【完結】もう結構ですわ!

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
40 / 80

40.女三人、覚悟の表明

しおりを挟む
「私も反対したのよ。実家も頼ったのに、ダメだったわ」

 本国にある実家の侯爵家を通じて、抗議した。お母様はそう口にして悲しそうな顔で俯いた。私の顔立ちはお母様に似ている。お父様が私を溺愛する理由の一つが、お母様によく似た顔立ちだったこと。髪色はお父様から受け継いだ。

「助けてあげて、と何度も頼まれたけれど……力が足りなくてごめんなさいね」

 セレーヌ叔母様が申し訳なさそうに付け足した。お互いに困ったような顔をするけれど、実力行使に出ない。なぜなら、複雑な状況だったから。叔母様は王妃の地位にあっても、夫だったアシル王を動かせる力はない。お母様も、お父様に時期が早いと言われれば……待つしかなかった。

「気にしておりませんわ。だって自分のことは自分で出来ますもの。レオもおりますし」

 私はヴァロワ王家に嫁いで生贄になる気はなかった。叔母様の忠告もきちんと聞いて、自分の進む道を決めている。ヴァレス聖王国を滅ぼしてでも、己の人生を取り戻す算段をつけた。

 すぐに動けなかったのは、あの頃はまだルフォル貴族の力が弱かったから。子供である私を使うと宣言することで、皆は一気に侵食を進めた。犠牲になる前に私を解放し、叔母様を無事に救出する。そのための力が結集した。

 本国と離れていることを利用し、分家とも連絡をつけて力を蓄えた。民を味方につけ、来るべき決戦に備えたのは……誰しも同じ。私は最前線に立ったが、常に皆に守られてきた。旗頭として先導する役目を果たしたの。

「間に合ってよかったわ」

 セレーヌ叔母様の一言は、とても重い。まだ根付く前だったこの土地で、貴族達の援護もないまま嫁ぐ。それは敵陣へ丸腰で、人質として引き渡されたも同然だった。その献身があったからこそ、私は間に合った。

 貴族の奮起も、叔母様の境遇への怒りと悲しみの影響が深かったと思う。

 庭に用意したテーブルの上から、カップを手に取る。添えられた砂糖を一つ、ゆっくりと沈めた。溶け切る前にくるりとスプーンを回す。人の気持ちは複雑で、確執もこんなに簡単に溶けたりしない。

「本国からの迎えがもうすぐ来ます。私とお父様は間違いを正しに向かいます。レオも同行させます。ですから……叔母様とお母様に帰る場所を守っていただきたいのです」

「もちろんよ」

「全力を尽くすわ」

 女性二人残して、何の防衛か。外から見れば、不自然な頼みだろう。だがお母様の剣術はお父様を凌ぐし、叔母様を守る剣は折れない。最強の騎士と呼ばれたユーグ叔父様を筆頭に、ルフォルの騎士と貴族が立ちはだかるのだ。

「必ず勝利するのよ、シャル」

 母の言葉を胸に刻み、叔母様の微笑みに頷く。庭の薔薇を眺める私達の耳に、岩を砕く音が届いた。魔法道具捜索の発掘は、順調らしい。何が出てくるにしても、私達が出発するまでに間に合わないでしょうね。出てくるところを見たかったわ。

 明るい話題で場の空気を変え、私はほんのり甘いお茶に口をつけた。そこからは伴侶の話題で盛り上がり、お父様の意外な一面を聞いてしまう。船旅の間にからかう材料ができたわ。
しおりを挟む
感想 115

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】

須木 水夏
恋愛
 大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。 メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。 (そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。) ※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。 ※ヒーローは変わってます。 ※主人公は無意識でざまぁする系です。 ※誤字脱字すみません。

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。 高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。 泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。 私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。 八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。 *文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

処理中です...