【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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21.踊らされて余に弓を引いた愚か者

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 気を失った伴侶ハヤトの頬に口付け、抱き上げた。体を丁寧に洗い、濃厚な情事の痕跡を流していく。欲が尽きるまで、人の体には酷な抱き方をした。

 最初に抱いた日に馴染ませた精が、ハヤトの体を変化させ始めている。そうでなければ、今夜の交わりで抱き潰しただろう。奥の奥、窄まる輪の向こう側へ大量に精を注ぐことで、ハヤトの体は魔王である余に近づく。他の魔族を圧倒する強さの源である魔力を流し込み、種族すら変えた。

 傷つけられた太腿を丹念になぞり、貫かれた右手の甲に頬を寄せる。まだ目覚めぬハヤトの肌は象牙色で、滑らかで美しい。この肌を傷つけた者を思い浮かべた。

 愚かな女だ。余の大切な存在に手を出す、その意味を理解していない。魔王たるアザゼルが、伴侶に結界を張らないわけがない。連れ出す隙など作るはずがあるまいに……踊らされて余に弓を引いた。

 有能な配下アスモダイの目を掻い潜って逃げる。そんなことが可能と、本気で信じたのか。あれは故意に逃したのだ。愚かな女を使い、ハヤトに恐怖を植え付けるためだ。異世界から召喚されて余分な知識のない伴侶に、外の世界は恐ろしいと刷り込んだ。逃げようと思わぬように。

 あれほど傷つけられる予定はなかったが、その分……あの女は地獄を見ただろう。アスモダイが珍しく笑っておったゆえ、死にたいと懇願しても死なせてもらえぬであろうな。他者の苦しみが何よりも好きな男だ。

 外へ出たらひ弱な自分は殺される。もっと酷い目に遭うかもしれない。そう思えば、余の手をすり抜ける愚は犯すまい? 事実、こうして余の腕に縋った。素直に快楽に身を委ね、甘えるように擦り寄る様は愛らしい。

 そなたは外に出る必要はない。欲しい物はなんでも揃えてやろう。召喚した人間の王が許せぬとあらば、その首を捧げることは造作もない。世界の全ては、伴侶たるハヤトのために存在する。そう言い切れるほど焦がれて、気が狂いそうになる年月探した。

 ようやく出会った愛しい半身をこの腕に抱いて欲をぶつけ、心にアザゼルの存在を刻めるなら……同族や世界から罵られても構わない。ただただ、愛おしかった。

 ぴちゃんと湯が撥ねる音が響き、ハヤトの目が開く。まだぼんやりしている瞳は艶消しの黒、数回瞬きして口元が緩んだ。穏やかな笑みで優しく声をかけた。怯えさせる気はない。この世界で魔王アザゼルしか頼れない、そう刷り込むことが目的なのだから。

「目覚めたのか?」

「あ、うん。ここ」

「風呂だ。眠っている間に流してやろうと思って、な」

「あり、がと」

 ぎこちないながらも礼を口にする伴侶の、なんと素直で愛らしいことか。このように騙されやすい者を外に出すことは出来ぬ。余の声しか聞かず、余以外に見せず、余にしか心を開かず過ごすがよい。
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