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263.何故抱き上げた?(SIDEセティ)
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*****SIDE セティ
神殿の中なら平気と好きにさせたら、さっそく騒動が起きた。イシスらしいとしか言いようがない。トムを抱いて原始の泉の前で遊んでいたが、トムだけ戻ってきた。しかも必死な形相で……となれば、駆け寄った泉には桃が浮かび、イシスの影も形もない。落ちたのか?
泉の中は呼吸ができるし、すでに神族として高い神格を示すイシスなら向こう側へ抜けるだろう。追いかけようと泉に足を浸したところで、泣きじゃくるイシスの声が届いた。
食べられちゃう! 唇にキスされそうと言われたら、全力で飛び込む以外ない。神域と呼ばれた向こう側は、様々な恩恵が得られる。同時に、神々が切り捨てた闇が残っていた。封印の意味を込めて、間を泉で仕切っているのだ。
水から上がったオレの目に映ったのは、口を手で覆ったイシスだった。どうやら唇は死守したらしい。彼を抱き締めるのは、オレにそっくりな顔の神だった。いや、神だった存在だ。今はぼやけた印象しかないが、以前はもっとはっきりしていた。
「オレの伴侶だ、さっさと離せ」
奪う気はないと言い訳しながら、イシスを喰らおうとしたのだろう。口付けを受けていたら、イシスが危なかった。抱き締める男から取り返し、ほっと一息つく。
「それで今頃何の用だ?」
「ひどいな、お前は俺で俺はお前だ。勝手に切り捨てておいて、知らないは通らない。それも伴侶を見つけたなら、なおさらだ」
本性が顔に滲んでいるぞ。にやりと笑って、首を傾げてやった。まるで意味がわからないと示すように。
「オレに伴侶が見つかったとして、お前には関係あるまい。オレとお前は分離されて久しい。まったくの別人格なんだからな」
オレとガイアは双子ではなく、これも含めた三つ子として誕生した。創造のガイア、破壊のオレ、腐敗のこいつだ。すでに名も神格も剥奪されたってのに、まだ消滅していなかったとは驚きだ。最高神位を持っていただけのことはあるか。
神格の高いイシスが無防備に転がり落ち、神域に現れた。オレという守護がない未熟な魂を懐柔し、貪るつもりだったのか。睨みつける先で、黒い神は肩を落とした。
「誤解があるようだが、俺が引き摺り込んだわけじゃないぞ。その子を俺が保護しなければ、すぐにあれらに襲われていた」
ちらりと目で示された先を視線で追う。元神だったもの、また神から不要だと切り捨てられたものが浮遊していた。前回は圧倒的強者であるオレがいて、イシスに高い神格はなかった。だから近づかれることはなかったが、腕の中にいる無垢な子どもはさぞ美味しく見えるのだろう。
甘い芳香を放つ仙桃を手に現れた、豪華な食事……イシスを守る術が足りなかったか。後悔しながら、忠告する元兄弟に視線を戻した。
「それには礼を言おう。だが、何故お前はここにいて、何故イシスを抱き上げた?」
守るだけなら抱き上げる必要はない。口付けられるとイシスが怯える必要もなかった。睨みつけた黒い神の残滓はゆらりと手を伸ばす。
「黒い神様、僕に何かくれるの?」
イシスは思わぬ言葉を吐いた。
神殿の中なら平気と好きにさせたら、さっそく騒動が起きた。イシスらしいとしか言いようがない。トムを抱いて原始の泉の前で遊んでいたが、トムだけ戻ってきた。しかも必死な形相で……となれば、駆け寄った泉には桃が浮かび、イシスの影も形もない。落ちたのか?
泉の中は呼吸ができるし、すでに神族として高い神格を示すイシスなら向こう側へ抜けるだろう。追いかけようと泉に足を浸したところで、泣きじゃくるイシスの声が届いた。
食べられちゃう! 唇にキスされそうと言われたら、全力で飛び込む以外ない。神域と呼ばれた向こう側は、様々な恩恵が得られる。同時に、神々が切り捨てた闇が残っていた。封印の意味を込めて、間を泉で仕切っているのだ。
水から上がったオレの目に映ったのは、口を手で覆ったイシスだった。どうやら唇は死守したらしい。彼を抱き締めるのは、オレにそっくりな顔の神だった。いや、神だった存在だ。今はぼやけた印象しかないが、以前はもっとはっきりしていた。
「オレの伴侶だ、さっさと離せ」
奪う気はないと言い訳しながら、イシスを喰らおうとしたのだろう。口付けを受けていたら、イシスが危なかった。抱き締める男から取り返し、ほっと一息つく。
「それで今頃何の用だ?」
「ひどいな、お前は俺で俺はお前だ。勝手に切り捨てておいて、知らないは通らない。それも伴侶を見つけたなら、なおさらだ」
本性が顔に滲んでいるぞ。にやりと笑って、首を傾げてやった。まるで意味がわからないと示すように。
「オレに伴侶が見つかったとして、お前には関係あるまい。オレとお前は分離されて久しい。まったくの別人格なんだからな」
オレとガイアは双子ではなく、これも含めた三つ子として誕生した。創造のガイア、破壊のオレ、腐敗のこいつだ。すでに名も神格も剥奪されたってのに、まだ消滅していなかったとは驚きだ。最高神位を持っていただけのことはあるか。
神格の高いイシスが無防備に転がり落ち、神域に現れた。オレという守護がない未熟な魂を懐柔し、貪るつもりだったのか。睨みつける先で、黒い神は肩を落とした。
「誤解があるようだが、俺が引き摺り込んだわけじゃないぞ。その子を俺が保護しなければ、すぐにあれらに襲われていた」
ちらりと目で示された先を視線で追う。元神だったもの、また神から不要だと切り捨てられたものが浮遊していた。前回は圧倒的強者であるオレがいて、イシスに高い神格はなかった。だから近づかれることはなかったが、腕の中にいる無垢な子どもはさぞ美味しく見えるのだろう。
甘い芳香を放つ仙桃を手に現れた、豪華な食事……イシスを守る術が足りなかったか。後悔しながら、忠告する元兄弟に視線を戻した。
「それには礼を言おう。だが、何故お前はここにいて、何故イシスを抱き上げた?」
守るだけなら抱き上げる必要はない。口付けられるとイシスが怯える必要もなかった。睨みつけた黒い神の残滓はゆらりと手を伸ばす。
「黒い神様、僕に何かくれるの?」
イシスは思わぬ言葉を吐いた。
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