【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
247 / 321

245.フェルの背中に乗って

しおりを挟む
 フェルの背中に乗る前に、集まってくれた狼さん達を順番に撫でる。フェルの速さに着いてこられないから、ここでお別れだと聞いた。僕やセティに会いに来たのにごめんね。撫でていっぱい抱っこして、また会おうねって約束した。約束は絶対だから安心だよ。

 セティが僕をフェルの背に乗せて、しっかり首に抱き着いた。なぜかセティに起こされちゃったけど……僕はセティに寄り掛かっていればいいみたい。フェルが走り出すけど、前ほど速くなかった。理由は僕達の到着までに、ガイアが準備するの。間に合わなくなるから、速すぎるのはダメだって。

「僕はびゅーんとするの、好き」

 前の速かったフェルはカッコよかった。そう話したら速くなった。途中で休憩を入れることにして、そこまで速く走ってもらう。風や木々がびゅんと後ろに通り過ぎて、大きな岩を飛んで茂みを突き破って、あっという間に広い場所に出た。

「ここらで休憩するか」

 ぽかっと森に開いた穴。上には木がなくて、地面は低い草がいっぱいだった。よく見ると薬草が生えてる。セティの手を引っ張って知らせたら、一緒に採っていくことになった。成長した大きい草を選んで摘む。小さいのは摘まない。

 腹痛に効く苦い草、料理の時に使うすっとした匂いの草、赤い実が辛い草。用意した布の上に並べて、セティが収納にしまった。それからセティがテントを張る。まだ時間は早すぎるから、お昼寝するの? 

「今日はここで泊まろう」

 ガイアが準備してないからと笑って言われた。きっとトムもいて忙しいから仕方ないの。フェルと一緒に泊まるのは、久しぶりだね。

「あれ? フェルがいないよ」

「肉を獲りに行ったぞ。その間に鍋の準備をするか」

 フェルはいつも生のお肉を食べる。でも焼いたお肉も好きだと聞いた。だから大きなお肉でも焼けるように、石を積んでかまどを作る。セティが魔法で運んでくれたから、重い石を転がさないで出来た。大きい石の間に詰める小さな石は僕が拾ったんだ。詰め込んで崩れないようにするの。

 覚えたことを順番にこなしていると、立派なかまどが出来た。そこに火を入れて、まずは鍋を置く。お湯を沸かすのは、セティの魔法で出来る。でもゆっくり煮た方が柔らかくて美味しいんだよ。まだ日が高い時間だから、セティの収納のお肉と香草玉を入れた。

 ぐあぁあう! 仲間の狼を連れたフェルが戻ってきた。角のある兎や小さい鳥もいるけど、フェルが咥えてきたのは立派な牛だ。四本の足があって、細い紐の尻尾と小さい耳、それから角があるの。でもふさふさと毛がたくさん生えていた。絵本の牛とちょっと違うけど、大きい。

「これは立派だ。焼くとしたら半分かな」

 かまどをもっと大きく作ればよかったね。

「イシス、フェルは生でも食べるから平気だぞ」

「じゃあ、どうして焼くの?」

「同じ肉でも料理の方法を変えると、たくさん食べられるからな」

 へぇ。僕もスープにお肉が入ってても、焼いた肉を食べられるから、それと同じかな。フェルは牛を置いて僕のところに来たけど、いつもみたいに頬ずりしないの。汚れてるから遠慮してるんだと言われて、僕から飛び付いた。鼻を鳴らす狼さんも順番。みんなケンカしないで待っててくれた。

 全員と挨拶したら、その間に兎が丸焼きにされてた。僕、手伝わなくちゃ! ハーブの入ったお塩をもって振るのが僕の仕事。ちゃんと全部の肉に掛けたよ。狼さんもフェルも、僕やセティと一緒にお泊りするんだ。楽しみだね。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。 新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。 それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。 「お前は俺の運命の番だ」 彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。 不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

【本編完結済】神子は二度、姿を現す

江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結 ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。 死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが 神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。 戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。 王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。 ※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。 描写はキスまでの全年齢BL

処理中です...