髪がふわふわと水の中を漂う。手足もいつもの僕と変わらないのに、「違う」ってだけわかった。どことか言えないけど、僕は僕なのに、今までの僕じゃない。

「僕、る」

「大丈夫、だ」

 そう笑うタイフォン様に抱き締められて、僕は安心した。大丈夫、何かが違ってても僕は同じ僕だから。僕が違う時は、セティも違う。同じで平気だ。

「お母さん達も、分かってくれるかな」

「もちろんさ」

 そのまま僕達は水の中で過ごした。明るい水面が暗くなって、きらきら輝く。そのあと赤くなったり眩しくなったりを繰り返して……僕はようやく外へ出た。目に見える風景は同じで、何もなかったみたいにガイアがトムを抱っこしてる。でもすごく時間が経ったと思うの。

 抱っこした僕を降ろすタイフォン神様を振り返ると、いつものセティだった。安心する。僕のセティがどこかに行ったかと思ったけど、いつもと同じ。長い黒髪からぽたりと水の雫が落ちるのを、手で絞って笑った。

「行ってこい。トムのお母さんなんだろ」

「おいで、トム」

 みゃぁ、鳴いたトムが目を開いて僕に飛びついた。裸だからかな、爪を立てないの偉いよね。トムが腕の中で頬ずりするけど、折角のふわふわの毛皮が濡れちゃうよ。でもトムは気にしないで、僕の手を舐めたり腕に頬ずりしたりと忙しかった。抱っこしてるトム、少し小さくなった?

「トム、縮んじゃった」

「ふふ……確かにタイフォンの言う通り、面白い考え方をする子だね」

 ガイアが笑う。優しくて、僕に意地悪しない顔で頭を撫でてくれた。にっこり笑ったら、いい子だねって褒める。この辺りはセティにそっくり。色が違ってもやっぱり双子の兄弟なんだね。

「トムが小さくなったんじゃなくて、イシスが育ったんだ」

 指摘されて、自分で手足を見るけど分からない。引き寄せるセティにしがみ付くと、今までより顔の位置が近かった。胸の真ん中に届くくらいの高さだったのに、もっと上まで届くよ。セティが屈まなくても首に手が回せる!

「僕、大きくなった!!」

「そうだな。あと少し我慢すれば、オレの物だ」

 セティが幸せそうにそう言った。拾われてからの僕はセティの物なのに、変なこと言うね。でもセティの物になるの、嬉しい。早く大きくなればいいのに。

「あまり早いと、食われちゃうよ」

 困ったような顔でガイアが呟く。聞こえないフリをするセティに、トムがよじ登った。肩の上で座ろうとして、うまくいかないみたい。手を伸ばしたらすぐに戻ってきた。抱きしめて気づく。僕の体が乾いていた。

「何にしろ、服を着て」

 ガイアが自分が着ているのと似た服を渡す。神殿に着ていったのとよく似た裾が長い服だった。僕にはすぽんと被る白いスカートの服で、上から赤や青の飾り布を巻かれる。最後に首に石がついた金色の飾りがついた。

 くるりと回って見せると、揺れた首飾りにトムが悪戯する。似合うと褒められた僕は嬉しくて、お礼を言ってもう一回ぐるりと回った。
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