【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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265.また一緒に桃を食べたい

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 心配して泉を覗いていたガイアに、セティが事情を手短に話す。頷いたガイアがそっと両手を広げ、その上に僅かばかりの砂が置かれた。手に残った粒まですべてを渡したセティが眉を寄せる。なんか、泣き出しそう。そう思って僕は抱き着いた。

 大丈夫、僕がいるよ。絶対に離さないから寂しくないよ。そう訴えながらセティにキスをする。頬に触れて鼻先に触れて、唇を狙って失敗し顎でちゅっと音を立てた。終わりの合図、出来た。

「いい子だ、イシス」

 じっくり砂を確認したガイアが僕を見て目を見開き、考え込んだ。それから僕にさっき貰った物を返してくれと言う。驚いたけど、別にいいよ。

「砂の上に手を重ねて、あとは僕がやるから」

 ガイアの足元でトムが興奮した様子でよじ登ろうとしてる。でもガイアの両手は砂で塞がってて、僕の手も預かってるから忙しいの。トムにそう説明したけど、全然聞いていなかった。まだ子どもだから仕方ないよね。

 じわじわと暖かくなって、何かが僕の体を移動していく。すっと手のひらから抜けた。痛くないから平気、心配そうなガイアに笑う。ぼんやりと光る砂を見つめ、ガイアは丁寧に丸めるような仕草を繰り返した。

「後はガイア次第か、時間がかかるからおいで」

 セティは何もしないの? 邪魔になるからトムは預かってくね。僕はセティの抱っこから降りて、トムを抱き上げた。ガイアの衣に爪を立てるのを解いて、「だめ」と叱る。体は大きくなったけど、まだ赤ちゃんみたいなことをする。セティと手を繋いで、肩にしがみ付くトムを支えて歩き出した。

 振り返った先で、泉の水を掛けたり息を吹いたりしながら、ガイアが聞いたことがない言葉で話す。ぼんやりと黒い神様の影が見えた気がした。

「黒い神様、戻ってくる?」

「ガイアがうまくやれば、戻る」

 カイルス神様、セティが待ってるので戻ってきて。僕も待ってるし、ガイアも待ってるよ。心の中でお祈りして、カイルスの名前を繰り返した。黒髪をくしゃりと乱して撫でたセティが笑う。

「お前は優しいな」

「帰ってきたら、また一緒に桃を食べるの」

 そう告げたらセティの動きが止まった。あと少しでテーブルなのに、どうしたの? 手を繋いだまま僕も止まれば、セティが確認してきた。

「また……とは、向こう側で一緒に桃を食べたのか?」

「うん、酸っぱかった」

「……腹は痛くないか?」

「なんともない」

 ぽんとお腹を叩いてみせる。平気だよ、酸っぱいけど普通に食べられたもん。古いご飯を食べるとお腹が痛くなるのは知ってるけど、あれはまだ貰ったばかりの桃だったのに。変なことを気にするセティだね。

「腐敗の神だが、成長度合いの調整を間違えたか?」

 うーんと唸りながら難しいことを呟くセティを促して、僕は椅子に座った。たくさん積まれた桃は白くて、ところどころ赤くなっている。セティが出してくれた籠にトムを入れたら、昔より狭くなった。やっぱり大きくなってたんだね。

「トムも食べる?」

 みゃー。勢いよく返事をするトムに剥いた桃を差し出したけど、匂っただけで食べなかった。もう、なんで食べるって返事したの?
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