【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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149.穢れない子供(SIDEセティ)

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*****SIDE セティ



 ゲリュオンが拾ったユニコーンは、ペガサスの翼をもつ。2つの種族の間に生まれた子を、あいの子と呼ぶ。珍しいだけではなく、人間に似た姿を取ることが出来た。その能力の理由は誰も知らない。解明されていないのではなく、誰も調べなかったのだ。興味がないのだろう。

 人の姿を取って、人間の中で暮らす者も少なくなかった。この子はまだ幼い。親から逸れたか、または親が殺されたのだろう。ゲリュオンも探したが親が見つからなかったのなら、後者の可能性が高かった。哀れだと思うが、それ以上の感情はなかった。

 突然、イシスがオレを隠すように立ちはだかる。僕のだと主張して、取られないようにとオレの前で両手を広げた。座って隠れてやると嬉しそうにする。筒抜けの心が、嫉妬の色を帯びていた。この子は何も知らないから無垢であったが、知ってもここまで綺麗なのか。

 嫉妬はどろどろと暗い色で粘着く感情だ。触れればこちらに色が移りそうな嫌悪感を抱かせる。神々の中には、そういった黒い感情を好む者もいるが。オレは好きではなかった。イシスが嫉妬して独占欲を見せたとき、胸が早鐘を打った。

 嬉しいより、怖さが先に立つ。この清らかで美しい子供は穢れてしまうのだろうか。心配したオレに聞こえてくる心は、どこまでも真っすぐだった。無垢な純白ではなく色がついているが、不思議な虹色を作り出す。神族となったイシスの心はきらきらと光ってオレを魅了し続けていた。

 安心すると同時に嬉しくなる。

 子供同士で取り合いを行っている意味を、イシスは理解していない。イシスがオレを取られまいとしたのと同じで、少女はゲリュオンに執着している。当のゲリュオンが気づいていないのが不思議なほど露骨だった。まあ、あいつは鈍いからな。

「どうしたらいいか分からん、参った」

 困惑した声を出しながらも、オレを真似てシェリアを抱き上げた。オレはその行動に驚く。両手が塞がるからと女を抱く時でさえ抱き締めない戦闘馬鹿が、両手で少女を抱き上げて肩に座らせた。肩は腕の動きを左右する重要な部位だと力説していなかったか?

 驚きで凝視したオレをどう思ったのか。イシスは「可愛いね」とオレに同意を求めた。拗ねているのが愛しいが、イシスに不愉快な思いをさせたのはオレの失態だ。キスして許しを請う。

「イシスはオレのだぞ」

「そうだよ」

 不思議そうにしながら、イシスがオレの額にキスをした。可愛い。向かいで困った顔をするゲリュオンを無視して歩き出した。騒動を持ち込んだんだから、しばらく悩めばいい。だがその子を抱き上げた時点で、お前の未来は決まってるぞ……ゲリュオン。

 オレと同じように少女に囚われる未来を想像して、オレは頬を緩めた。

「今日は何するの?」

「そうだな……フェルでも呼び出して遊ぼうか」

 フェルの背中に乗って駆けるのが好きなイシスに、彼が喜ぶ遊びを提案する。大きな紫の目を輝かせて、愛し子は「うん」と喜んだ。少しして……ようやく母親から逃げたボリスが一緒に行くと騒いだことで、予想外の大移動となった。
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