【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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271.贄と伴侶のお仕事の違い

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 起きて、真っ先にセティを探す。ベッドに座って、僕の頭を膝に乗せてくれていた。ほっとする。目が覚めてセティがいないと怖い。僕は幸せじゃなかった頃、殴られることだけ怖かったけど……今はセティがいなくなることの方が怖いの。

 手や足がなくなってもあまり困らないと思う。セティが抱っこしてくれるから。でもセティがいなくなったら、足があっても嫌だ。読んでいた本を置いて僕を抱き寄せる腕に縋った。ぎゅっと首に手を回して抱き上げてもらう。

「いい子だ、よく眠れたか?」

「うん……あのね、僕……眠り過ぎだよね」

「そうか? 神に成り立てはよく眠るのが普通だぞ。こんなもんだ」

 驚いた。神様はよく眠るの?

「眠り過ぎて、人の祈りを聞き逃すことがよくある。だから神様は気まぐれだと言われるのさ」

 笑いながら、神様が願いを叶えてくれないときは寝ているときだと教えてもらった。中には数十年の長い年月かけて眠る神様もいる。願いを込めてから、神様が気づくまでに死んじゃう人もいるんだって。間に合わないんだね。寝てても願いだけちゃんと届けばいいのに。

「オレはイシスの願いなら、寝てても封印されても気づけるぞ」

「僕だけ?」

「そう、イシスだけ」

 いけないと思うけど、頬がにやけてしまう。僕だけ特別だって言われた。僕の声はセティに必ず届く。だからお祈りを……あれ?

 動きを止めてセティを見る。最近、タイフォン神様にお祈りしてない。僕は贄なのに、セティにお祈りしてないのはダメじゃない? 怖くなってしがみ付く。涙がこぼれてしゃくりあげて、苦しくてうまく言葉が出なかった。

 ごめんなさい、僕は祈ってなかった。セティのためにお祈りするのが贄なのに、優しくされたからズルをしちゃったのかな。僕はダメな贄だ。

「こら、話を聞かないで泣くな」

 鼻の先を噛むみたいにしてから、涙を舐められた。鼻を啜って、涙を止めようとするけど……セティを見たらまた溢れちゃった。困ったなと言いながら、セティがぎゅっと抱き締める。暖かい。

「いいか? イシスは、もう贄じゃなくて伴侶だ。贄は祈るのが仕事だが、食べられて伴侶になったイシスの仕事はオレの側にいることだ。オレに愛されて食べられる――ほら、毎日してるだろう? イシスはサボってないさ」

 神様に愛されて、毎日食べてもらう。神様がお腹いっぱいになるのが仕事……僕はセティの伴侶になったから、それがお仕事?

 まだ涙で潤んだ目で見上げると、たくさんキスされた。

「ほら、泣いて腫れた目だとファフニールやヴルムが心配するぞ」

「もう泣かない」

 お父さんやお母さんに心配させるの、嫌だもん。それに僕はちゃんと伴侶のお仕事していた。贄は食べられるために神様に捧げられるけど、伴侶って何だろう? 僕以外の贄が捧げられたら、新しい伴侶を食べるのかも。その時、僕はどうすれば……。

「考えすぎるな。もう贄は受け取らない。イシスで最後だ」

 耳元でそう言ってくれるセティが嬉しくて、僕は「ありがとう」とお礼を言った。この言葉しか思いつかなかったの。
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